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スイーツ・オブ・ザ・デッド8

 レイカはヨーコを引き寄せて腕に食らいつこうとしたが、彼女は寸でのところで振り払った。

 家から転がるようにして逃げ出したヨーコは涙を流しながら顔を押さえた。

 レイカとママがあんなことになってしまうなんて。

明日から誰が掃除と洗濯とご飯を作るの?

妹に貸したコーダクミのCDは?

 でも妹に借りた3万円を返さなくてよくなったようだ。やったね!

 頭の中を色々なことがぐるぐる回る。

これからどうしよう。これからどうすればいい?

 何も頼るものがなくなってただ泣くばかりだった彼女はふと、ヒカルのことを思い出した。


ヨーコ「そうだ、ヒカルがいたんだ! 彼のところへ行こう」


 ヒカルは繁華街のホストクラブ『みなぎる性欲×飛び出す精液』でNo.1のホストをしている。

彼なら必ず自分を助けてくれるだろう。

 だって恋人だし私のことを愛していてくれるし、何より顔がいいから信じて間違いない筈。

 ヨーコは自転車に乗って繁華街へ急いだ。

 セレブなヨーコにママチャリのペダルはあまりにも重過ぎる。

ヘトヘトになって繁華街につくころにはすでに昼を過ぎていた。

 『みなぎる性欲×飛び出す精液』には何度か足を運んだことがある。一年前の話だけど。

ヨーコはそこで彼、ヒカルに出会ったのだ。

 彼と出会う前にそこのホスト全員とコックと清掃員とチラシ配りとその他出入りしている男とほぼ全員に ヤラれていたのであそこのことはある意味オーナーよりも詳しい。

ガバマンとか言われても諦めずに愛されてて良かった♪ 堕胎にすごくお金かかったけど。


ヨーコ「腰~に~光る~は、俺の相棒~♪ 38口径コルトガバマンコ~♪」


 ヨーコはあらゆる不安を吹き飛ばそうと自作のラブソング「コカンで愛して」を歌った。

 レイジとかヒカルとか、それから思い出せないけどとにかく自分の体を乗りこなしていった

夜のロデオマスターたちに捧げたとっても大事な歌。

 正直コーダクミなんかとっても越えてると思う。


 電器店の店先に置かれた展示品のテレビがノイズまじりのニュースをひっきりなしに流している。

ヨーコは自転車を止めてそれに見入った。


TV「死者が復活するという事件……各地で多発……極めて大規模……中央政府は自衛隊の出動を……一方これは憲法に反すると……○○党の○○氏……猛烈に反発……出動は遅れて……」


 すべてはこの街だけで起きてることじゃあなかったらしい。

まるで世界の終わりだ。

 自分さえ生き残ってりゃ世界がどうなろうともヨーコはあんまり関係ないが、自分で働いて生活費を稼ぐのなんて問題外だからちょっと困るとも思う。

せめて自分が年収3000万円くらいの人と結婚してからこんなことになれば良かったのに。

あるいは世界中の女がゾンビになりゃ自分だけがマトモな女なわけだから……

 そんな妄想にふとある考えが割り込んできた。

ここは電器店だ。

店の奥に壊れてないケータイが一つか二つはあるんじゃないか?

 自転車を降りた彼女は恐る恐る店の中を覗き込んだ。

蛍光灯がついているがその光はぞっとするほど無機質で冷たいもののように感じられる。

有線放送でコーダクミの曲が垂れ流しになっていた。

 動くものの気配はない。

ヨーコは足音を立てないように慎重に奥のケータイ売り場を目指す。

 白いタイル張りの床を進んでいると、赤黒いラインが奥へ向かって伸びていた。

筆で引いたような、あやふやだが一直線に伸びたライン。

血だ。

それにあの臭いがする。自宅で嗅いだのと同じ腐臭が。

 あたりを見回すとWiiのリモコンとヌンチャクがあったのでそれを武器代わりに手に取り、血のラインを追う。

 ラインはCD-Rの乗ったラックを曲がっていて、その先で音がした。

歯が柔らかい肉を噛み潰し、筋を切る音が。

 エプロンをつけた男が二人、死体の前にしゃがみ込んで手と頭をのろのろと動かしている。

ヨーコに背を向けているので見えないが、何をしているのかは吐き気をもよおすほどはっきり想像できた。



続く……

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