スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(゚、゚トソンこの世のすべてであるあなたのようです 後編

自業自得エンドってことで。


1.
モララーさんに支えてもらい、わたしはポッツヴィル島へ向かう連絡船乗り場へ向かった。

切符売場のところまで来ると、そこでカタワーが待っていた。


(^p^)「姉ちゃんwwww姉ちゃんwwww」

(゚、゚トソン「カタワー」

(^p^)「電話で聞いたらwwww今日退院だって言うからwwww」

( ・∀・)「こんにちは」

(゚p゚)「……誰?」

(゚、゚;トソン(しまった。カタワーにどう説明すればいいか考えてなかった)





この世のすべてであるあなたのようです 後編

(原作ジム・トンプスン『深夜のベルボーイ』)



2.
(゚、゚;トソン「ええと……彼は……」

( ・∀・)「友達だよ。ね?」


彼の助け船に感謝した。


(゚、゚トソン「そ、そう。そんなとこ。高校時代の後輩で……」

(^p^)「そっかwwwwそっかwwww」

(゚、゚トソン「モララーさん、こっちはわたしの弟でカタワー」

( ・∀・)「よろしく」

(^p^)「どうもwwwwどうもwwwwぱしろへんたすwwww」

(゚、゚トソン「ちょっと二人で話したいことがあるから、どっか遊びに行っててね」

(^p^)「えー……」


彼と一緒にいられることで大分寛大になっていたわたしは、弟の頭を優しく撫でた。


(゚、゚トソン「今までごめんね、カタワー。わたしはいつもイライラしてて……
3.
(゚、゚トソン「ほら、これで何か食べなさい」

(^p^)「姉ちゃんwwwwありがとwwww」


カタワーが去って行くと、わたしは海浜公園を見た。


(゚、゚トソン「少しあそこで話しませんか」

( ・∀・)「いいよ。ジュース買ってくる」

(゚、゚トソン「ありがとう。お金を……」

( ・∀・)「いいって。奢るよ、このくらい」


海を臨むベンチに腰かけ、彼が買って来てくれたお茶を飲みながら、少し雑談をした。

お茶の好みとか、このホテルで働いてることとか。

何でもないようなことだけどわたしは幸福を噛み締めていた。

兄さんに死なれてから永遠に失ったと思っていた感情が、今ようやく甦った気分。


( ・∀・)「手が震えてるけど。まだ体力が戻ってないんじゃないかな」
4.
(゚、゚;トソン「え?! あ、いえ……これは別に……」

( ・∀・)「寄っかかったら? 少しは楽になる」

(゚、゚トソン「ええ、ごめんなさい……」

( ・∀・)「いいんだ。いちいち謝らないでよ」


わたしはモララーさんの肩に頭を乗せる形でもたれかかった。

大きくて広い肩。

わたしは兼ねてからの質問を口にした。


(゚、゚トソン「あなたがバッグを受け取る役目なんですね?

     あの荷物の預かり所から……」

( ・∀・)「ああ。そういう意味では僕もハインの仲間だな。軽蔑する?」

(゚、゚トソン「まさか。わたしと同じで脅されてるんでしょう」

( ・∀・)「そうだな。僕がもしバックレたら、奴が君に何をするか……」


5.
わたしたちはお互いに人質になってたわけか。

でもそれはつまり、わたしがモララーさんにとって無視できない存在なわけで……


(ぅ、;トソン

( ・∀・)「どうしたの?」

(ぅ、;トソン「あ、いえ……ごめんなさい、何でもないの」


ああ、胸が喜びに満たされるのなんてどのくらいぶりだろう。


( ・∀・)「一つだけ教えて欲しい。君はショボンさんが殺されることを知ってたのか?」

(゚、゚トソン「いえ……それは知らなかったんです、本当に!

     ハインは誰も殺さないってきっぱり言ってたんだから」

( ・∀・)「だろうな。僕も誰かが死ぬだなんてわかってたら……」

(゚、゚トソン「ショボンさんの死はどっちのせいでもないでしょう?」

( ・∀・)「うん、まあ……でもやりきれないよ」

6.
沈黙。

わたしは手を伸ばし、彼の手を握った。

彼をこちらへ引き寄せようと……


( ・∀・)「待った、待ってくれ」

(゚、゚トソン「え……」


やんわりと拒絶された。


( ・∀・)「今は話をするだけだ。後はみんな仕事が終わってからにしよう」

(゚、゚トソン「え、ああ……うん、そうですけど」


名残惜しすぎてしばらく彼の手を離せなかった。

何とか左手で自分の右手を引っ剥がすようにして外す。

そう、まだ焦ることはない。

仕事が全部終わってからでも遅くない……
7.
( ・∀・)「バッグのタグのナンバーを教えてくれないか」

(゚、゚トソン「1234-2244です」

( ・∀・)「いつ取りに行けばいいかな?」

(゚、゚トソン「もう二日もあれば仕事に復帰出来ますから、夜中に来て下さい。

     その時間なら人目が一番ないから」

( ・∀・)「わかった。じゃ、僕はこれで」

(゚、゚トソン「あ、待って下さい」


わたしは上半身をまっすぐに起こした。


(゚、゚トソン「またうちのホテルに泊まるんですか?」

( ・∀・)「うん。親が病気になったんで本土に戻ってたってことにするよ。

      さ、僕は先に島に戻る。一緒に行ったらさすがに目立つからね」


ベンチを立って彼は言った。

8.
( ・∀・)「君をずっと待ってた気がする。

      初めて君に出会った時、“再会”したって感じだった」

(゚、゚トソン「……それは、わたしも……」


わたしが言い終わる前に、彼は笑って船着場へ向かった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


ホテルの自分の部屋に戻って二日が経つと、わたしは仕事に戻った。

早いところ何もかも終わりにしてしまいたかった。


(^p^)「姉ちゃんwwww姉ちゃんwwww」

(‐、‐;トソン「ああ、うん」


カタワーが最近、まるで犬のようにわたしの臭いを嗅ぎ取って尾け回してくる。

わたしがこっそり島の外でモララーさんと会おうとすると、必ず偶然を装ってついてきた。

9.
モララーさんは弟のことについて気にした様子はなくって、その都度三人で一緒に遊ぼうって

言ってくれたけど、わたしは耐えられない。

出来る限りカタワーには気を使って優しくしたけど、もうこんなの一日だって耐えられない。


(゚、゚#トソン(邪魔ばっかするんだから。ああ、イライラする)


仕事に戻る日、仕事に行く直前のこと。

部屋で用意をしているとケータイが鳴った。


( ・∀・)】「やあ」

【(゚、゚トソン「モララーさん」

( ・∀・)】「今夜の夜中にチェックアウトするよ。

       連絡船の最終便に間に合うかギリギリって頃にね」

【(゚、゚トソン「大丈夫、その時間ならフロントにはわたししかいません」

( ・∀・)】「チェックアウトし際に荷物を受け取るんだね?」

10.
【(゚、゚トソン「もしわたしがその場にいなかったら、待っててくれませんか。

      “都村って人ならわかる”って言えばいいですから」

( ・∀・)】「わかった。まだ他に何かあるかな」

(゚、゚トソン「一つ教えて下さい。ハインのことなんですけど……」

( ・∀・)】「僕と彼女の関係? それは知らない方がいいと思うな」

(゚、゚トソン(……?)

・ ・
関係。

この言葉に違和感が炸裂した。

そりゃ今はモララーさんはハインの一味だけど、それはあくまで利用されてる筈。

勘繰りすぎているんだろうか。

まさか、モララーさんが……ハインの……


( ・∀・)】「トソン? どうした?」


11.
【(゚、゚;トソン「え? ああ、いえ。でも大丈夫なんですか?

       ハインは知っての通りとんでもない女なんですよ。

       バッグを渡したら用済みってことで殺されるかも」

( ・∀・)】「いや、僕はバッグをあるところに置きに行くだけなんだ。

       ハインが後でそれを取りに行くんだってさ」

(゚、゚;トソン「……」


何かがおかしい。何かが……何だろう、この不安……

しかしその不安はやがて悪魔のささやきに変わった。


【(゚、゚トソン「わかりました。気をつけて」

( ・∀・)】「君も。すべてが済んだら一度島の外で会おう」


電話を切った後、わたしは暗い部屋の中で椅子に座って考えた。

あのバッグ。

12.
ハインは200万円とか何とか言ってたけど、わたしの見立てでは500万円にはなると思う。

500万円。

それだけあればしばらくは不自由をせずに……

大学生になって、今の仕事を辞めて……


(‐、‐;トソン(ダメダメダメ、何考えてんだろわたし)


時間が迫っている。

わたしは部屋を飛び出し、まかないを食べに向かった。

それでもどうしてもその考えが頭を離れない。


(゚、゚トソン(この仕事をずっと続けるのは良くない気がする。

     わたしは殺人事件に関わってしまったわけだし……今のところは大丈夫でも、

     そのうち何か新しい証拠が出たりしたら……)


自然とクビになるようにすればいい。
13.
だけどその後はどうするの? お金はまったくないのに?

そう、お金が……お金があれば……


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


職場に出るとすぐにマネージャーに呼ばれた。


/ ゚、。 / 「ちょっといいですか、都村さん」

(゚、゚トソン「はい?」

/ ゚、。 / 「新聞記者の人が話を聞きたいって言ってましてね。

      あなたさえ良ければ……」

(゚、゚トソン「いえ、申し訳ないですけど、早く忘れたいんです」

/ ゚、。 / 「わかりました。こちらから断っておきます」


辞めるにせよ何にせよ、何かするには今はまだ早すぎる。

どうせ今の時代、事件はトイレットペーパーと同じ消耗品。
14.
世間の関心もそのうちに薄らいでいく。

フロントに行くとカウンターで見知らぬ男の人が待っていた。


( ФωФ)「こりゃどうも。我が輩は新しいフロント係、ロマネスクであるよ」

(゚、゚トソン「あ、よろしくお願いします。都村です」

( ФωФ)「話は聞いている。まだあまり無理しちゃイカンよ」

(゚、゚トソン「ありがとうございます。でももう大丈夫」


肩はまだ少し痛んだけど、支障が出るほどじゃない。

淡々と職務を果たしてゆく。

何時の間にか夜中になっていた。


(゚、゚トソン(そろそろだな)


ロマネスクさんの記帳を手伝いながら、何気ない素振りで腕時計を見る。

今からなら連絡船の最終便にギリギリ間に合う。
15.
階段をコツコツと下りてくる音がした。


( ・∀・)


ちょうどわたしがフロントにいる時で良かった。

わたしは顔を上げた。


( ・∀・)「チェックアウトしたいんだけど」

( ФωФ)「かしこまりましたであるよ」

( ・∀・)「あ、それから君。悪いけど僕のバッグ持ってきてくれないか?」

( ФωФ)「都村くん、頼む」

(゚、゚トソン「はい。少々お待ちを」

( ・∀・)「ああ、やっぱり自分で持つよ」


ロマネスクさんが手続きをしている間に、いい具合にわたしとモララーさんは

二人っきりで保管室へ入った。
16.
棚に置かれたバッグ、傘、その他雑多なものの山から例のものを見つけ出す。


(゚、゚;トソン「……」

( ・∀・)「?」


しかしわたしはそれをすんなり彼に渡せなかった。

理由は二つあった。

お金が欲しい。一つはそれ。

もう一つは、このお金を彼に渡してしまったら二度と会えないんじゃなかって……


(゚、゚;トソン「あの、モララーさん! 半分じゃダメですか?」

( ・∀・)「何言ってるんだ君は? 残りをどうする気だい?」

(゚、゚;トソン「そ、そうじゃないんです! えっと、だから……

      もしも、もしもですよ? ハインが……」

( ・∀・)「???」

17.
( ФωФ)「おーい、どうした?」


ロマさんが入口のところから顔を覗かせる。

まずい、時間をかけすぎた。


(゚、゚;トソン「ああ、えっと」

( ・∀・)「控えをなくしちゃったんだよ、預かり証の。番号は覚えてるんだけど」

(゚、゚トソン「そ……そうなんです」

( ФωФ)「ふむ。都村くん、確かにそのお客様の荷物なのかね?」

(゚、゚トソン「え? ええ……わたしがお預かりしたので」

( ФωФ)「じゃあいいだろう。お渡ししなさい」

(゚、゚トソン「いいんですか?」

( ФωФ)「いいさ。どうもお待たせしました」


わたしは彼にバッグを渡した。

18.
名残惜しげに、この世の終わりみたいに。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


モララーさんからの連絡はそれっきり途絶えた。

夜が果てしなく続いている気がする。

今日の夜から次の日の夜につながっているような気がした。

絶望の暗闇に塗り潰された、終わりのない夜に。

わたしは鳴らないケータイを抱いて、ベッドにうずくまっていた。


(;、;トソン(……)


手の指先からつま先まで、だんだん体が死んでゆくような感じ。

ハメられたんだ。

モララーさんはハインの男で、最初からこういう計画だったんだ。

今頃どこかのホテルでじゃれ合いながら、わたしがどれほど間抜けだったか笑ってる。
19.
でもそんなことじゃない。本当に辛いのは騙されたことでも、お金を失ったこともでない。

今なお、どうしてもモララーさんを憎みきれないことが辛い。

こんな状態になってもまだ彼が欲しい。


(;、;トソン(こんなのってない。こんなのって、ないよ)


絶望に彩られた人生のオチがこれ?

笑える。ほんと、笑える。

ドアをノックする音がした。

わたしはほっとこうとしたけど、ドアは無視されることを拒否した。


(゚、゚トソン(誰だろう)


顔を洗って出ると、カタワーがいた。


(^p^)「姉ちゃんwwww姉ちゃんwwww」

20.
わたしは彼を部屋に入れ、ドアを閉じた。


(^p^)「姉ちゃんの彼氏はどうしたwwww最近見ねえけどwwww」

( 、トソン「ふざけんな……」

(゚p゚)

(゚、゚#トソン「あんたがしつこく付きまとうのに我慢できなくなったのよ!!

     ああ、わたしもそうだけど。ほんともう限界だわ!」

(゚p゚)「ね、姉ちゃん……」

(゚、゚#トソン「出来損ない! 失敗作! あんたさえいなければ兄さんだって……」


ケータイが鳴った。

怒りに身を震わせてわたしは受信ボタンを押した。


【(゚、゚#トソン「はい!」

从 ゚∀从】「よーよーよー、ハインでございますぅ! どうした、何怒ってんだ?」

21.
【(゚、゚トソン「……」


ケータイを持つ手が震えた。


【(゚、゚トソン「一体、何の……」

从 ゚∀从】「何の? 何のってお前、例のブツを取りにさ。

      体験入学生か何かに変装してくからさぁ」

(゚、゚トソン(???)


何を言ってるの、それならもう……と言いかけて止める。

わたしの中で一本のラインに繋がった。


【(゚、゚トソン「会えませんか、今夜」

从 ゚∀从】「んー? そりゃマズイね」

【(゚、゚トソン「どうしても会って話したいんです! どうしても!!」

从 ゚∀从】「……」
22.
何かをうかがっている沈黙。

多分ハインはわたしが欲を掻いたと思ってるんだろう。

金を寄越せとか、そんなことを言い出すんじゃないのかと。


从 ゚∀从】「変なこと考えるんじゃねーぞ。あたしとお前は一蓮托生だからな」

【(゚、゚トソン「わかってます。あなたが捕まればわたしだって同じ運命をたどるんだから」

从 ゚∀从「一時間後だ。島を出て海浜公園に行け。ベンチで待ってるぜ」


電話はそこで切れた。

カタワーは放心状態で突っ立っている。


(゚、゚トソン「まだ何かご用?」

(゚p゚)


ドアを開けると、カタワーはふらふらと部屋を出て行った。

わたしは椅子に腰を下ろし、煙草に火をつけて考えを整理した。
23.
今ようやくハッキリした。と言うか、自分自身への誤魔化しが消えた。


(゚、゚トソン(わたしはカタワーを憎悪している。殺したいほど憎んでる)


憎かった。兄さんの愛情を一身に受けるあの弟が。

己の身を焦がすほどの嫉妬を感じてた。

もう今となっては疑いようもない。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


一時間後、わたしは言われた通り海浜公園へやってきていた。

海辺のベンチを一つずつ、何気なく見て回る。


从 ゚∀从「よう」


髪をストレートにし、眼鏡をかけたハインがいた。

かつてはめちゃくちゃに着崩していたポッツヴィルの制服をキチンと着こなしている。
24.
真面目一辺倒、男性に触れたこともないって顔の優等生風だ。

わたしは改めてこうして見てみると、彼女がかなりの美少女であることに気付いた。


从 ゚∀从「どうした、見違えたって言いたいのか? で、話ってのは何だ」


わたしはベンチの隣に腰を下ろした。


(゚、゚トソン「バッグの中身ですけど、半分ありません」


“半分”。

これがわたしの仕掛けた罠。


从 ゚∀从「は!?」

(゚、゚トソン「モララーさんが持ってっちゃいました」

从;゚∀从「ちょ……ちょっと待て!! どういうことだ」



25.
(゚、゚トソン「今行った通りですよ。

     彼は全部持ってくって言ったんですけど、わたしが説得して半分だけに。

     何か様子がおかしかったので」

从#゚∀从「くそったれ!!」


ハインはえんえん罵りの言葉を吐き出し続けた。


从#゚∀从「あのバカども、バカども!! シナーとニダーのやつら!!

     殺しとけって言ったじゃねえか」

(゚、゚トソン「嘘だったんですね、わたしとモララーさんの間を取り持ってくれるとかいうの」

从 ゚∀从「よーよーよー、お前があたしを責めるのかい?

     お前がボケだからバッグをかすめ取られたんだろうが」


つまりこういうこと。

ハインはモララーさんを誘拐し、殺すつもりだった。

26.
だけど彼女の手下、ニダーとシナーは後でいいやとか思ってた。

そう、あの仕事……ホテルで強盗を働いた後でも。

ところがあの二人はまさか仕事の直後にハインに殺されるとは思ってもみなかった。

見張りが消えてモララーさんは逃げ出し、わたしのところへ来た。

バッグをかすめ取る為に。


(゚、゚トソン「わたしたち二人ともハメられたわけですね、彼に」

从 ゚∀从「なーんで嬉しそうなんだ? え?」


わたしは肩を竦めた。

少なくともモララーさんは死ななかったし、ハインの男でもなかった。

ならこっちの方がずっといい。


(゚、゚トソン「一つだけ腑に落ちないことがあるんですけど。

     モララーさんがバッグを持ち出す方法とか知ってたのは……?」

27.
从 ゚∀从「あてずっぽだろ」

(゚、゚トソン「そんなの信じられません。

     わたしは彼をあなたの男なんじゃないかと疑ったくらいですよ」

从 ゚∀从「そりゃ光栄だね、あんないい男に惚れられるなんてねー」

(゚、゚#トソン「教えて下さい。どういうことなんですか?」

从;゚∀从「勘弁しろよ、サツに追われるわ金も手に入んねえわで落ち込んでんだ」

(゚、゚トソン「どうしても知りたいんです!」


溜め息をつき、ハインは頭を掻いた。

完璧に櫛を通した髪型が僅かに乱れる。


从 ‐∀从「かいつまんで話すぞ。こりゃモララー自身から聞き出した話なんだがな。

     モララーはな、ショボンの息子なんだよ」

(゚、゚;トソン「なっ……何ですって?!」


28.
从 ゚∀从「こういうことさ。ショボンは何とかしてお前にホテルを辞めて欲しかった。

     でなけりゃお前、死んでたからな。

     あたしの当初の強盗計画じゃお前が死んでショボンが生き残る筈だった。

     ところがあのバカ、元筋モンのクセに妙に甘いトコがあってな」

(゚、゚トソン(ショボンさん……)


そうか、彼がわたしに冷たく当たってたのも……

ああ、何て事だろう。彼はわたしの味方だったのに!


从 ゚∀从「ところがお前がどうしても辞めねーもんだから強引な手に出た。

     息子のモララー呼んでな、お前に不祥事を起こさせようとしたんだ。

     ホテルの従業員が客に色目使ったとか言って騒ぎ起こす計画だったんだろ。

     そうすりゃお前、辞めざるをえないだろ?」


ところがハインはショボンさんの計画を見抜いた。

29.
ショボンさんは息子をさらわれて、どうしても言うことを聞かざるをえない状況に

追い込まれる。

彼はもう自分が殺されることを知ってた。

ここまでやればハインの信用を失い、わたしとショボンさんの役目を入れ替えるだろう。

もうショボンさんはそのことを……


(;、;トソン(ショボンさん……ショボンさんは、身を呈してわたしを……)

从 ゚∀从「ま、あいつは自業自得さ。悪党の最期なんてあんなモンだ。

     で? 残り半分はどうすんだ?」

(゚、゚トソン「あなたにあげます。わたしはもう、彼がいないのなら……お金なんか」

从 ゚∀从「そう言うな。時計の一個くらいくれてやるよ」

(゚、゚トソン「そうですか」

从 ゚∀从「今夜の夜中にこの格好でホテルに行くからな。

     残り半分を持ってこいよ」

30.
(゚、゚トソン「ええ。じゃ、また」


わたしがベンチを立ち上がろうとすると、ハインは狼狽した顔で引き止めた。


从;゚∀从「お……おい、あたしはお前に優しかっただろ?

     チップをいつも弾んでやったし、お前とあたしは友達だったよな?」

(゚、゚トソン「ええ、もちろん。わたしにとって友達はあなただけでしたよ」

从;゚∀从「そうだろ? そうだよな」


“裏切ったりしないよな?”そう言いたげだ。

軽蔑を込めずにいるのはなかなか難しかった。

あの大悪党ハインリッヒ高岡様がこのていたらくですか?

精一杯愛想良くして、わたしは船着場に向かった。


( 、 トソン(あの女、いつ裏切るかわからない……やるしかない)


31.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――


ホテルに帰る途中、わたしはハインと初めて密談を交わした岬にやってきた。

ポッツヴィル島の東端にある人気のない場所だ。

灯台のあたりを探すと案の定、あの時彼女がガブガブ飲んでたビールのビンが見つかった。

それをハンカチで包んで持ち帰る。


(゚、゚トソン(よし、これがあれば……)


ビールに水を入れて冷蔵庫の冷凍室に入れておく。

それからケータイを台所で水に漬けた。後は夜中まで待つだけ。

煙草を持つ手が震えてた。

そろそろ時間という時、ドアがノックされた。

聞き覚えのあるノックの仕方。


(^p^)「姉ちゃん……」
32.
ドアを開けると予想した通りの顔があった。

わたしはいきなり「うえっ」という顔をした。

道端の嘔吐物を見てしまったかのような表情。


(゚、゚トソン


カタワーを部屋に入れ、ドアを閉めた。


(^p^)「姉ちゃん、俺が悪かったよ……だからさあ」

(゚、゚トソン「言っておくけど、前言を撤回したりしないわ。

     わたしは本気で言ったんだから」

(゚p゚)「ね、姉ちゃ……」


これまでつもりにつもったあらゆる憎しみが、関を切って流れ込んでくる。

わたしは内臓が引っ繰り返るくらいの剣幕で怒鳴った。


33.
(゚、゚#トソン「いいこと教えてあげる、あんたを蹴っ飛ばしたのは誰だと思う!?

     学校の屋上に続く階段から!」

(゚p゚)「ね、姉ちゃ……俺、やっぱ帰る……」


わたしはドアの前からどかなかった。


(゚、゚#トソン「わたしがやったのよ! わたしが!

     池沼が家族にいるなんて耐えられなかった。

     恥ずかしくてみっともなくて、死ねばいいって……お前なんか死ねって……」

(゚p゚)


永遠とも思えるような沈黙。

わたしはそれとなくバスルームの方を見た。

彼はしばらくためらった様子でいたけど、やがてよろよろそっちへ向かった。


(^p^)「知ってたよ、俺……知ってたよ。兄ちゃんも知ってた……」
34.
声はひどく虚ろに聞こえた。


(^p^)「でも認めちゃいけなかったんだ、認めちゃいけなかったんだ……」


バスルームのドアが開く音がして、閉じる音がした。

しばらく狭いその場所を歩き回る、床がかすかに歪む音。

それからガツン、ガツンと激しく何かを壁に打ち付ける音。


(;p;)「うわああああ!! うわああああああああああ!!!」


祈りとも呪いともつかない、か細い悲鳴。

やがてドサリと重たいものが転がる音。

静寂の中にすべてを絶たれた死の音が溶けている。

わたしは部屋を出、職場に向かった。

出勤する為に。


35.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――


夜中の一時頃、わたしは職場を抜け出した。

ハインはあの優等生姿をして、ホテルの裏手で待っていた。

暗がりからその背後に迫る。

保冷バッグの中にあるビールビンを、首にハンカチを巻いて取り出す。

中の水が凍ってちょうどいい重さになっている。


(゚、゚トソン「ハインさん」

从 ゚∀从「おう! 来……」


わたしは踏み込みをかけ、彼女の側頭部目がけて思い切りビンを振った。

ガキンという頭蓋骨が軋む鈍い音。


从 ∀从「て、てめ……」


36.
二度目でビンが砕け散り、ハインは二度と立ち上がることはなかった。

眼を閉じて死体に囁く。


(-、-トソン「悪党の最期なんてこんなもの」


次の日、死体置き場に新顔が二つ増えた。

一つはハイン。

後頭部をビールビンでかち割られていた。

通報したのはわたし。

彼女にホテルの裏側に呼び出されて、約束の場所に行ったらもう死んでいたと言った。

もう一つはカタワー。

バスルームの壁に自分の頭を何度も叩きつけて死んでいた。

こんな方法で死ぬことが出来るかって?

前も言ったけど、カタワーは外傷で知的障害を患っていたの。

つまり脳に古い傷があった。それが破けて死因になったってわけ。
37.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(‐、‐トソン


わたしは取り調べ室にいた。

うつむいたわたしに、刑事がひっきりなしに脅迫の言葉を並べ立てる。

彼はもうわたしに気づかわしげな、愛想の良い態度は取らなかった。


( ´∀`)「誤魔化すなモナ。何故奴がお前を呼び出したりするんだモナ」

(‐、‐トソン「知りません。とにかく呼び出されたんです」

( ´∀`)「ケータイを何故水に漬けたりしたんだモナ?

       着信履歴からバレるからモナ?」

(‐、‐トソン「事故です。うっかり落としちゃって」


案の定と言うか何と言うかハインは用心深くて、必ず公衆電話からかけていたらしい。

でなければ今頃通話記録でわたしを正式に逮捕してる筈だ。
38.
( ´∀`)「いい加減吐くモナ! お前はハインの一味だモナ」

(‐、‐トソン「違います」

( ´∀`)「金をどこに隠したんだモナ!? 言うモナ!」

(‐、‐トソン「家宅捜索したんでしょう? 見つかったんですか?」

(;´∀`)「う……」


見つかったのはカタワーの死体だけ。

弟を見つけたのは捜索に入った刑事たちなの。


(‐、‐トソン「ハインが何故わたしを呼び出したのかは知りません。

      だけどわたしは行くしかなかったんです、怖かったから。

      それで行ったらもう死んでた。だから通報したんです」


部屋のドアが勢いよく開いて、別の刑事が飛び込んできた。


(・∀ ・)「先輩、指紋が出ましたよ! ビールビンから!」
39.
( ´∀`)「ふふん、これでどうモナ? さあ白状するモナ」

(‐、‐トソン「ハメようとしてるなら無駄ですよ。そんなわけない」


ビンから出るのはハインの指紋とハインの唾液のDNAだけ。

これが一層捜査をややこしくしてるみたい。

彼らが大騒ぎしてるのはどうしても証拠が見つからないから。

犯人に違いないに関わらずわたしが殺ったという確固たる根拠がどこにもない。

さんざんつっつき回されて、解放されたのが朝七時。


(゚、゚トソン(クビね。間違いなく)


わたしが真犯人であれどうあれ、もうホテル側が見逃すわけない。

留置所から出されたわたしは刑事に付き添われて裁判所へ連れて行かれた。

検事のオフィスの前の廊下でベンチに座らされ、手続きを待たされた。


(゚、゚トソン(ん?)
40.
オフィスのドアが半開きになっていて、中の会話が聞こえてくる。

あの声はわたしを担当していたモナーさんだ。


(;´∀`)「畜生、あいつが犯人に違いないのに!」

(・∀ ・)「しょうがないっすよ、証拠が何にもないんだから。

     有罪にするならカネとの結び付きを証明するしか」

(;´∀`)「うーん……」

(・∀ ・)「そのカネ……つまりバッグですけど、ホテルに送り返されてきたんでしょう?

     宅配便で。中身も入ってたし」

(゚、゚;トソン(!!!)


バッグが戻って来た!?


(・∀ ・)「これじゃ、どうやったって有罪には出来ないっすよ。

     ホテル側も保険会社も、誰も告発しようとしないんだし」

41.
( ´∀`)「でも人が死んでるモナ!」

(・∀ ・)「ショボンは筋モンでハインは文句なしの悪党じゃないすか。

     そりゃ、天罰ってもんですよ」

(;´∀`)「くそー、納得いかんモナ……」

(・∀ ・)「それは俺も一緒っすよ。まあ、待つことです。

     一度悪事でモメ事を乗り切った奴は、次にまた同じ事をしでかす」

( ´∀`)「くそっ、いいモナ。釈放の手続きをするモナ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


裁判所から放り出されたわたしは、ぼんやりと歩き始めた。

何も感じない。

昨日の夜からずっと何も食べていないのに、空腹すら感じない。


(゚、゚トソン(モララーさん……モララーさんは、一体何故あんなことを……)

42.
お金を送り返したというのがわからない。

理解できない……ううん、もういいや。そんなこと、もういいや。

フェリーに乗ってポッツヴィルへ戻る。

ちょうど日曜日で、暇を持て余した学生たちが街にひしめいていた。


( ゚∋゚)「おい、あいつ……」

(-_-)「ああ……」


そのうちの何人かが、わたしを見て何か囁いてる。

外聞なんかどうでもよかったけど、何か少し違う。

彼らは怒っていた。

わたしに怒りをたぎらせてる。


( ゚∋゚)「カタワーを死なせて……」

(-_-)「平気なツラしてよく……」

43.
(゚、゚;トソン(わたしが彼を殺したみたいに思ってる……?!)


カタワーの死の真相など知るわけないのに、彼らは明らかにそう考えてる。

わたしは足を速めた。

ホテルの従業員用裏口に入ると、マネージャーとばったり会った。


/ ゚、。 / 「都村さん……」

(゚、゚トソン「わかってます。明日にでも出て行きます」

/ ゚、。 / 「結構」


それだけで解雇通知は終わった。

……出て行く? どこへ? 無一文なのに?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


部屋に戻る。

44.
明日にはわたしの部屋じゃなくなる部屋に。

椅子に座ると、全身の感情が冷たさを伴って眼元に集まってきた。


(;、;トソン(わたしは……わたしは、何故生まれてきてしまったんだろう……)


こんなことを……こんな思いをする為なら、わたしは……

テーブルに涙がぽたぽた落ちる。

わたしは自分の膝を掴んで、声に出して泣いた。


(;、;トソン(た、耐えられない……こんなのもう、もう耐えられない……)

( ・∀・)「えっと……」


部屋の奥に、彼が立っていた。


( ・∀・)「ごめん、開いてたから勝手に……泣いてるの?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――
45.
わたしたちは並んでベッドに腰を下ろしていた。

わたしが半ば、彼に抱き付く形で。

モララーさんの手がわたしの髪に触れ、優しく頭を撫でた。


( ・∀・)「お金だけど、あれは……」

(;、;トソン「いいんです、もういいんです……お金なんか、わたしはあなたさえいれば……」


一度は失われたすべてが今、戻ってきた。

何もかも失った。それでもわたしは彼といたい。どうしても。


( ・∀・)「僕は他人の金に手をつけた人間がどうなったかこの目で見てきた。

      父がどんな死に方をしたか……」

(゚、゚トソン「ショボンさんがあなたのお父さんだったんですね」

( ・∀・)「ハインに聞いたのか。そりゃ、父さんが死んだのは当然のことだと思う。

      悪党の最期なんかあんなもんだって……でも、それでも僕は……」

46.
(゚、゚トソン「わたしがショボンさんが死ぬことをあらかじめ知ってたかも知れないと?」

( ・∀・)「そうだね。その疑惑がどうしても拭い切れなかった。

      最低の男だけど、それでも僕の父親だったから。

      あれで優しい頃もあったんだ……」

(゚、゚トソン「ごめんなさい……わたし、本当に知らなくて……」

( ・∀・)「いいんだよ。それに、今は確信があるんだ。君はそんな子じゃないって」

(゚、゚トソン「?」

( ・∀・)「君の弟さんだよ。実は少しだけ二人で話したことがあったんだ。

      君がどれだけ優しくて立派な姉さんか僕に聞かせてくれたよ。

      それを聞いて、僕は君のことを信じることができた」

(゚、゚トソン(カタワー……)


初めて彼に罪悪感を感じた。

ううん、でも……彼は最初から死んでるようなものだった。

47.
死がようやく無意味な人生に終止符を打ったと考えるべきかな。


( ・∀・)「弟さんは残念だった。自殺だって?」

(゚、゚トソン「ええ、壁に頭を打ち付けて……
                テンカン
     障害を負ってから癲癇気味のところがあって、たまに……ああいう……」

( ・∀・)「君のせいじゃないよ。君のせいじゃない」


わたしの頭を撫でながら、モララーさんは子供をあやすように囁いた。

また涙が滲んでくる。


( ・∀・)「これからどうするんだい?」

(゚、゚トソン「ここは明日中に出なければならないんです。

     もう本当にどうすればいいのか……」

( ・∀・)「僕が何とか……」


する、という最後の言葉を聞き取る寸前にドアがノックされた。
48.
反対側で声がする。


('A`)「俺だ、お姉さん。少し話がしたいんだが」

( ・∀・)「誰かな」

(゚、゚トソン「えっと……弁護士さんです。

     弟がよく相談に乗ってもらってたから、多分そのことで……」

( ・∀・)「わかった。僕は部屋の奥にいるから」


彼は奥の部屋に行った。

ドアは半開きになっていて、こちらのやりとりが聞こえるようにしてある。

わたしは神経が高ぶった。

これが本当に最後の対決。


(゚、゚;トソン(落ち着いて。こっちにやましいところは何もない……)


ドアを開けるとドクオさんが入ってきた。
49.
相変わらず貧相な身なりにすさまじい威圧感を放っている。


('A`)「どーも。是非話がしたくって」


勝手に椅子に座り、バッグをテーブルに乗せる。


(゚、゚トソン「何の用なんですか?」

('A`)「君に金をやろう。山ほどあるぞ」

(゚、゚#トソン「???」


ドクオさんはバッグを開き、中から札束を取り出した。

千円、五千円、一万円の札がごっちゃになった不揃いなのが全部で100万か200万円か……

とにかくいっぱい。


(゚、゚トソン「何です、このお金?」

('A`)「君のモンだよ。遠慮なく受け取るといい」

50.
(゚、゚#トソン「ちゃんと説明して下さい!」

('A`)「カタワーくんが俺に預けてた金なんだよ、これは。

   彼は自分自身のことをよく知っていて、悪い奴に付け込まれないよう誰かに預かって

   もらって欲しかったんだな」

(゚、゚トソン「……」


膝の上で組んだわたしの手が震えてる。


('A`)「君はカタワーくんが金を俺に払ってると思ってたみたいだが、そうじゃねえんだ。

   俺は貯金の手伝いをしてただけなんだよ。

   彼は自分の生活費を削ってまで金を貯めてたんだぞ。君が大学に行けるようにだ」

(゚、゚;トソン「わ、わたしは……わたしは、知らなくて……」

('A`#)「何が知らなかっただ!? 君は彼の為に何かしたのか、ええ?

    彼はな、ずっと君を庇ってたんだぞ。他人に何を言われようとな!

    そんないい男を君は見殺しにしたんだぞ、わかってんのか」
51.
(゚、゚;トソン「見殺しにした?! わたしが知らないところで彼は死んだんですよ」


まずい。

これは非常によくない流れだ。


('A`)「ほほう、そうかな?

   カタワーくんの死亡推定時刻は君が部屋を出る前だったぞ。

   つまりまかないを食って職場に出るには、最低でもその時間に出なきゃならん。

   これはどう説明する?」

(゚、゚;トソン「知らっ……知らなかったんです、カタワーがそんなことしてるなんて!

     わたしの部屋に遊びに来て、それで……それで……

     わた、わたしは、仕事があるから部屋を出て、彼は……だから……」

('A`)「気付かなかった!? おいおい、壁に頭を全力でぶつけてたんだぞ。

   それに気付かなかった? 何も聞こえなかった?」


52.
ドクオさんは右の拳を左手の平に打ち込んだ。

パシン。

ごくわずかな音だけど、わたしは頬を引っ叩かれたように感じた。


('A`)「君は気付いてた。その音が実によく聞こえていた。

   だが何もしなかった。死ぬに任せた、間接的に殺したんだよ。

   止めればカタワー君は助かったのに何もしなかった。

   そうだろう? 違うか?」

(゚、゚トソン「……」

('A`)「実はホテルの外に知り合いの刑事に待ってもらってる」


ついにあの音がした。恐れていた音が。

バタン、と冷たくドアを閉じる音。

今に聞こえるだろうとは思っていた、決然とした音……

わたしは今、永久にモララーさんの世界から締め出された。
53.
( 、 トソン


わたしは兄さんを今再び、永久に失った。


( 、 トソン「着替えても、いいですか……」

('A`)「三分待ってやる」


わたしは隣の部屋に入った。

モララーさんは壁に背を預ける形で立っている。

こっちを見ているけど、その目はわたしを見ていなかった。

わたしを通り越してどこかを見ている。

わたしが窓を開けてベランダに出ても、彼は何も言わなかった。

まるでわたしなんか最初から存在していないみたいに。


(  ∀ )

(;、;トソン
54.
ベランダから非常階段に飛び移り、わたしは階段を一歩ずつ上がって行った。

麻痺していた恐怖が怒涛のように流れ込んでくる。

絶望、絶望、絶望、絶望――――――――――――――――

頭を抱え、処刑台へ引っ立てられて行く罪人のように、階段を上がってゆく。

ホテルの屋上に辿り着いた。


(;、;トソン「ひっ……ひっく……」


顔を押さえて眼をぎゅっと閉じる。

目の前で起きていることすべてを拒絶するかのように。

わたしが今ここではるか下の地上を臨んでいても、モララーさんは来てくれない。

振り返ることすらできない。

だってそこにモララーさんはいないから。


(;、;トソン(止めに来て、モララーさん……お願い、止めに来て……!!)

55.
両腕自分の体を抱き締める。

誰もいない。わたしの世界には誰もいない。

わたしは虚空に踏み出した。

重力が消え失せる。





消えてゆく。

“わたし”がみんな、消えてゆく。






この世のすべてであるあなたを失った今、わたしにとってもう、世界は存在しない。



おしまい
スポンサーサイト
プロフィール

(゚q 。川カンザイ

Author:(゚q 。川カンザイ
完全犯罪(カンザイ)
プラネットライカは隠れた名作

最近のコメント
最近の記事
月別アーカイブ
FC2カウンター
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。