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/ ,' 3キラーエッジのようです

影響を受けたのはリベリオンとかマスターキートンとかそのへん。
アクション映画ってほんっとーにいいもんですね!


1.
北欧のとある小国ヴィップ。

ソ連崩壊後、大国に習い革命によって資本主義に転換した民主国家である。

しかし他の大多数の元共産国家と同じく今さら屋台骨を立て直すだけの体力はなく、

破綻しかけた経済をEUからの支援で何とか支えている状態だ。

街にはホームレスが溢れ、配給車に列を作っている。


/ ,' 3「やれやれ。いつになったら状況が良くなるのか……」


その日、荒巻スカルチノフは今日も徒歩で職場へ向かっていた。

彼もまた中古車のディーラーでありながら、ガソリン代に事欠いて車に乗れないという

有様だった。





キ ラ ー エ ッ ジ の よ う で す


2.
毛玉の多い古びたコートを羽織り、寒さに体を丸めて歩道を歩く。

大通りを走る車はゼイゼイと苦しげにエンジンが喘ぐ中古車がほとんどだ。

一日中ここに立って新車を数えても多分、両手の指はいっぱいにならないだろう。

寒さに耐えかねて荒巻は途中、道端の売店に寄った。


/ ,' 3「よう。ブラック一杯くれ」

( ´∀`)「こりゃ中古車屋の旦那。毎度モナ」

/ ,' 3「まったく。暴君は死んだのに世の中は少しも良くならんな」

( ´∀`)「まったくで」


カウンターの向こうに置かれたテレビではかつてこの国に君臨していた独裁者が

街頭に吊るされるシーンを放送している。

もう10年以上も前の映像だ。


/ ,' 3「悲惨な光景だ。革命なんぞせんで済めばそれに越した事はないよ」

3.
( ´∀`)「粛清もんの発言モナ」

/ ,' 3「ハハハ……」


確かに当時こんなセリフを吐けばあっという間に秘密警察に捕まっただろう。

コーヒーを受け取ろうとした時、薄汚れた子供たちが寄って来た。


( ><)「おっちゃん、食い物恵んでくれー」

(*゚∀゚)「お金ちょうだーい」

/ ,' 3(ストリートチルドレンか……)

(#´∀`)「くぉら、向こう行け!! このへんうろつくなって言ったモナ!」


子供が散ると荒巻はコーヒーを受け取り、代金を払ってまた歩き出した。

コーヒーを大事にちびちび飲みつつ経営の事を考えていると、目の前にまたも

浮浪児が立ちふさがった。


/ ,' 3「ん」
4.
( ^ω^)


左右を壁に挟まれた狭い路地で、相手は待ち構えていたかのような素振りだ。

16歳かそこらの少年はいきなり懐からナイフを抜いた。


(;^ω^)「金を置いてくお! でないとぶっ殺すお」

/ ,' 3「わかったわかった。コーヒーを飲み終えるまで待ってくれ」

(#゚ω゚)「ふざけんなお!」


少年はナイフ、と言うか棒切れの先に尖った金属片をテープで巻き付けた槍みたいなものを

手ににじり寄ってきた。

荒巻きは冷静に間合いを計った。


(;゚ω゚)「し、死ねお!!」


相手がぎこちない動きでこちらの足を突いてきたところで、顔面にコーヒーをぶっかける。

5.
( ゚ω゚)「ギャ―――!! あっつい、あっついお!!」

/ ,' 3「だから言っただろ、飲み終えるまで待てと。アホめ」


地面に落とした武器を拾い上げ、切っ先に触れる。

自作か? なかなか器用な奴だ。


/ ,' 3「金が欲しいのか? ん?」


荒巻きは少年の胸倉を掴んで捻り上げた。


(;^ω^)「うう、やめてくれお。悪かったお、僕の負けだお」

/ ,' 3「質問に答えろ。金が欲しいのかと聞いてるんだボケ!」

(;゚ω゚)「ひいい! もう要らないですお!!」

/ ,' 3「くれてやろう。着いて来い」

( ^ω^)「ええ!?」


6.
槍を側溝の金網の中に投げ捨て、荒巻は歩き出した。

少年は長いこと悩んでいたがやがてその背を追って走り出す。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


二人は大通り沿いにある中古車販売店にやって来た。


/ ,' 3「わたしの店だ」

( ^ω^)「知ってるお……」

/ ,' 3「ほう? わたしがここの店主だと知ってて狙ったのか?」

( ^ω^)「……」

/ ,' 3「まあいい。こっちだ、来い」


居並ぶ車はどれも走るのがやっとと言った様子で、錆を吹いているのも珍しくない。

荒巻はその間を縫って歩き、奥のガレージへ少年を連れて行った。


7.
/ ,' 3「日本車はタフでいい。旧ソの車なんぞあっという間にパーツが腐るぞ」

(;^ω^)「えーと、それでお金をくれるってのは……」

/ ,' 3「そこに布があるだろう。乾いたのが」

( ^ω^)「あるお」

/ ,' 3「で、そっちの青い缶はワックスが入ってる。

    緑の缶は錆取り剤だ。わかったか?」

( ^ω^)「???」

/ ,' 3「お前はどれほどアホなんだ? 頭に詰まってるのはオガクズか?

    とりあえず右端から順番に拭いてくんだ」

(;^ω^)「え!? 僕が?」

/ ,' 3「他におるなら紹介しろ。そうすりゃわたしだってお前なんぞ雇うものか」

(;^ω^)「むかつくジジイだお! 何で僕がそんなことしなきゃいけないんだお」

/ ,' 3「嫌ならわたしのコーヒー代を弁償してもらおうか」

( ゚ω゚)「えええ!?」
8.
/ ,' 3「そういうわけだ。しっかりやれ」


文句を垂れながらも少年は作業を始めた。

荒巻はプレハブの事務所に入り、慣れない仕草で車を磨くその様子を眺めた。


(;^ω^)「うひい、思ったより大変だお」


午前中に来た客は二人だけで、どちらも値段を聞いただけで帰って行った。

そして正午ごろ。

もとよりそれほど車が多かったわけではないので、昼食前には内藤の仕事が終わった。


(;^ω^)「終わったお」

/ ,' 3「うむ」


荒巻は車を見て回った。


( ^ω^)「約束だお、金くれお」
9.
/ ,' 3「まるで綺麗になっとらんな。指紋ベタベタつけおってこのボケが」

(;^ω^)(姑みたいに細かいおっさんだお)

/ ,' 3「そういうわけでやり直しだ」

(;゚ω゚)「えええ?! 全部かお」

/ ,' 3「当たり前だ」

(;^ω^)「あのー、ひょっとしてご飯は……」

/ ,' 3「何言っとるんだ、自分の仕事も終わっとらんのに図々しい」

(#^ω^)(た、耐えるお……! お金の為だお)


内藤は怒りに爆発しそうになりながら仕事に戻った。


/ ,' 3(お、意外だ。憤慨して投げ出すと思ったが)

( ゚ω゚)「あのジジイ! 死ねお! 死ね、死ね!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

10.
日が暮れてくると荒巻は店仕舞いを始めた。


(;^ω^)「お、終わったお……うひい、ヘロヘロだお」


内藤の磨いた車をひとしきり見て回ると、荒巻は不満げに言った。


/ ,' 3「まあ多少はマシになったか。本当に多少だがな」

(#゚ω゚)(いちいちムカつくおっさんだお!!)

( ^ω^)「それでお金は……」

/ ,' 3「ほれ」


荒巻は内藤の差し出した手の中に紙幣を数枚落とした。

大金に見えるがインフレのこの国では小銭も同然だ。


( ^ω^)「えええ!? これっぽっち?」

/ ,' 3「バカを言うな。キリスト様も目を剥く慈悲深さだろう?」

11.
(;^ω^)「チクショー、やってられっかお! ボケじじい、死んじまえお!」

/ ,' 3「どっちかって言うとお前が野垂れ死にする方が早いんじゃないか?」

(#゚ω゚)「ムッキイイ―――!!」


走り去る少年を見送り、荒巻は帰路についた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


翌朝職場に向かうと驚いたころにあの少年、内藤が早く来て待っていた。


( ^ω^)「フヒヒ、おはようございますお。意外ですかお?」

/ ,' 3「このアホが。昨日仕事道具のある場所は教えただろうが?

    早く来たなら何故仕事を始めとらん?」

(#^ω^)「おっさん、あんた家族と親戚の鼻つまみものじゃないかお?」

/ ,' 3「あいにくどっちもおらん。お前もだろう」

( ^ω^)「僕はいるお」
12.
/ ,' 3「何だと? じゃあ何で町をウロウロしとるんだ?」

( ^ω^)「……」

/ ,' 3「まあいい。しっかりやれ」


荒巻は事務所に入り、改めて働く内藤の姿を見た。

彼は着る物が他にないらしく、昨日のコーヒーの染みがついたままの服を着ている。

誰がどう見たって浮浪児で、しかも顔立ちと肌の色から彼はロマに違いなかった。

ロマと言うのは流浪民ジプシーの末裔のことで、コーカソイドの荒巻たちとは人種が違う。

ロマは弱い犬はもっと弱い犬に噛み付くというこの世の原理に従って、ヴィップ国の

社会的ヒエラルキーの最下層に属している。


/ ,' 3(彼らも革命の犠牲者には違いないんだがな。

    少なくとも共産時代には連中にも食って行けるだけの仕事があった)


事務仕事をこなしていると、昼前に内藤がやってきた。

13.
( ^ω^)「おっさん、終わったお」

/ ,' 3「社長と呼ばんかバカモンが」

(;^ω^)「社長、終わったお」


荒巻は昨日と同じように車を一台一台、隅々まで見て回った。


/ ,' 3「それとそれとそれが綺麗になっとらんぞ。やり直し」

(;´ω`)「うひい、またかお。勘弁してくれお」

/ ,' 3「その前に、ほれ」

( ^ω^)「ん?」


荒巻は内藤に金を渡した。


/ ,' 3「先に飯食って来い」

( ^ω^)「おっおっおっ。食事代かお、ありがたいお」

/ ,' 3「午前中の日当だボケ。お前なんぞに奢るか」
14.
(#^ω^)「将来あんたを介護してくれる人はこの世のどこにもいないと思うお」


捨てゼリフを吐いて街に消える彼を見送り、荒巻は事務所で持参の弁当を食べた。

食休みに暗いニュースばかりの新聞を読みながら時計に目をやる。


/ ,' 3(どこまで食いに行ったんだあのアホは)


やけに内藤の帰りが遅い。そのまま逃げたか?

重い腰を上げて事務所を出る。


/ ,' 3(やれやれ、リクルートとは難しいもんだな)


別のバイトを雇わなければ、と思いを巡らせていると内藤が戻ってきた。


(#)^ω^メ)「ただいまお」

/ ,' 3「……」

(#)^ω^メ)「仕事するお」
15.
/ ,' 3「ああ。そうだな」


内藤の顔の傷を一瞥しただけで、荒巻は事務所に戻った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


次の日の朝、職場に向かう途中、荒巻は街で内藤の姿を見かけた。

向こうはこちらに気づいていない。


(#);ω;)「ひいい、痛いお! 許してお!」

( `ハ´)「出せっつってんだアル、てめえが金持ってんのは知ってるアル」

(・∀ ・)「オラオラ、我慢したところでてめえの為になんねーぞ」


路地裏で同年代の少年二人にボコボコにされている。

内藤は耐えかねてとうとうポケットの金を差し出した。


(・∀ ・)「明日も持って来いよ」
16.
( `ハ´)「逃げたらてめータダじゃおかねえアル」

( ;ω;)「うう……ひぐっ……」


荒巻は素知らぬ顔で職場に向かった。

しばらくすると内藤が体を引きずりながらやってきた。


/ ,' 3「どうした? 今朝は目覚まし時計が壊れたのか、ん?」

(#)^ω^メ)「転んだんだお、ほっとけお。道路が穴だらけだから悪いんだお」

/ ,' 3「まったくだな! 道路公団の財政状況が好転することを期待するばかりだ」


その日の仕事が終わり、夕方になると、内藤はいきなり荒巻にひざまずいた。


( ;ω;)「お願いですお社長、お金貸して下さいお! 今夜の夕食代もないんですお」

/ ,' 3「ちゃんとやっとるだろ。昨日の金はどうした?」

(;^ω^)「え、え~と……お、落としたんですお」

/ ,' 3「だからこうしてわたしに物乞いか? ん?」
17.
(#^ω^)「あんた金いっぱい持ってるんじゃないのかお!?

      少しくらい僕に恵んでくれたっていいお!」

/ ,' 3「アホめ」


荒巻は内藤を見降ろした。


/ ,' 3「お前は物乞いをすればタダで金を貰えると思っているようだな」

( ^ω^)「え? そりゃあ、当たり前だお……」

/ ,' 3「それは違うぞ。お前がこれまで何度物乞いしたか知らんが、お前は相手に

    売り渡しているんだ、その都度ある物をな」


しゃがみ込んで彼と視線を合わす。

懐から札を数枚取り出した。


/ ,' 3「それはな、プライドだ。そしてプライドはお前自身の価値だ。

    パン一つ分の金がここにある」
18.
( ^ω^)「……」

/ ,' 3「この札切れ二枚の為にお前自身を売れるか?

    お前はたったこれっぽっちの価値しかないのか、ええ?」

( ;ω;)「う、うう……」

/ ,' 3「他の物はいくらでも売り買いしても構わん。

    どうせ金も家もあの世までは持って行けんのだからな。

    だが自分自身だけは安売りするな」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


翌朝。

荒巻が職場につくと、すでに内藤の姿があった。

相変わらずボコボコにされているが満面の笑みを作っている。


(#)^ω^メ)「フヒヒ」

19.
/ ,' 3「キモイな」

(;)^ω^メ)「ひどいお」

/ ,' 3「で、今朝はどうだったんだ? 売らなかったのか?」

(#)^ω^メ)「え?」

/ ,' 3「昨日までバーゲンセールしてたものをさ」


内藤は彼の質問の意味をややあってから理解した。


(#)^ω^メ)「あんた見てたのかお!?」

/ ,' 3「昨日はな。今朝は知らん」

(#)^ω^メ)「ふふん」


荒巻に対して思い切り胸を張って見せる。


(#)^ω^メ)「僕のプライドは誰にも売れないお」

/ ,' 3「そうだ」
20.
荒巻は初めて彼に笑みを見せた。


/ ,' 3「その意気だ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


内藤を雇って一週間が経ったある日のこと。

荒巻はある日、ボロボロのキャンピングカーを牽引して来た。

独裁政権時代の高級官僚が持っていたものだ。


( ^ω^)「こりゃいくらで買ったんですかお?」

/ ,' 3「タダだった。邪魔だから持ってってくれとさ。

    革命の日に暴徒にぶっ壊されたらしいな」

( ^ω^)「おっおっおっ。もったいないお」

/ ,' 3「今日は他の車はいいからこいつを綺麗にしろ。

   潔癖症の修道女がケツを拭きたくなるくらいにな」
21.
(;^ω^)「下品なおっさんだお」


内藤は数日かけて壊れた部分を直し、汚れた部分は洗って、何とか見れる物にした。


(*^ω^)「どんなもんだいだお」

/ ,' 3「よくやった。じゃあ今日からここがお前の家だ」

( ^ω^)「え……?」

/ ,' 3「エンジンがぶっ壊れてて動かんのだ。売り物にならん」

( ;ω;)「お、おっさん……」

/ ,' 3「社長だっつっとるだろうがバカモン。

    夜の間はお前が警備員になれ。わたしの店を見張るんだぞ」

( ^ω^)「はいですお!!」


こうして内藤はこの日から浮浪児でなくなった。



22.
翌日、荒巻が出勤すると、内藤がいつものように車を磨いていた。

荒巻は改めて感心した。


/ ,' 3(まあ、半人前くらいには使えるようになったか)


そう思っていたら内藤の宿であるキャンピングカーから若い女性が下りて来た。

いかにも夜の女っぽい格好だ。

荒巻は途端に顔をしかめ、靴音も高らかに内藤に詰め寄った。


/ ,' 3「このアホガキ!」

(;^ω^)「おはようございま……いきなり何だお?」

/ ,' 3「わたしの店に売女なんぞ連れ込みおって!!

    少しばかり使えるようになったと思ったらもうこれか?

    そんな金の使い方しか出来んのか、ええ?!」

(;^ω^)「えあ?!」

23.
ξ ゚⊿゚)ξ「あの」


女が割って入って来た。


/ ,' 3「内藤、とっとと金払って追い払え!」

ξ ゚⊿゚)ξ「えっと、ちょっと誤解があるようなんだけど……」

( ^ω^)「社長、僕の姉ちゃんなんですお」

/ ,' 3「姉……?」


荒巻は女を無遠慮にじろじろ見た。

同じロマだが内藤より一回りは年上に見え、なかなかの美女だ。

彼の間抜け面とは似ても似つかない。


/ ,' 3「お前ら二人でわたしを騙そうとしとるのか?

    わたしはそこまでモウロクして見えるか、ああ? ナメおって!!」

(;^ω^)「もー、話のわかんないじじいだお」
24.
ξ ゚⊿゚)ξ「本当の姉弟じゃないんです。そんな関係ではあるけど」

( ^ω^)「僕の親代わりみたいな人なんですお」

/ ,' 3「ふぬう……」


事務所に入れて詳しく話を聞くことにした。

その女、ツンは正確には内藤の従姉弟で、両親は違うらしい。

二人とも両親が死んだり失踪したりした為、叔母の元で育てられたのだが、その叔母も

麻薬で死んで町に放り出されたのだと言う。


( ^ω^)「姉ちゃん、娼婦になるしかなかったんだお……

      でも僕はそれが嫌だったんだお。だから姉ちゃんの負担になりたくなくて」

ξ ゚⊿゚)ξ「……」

/ ,' 3「事情はわかったが、ウチの経営じゃ二人も雇えんぞ」

( ^ω^)「どうってことないお! 僕が姉ちゃんを養うお!」

ξ ;⊿;)ξ「ブーン……」
25.
( ^ω^)「お願いしますお、社長。姉ちゃんもここに置いて下さいお。

      僕もう姉ちゃんに客取らせたくないんですお」

/ ,' 3「ふうむ……」


荒巻は鼻を鳴らして髭を撫でた。

何だかおかしなことになってきた。


/ ,' 3「まあいいがな、トラブルはなしだぞ」

(*^ω^)「おっおっおっ。ありがとうございますお」

ξ ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます。わたし、何でもします!」


二人は事務所を出、外で一緒に車を磨く仕事を始めた。

荒巻は書類を広げながらその様子を見遣る。


( ^ω^)「ああ見えていい人なんだお」

ξ ゚ー゚)ξ「そうみたいね。みんながみんなロマに冷たいわけじゃないわ」
26.
/ ,' 3(やれやれ、とんだお荷物を背負い込んでしまったな)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


一か月が経ったある日、仕事を終えた荒巻が帰宅しようとすると、内藤に呼び止められた。


/ ,' 3「何だ? もう帰るとこなんだが」

( ^ω^)「ちょっと見て欲しいものがあるんですお」

/ ,' 3「お前のツラなんぞ見飽きとるぞ」

(;^ω^)「その性格、死ぬまで治らないのかお……」


店の隅に置いてあるキャンピングカーに入ると、ツンが待っていた。

テーブルに小さな手作りのケーキが置いてある。


∩(*^ω^)∩∩ξ*゚ー゚)ξ∩「いえーい」

/ ,' 3「?」

27.
( ^ω^)「今日でちょうど僕が働き始めてから一か月ですお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「お祝いしようと思って」

/ ,' 3「ああ、もう一か月か……道理でお前らの顔も見飽きるわけだ」

(;^ω^)「そういうこと言うなお」

ξ ゚⊿゚)ξ「わたしが作ったんだけど、良かったら……」

/ ,' 3「バカにしとるのか? こんな事で呼びつけおって!!」


荒巻は突然、怒鳴り声を上げた。


(;^ω^)「え……?」

ξ;゚⊿゚)ξ「迷惑だったかしら」

/ ,' 3「ふん」


荒巻はキャンピングカーを出て行った。


( ^ω^)「あ、おっさん」
28.
ξ;゚⊿゚)ξ「気難しい人ね」

(#゚ω゚)「まったく、どんだけ偏屈なんだお!!

     せっかく姉ちゃんが用意してくれたのに!」

ξ ゚⊿゚)ξ「いいわ、わたしたちだけで食べましょ」


ケーキを二人で切り分けていると、そこに荒巻が戻ってきた。


(#゚ω゚)「おっさん、何の用だお!?」

/ ,' 3「ふん、アホどもめ。いいか、こんなショボいパーティはな!」


どこかの酒場にひとっ走り行って来たのだろう、息を弾ませながら、荒巻は酒瓶を

テーブルに置いた。

彼らの経済状況からすればそれなりに高価な酒だ。


/ ,' 3「酒がなければやっとれんわい」

( ^ω^)「おっさん……」
29.
/ ,' 3「何だ、文句でもあるのか?」

( ^ω^)「酒ならもう買ってあるお」

/ ,' 3「うぐっ!? ど、どうせ安物だろうが」


内藤は荒巻と同じ銘柄の酒瓶を取り出した。


/ ,' 3「うっ。え、えーとだな、あー……」

ξ ゚ー゚)ξ「アハハハハ!」


荒巻が真っ赤になると、ツンがお腹を抱えて笑った。


( ;ω;)(姉ちゃんが笑うとこ久々に見たお……)

/ ,' 3「ええい、とにかく飲むぞ!」

ξ ゚ー゚)ξ「はいはい。三つに切り分けるわよ」


扶養家族のせいで内藤の生活は苦しかったが、彼はいつになく幸せそうだった。

30.
荒巻を襲った時に見せた、あの餓えた獣みたいな感じが綺麗に消えている。


/ ,' 3「うーむ……」

( ^ω^)「どうだお。いくら目を凝らしてももうこれ以上は綺麗にしようがないお」

/ ,' 3「調子に乗りおって、アホが」


ある日、何とか内藤の仕事にケチをつけようと荒巻が車に眼を凝らしていると、客が来た。

珍しいことにピカピカの新車に乗っている。


(´・ω・`)「荒巻、久し振りだな」

/ ,' 3「む……ショボンか」

( ^ω^)「知り合いですかお」

/ ,' 3「まあな。ツンに茶はいらんと伝えてくれ」


荒巻はショボンと事務所に入った。

表情は一段と険しい。
31.
/ ,' 3「もう手は切った筈だぞ」

(´・ω・`)「わかってる、わかってるよ。ただヤバイんだよ、無茶苦茶ヤバイんだ。

     頼む、助けてくれ」

/ ,' 3「……」

(´・ω・`)「ブツをどうしても手元に置いておけないんだ。サツに目を付けられてる。

     しばらく預かってくれないか? ほんの少しの間でいいんだ」

/ ,' 3「麻薬か?」

(´・ω・`)「ヘロインだ。ロシアのルートから買ってる」

/ ,' 3「気が進まんね」

(・ω・`;)「頼むよ! そう言わないでくれ、今回だけでいいんだ。頼む」


憔悴しきった旧友の表情を見ると、嘘ではないらしい。


(´・ω・`)「そりゃお前は運が良かったさ、カタギになれたんだから。

     だがみんながみんなそんな道を選べたわけじゃねえ。俺は被害者なんだぜ」
32.
/ ,' 3(麻薬でボロ儲けしといて何が被害者だ)

(´・ω・`)「頼む、今回こっきりでいいんだ。一度だけ俺のキリストになってくれ」


荒巻は目を閉じ、首を振った。


/ ,' 3「わたしは恩知らずではない。現役時代の恩は忘れちゃいない」

(・ω・`;)「ありがとう、助かるよ! 礼はたっぷりするから……」

/ ,' 3「いらん。その代わり誓え、今後いっさいわたしには関わらんとな」

(・ω・`;)「う……わかった」

/ ,' 3「いいだろう」


数日後、ショボンが二台のワゴン車を持ってきた。

一台は自分、もう一台は部下に運転させている。


(´・ω・`)「頼んだぜ。三日でいいから」

/ ,' 3「うむ」
33.
ショボンを見送ると早速内藤がやってきた。


( ^ω^)「おっおっおっ。あのおっさんから買ったのかお」

/ ,' 3「そんなところだ」

( ^ω^)「早速綺麗にするお」

/ ,' 3「いや、いい」

( ^ω^)「え?」

/ ,' 3「借金の担保に預かっただけだ。ほっとけ」

( ^ω^)「……?」


釈然としない説明に内藤は首を傾げた。

小銭の管理に異様に厳しいこのおっさんが誰かに金を貸している?


/ ,' 3(む……)


荒巻は店の前の路上に停まっていた車に気付いた。
34.
窓を少しだけ開いて男がこちらの様子を伺っている。


( <●><●>)


一瞬視線が合ったが、男はすぐに車を出して姿を消した。


/ ,' 3(気のせいか……)

( ^ω^)「おっさん、どうしたんだお」

/ ,' 3「どうもせん。仕事に戻れ」

( ^ω^)「わかったお」


その日はそれから車が一台売れただけで誰も来ず、店じまいとなった。

帰り支度をした荒巻が残業している内藤に声をかける。


/ ,' 3「わたしは帰るからな。しっかりやれ」

( ^ω^)「わかってるお」

35.
/ ,' 3「それからな」

( ^ω^)「?」

/ ,' 3「強盗が来てもな、抵抗するな。何でもやってしまえ。

    車でも事務所の金庫でもだ」

(;^ω^)「ええ?!」

/ ,' 3「また明日」

( ^ω^)(変なおっさんだお。何であんなことを……?)


荒巻が去ると内藤は自宅のキャンピングカーに戻った。

先に帰っていたツンが夕食を作っている。


ξ ゚⊿゚)ξ「お帰りなさい」

( ^ω^)「ただいまお。姉ちゃん、仕事は見つかったかお」

ξ -⊿-)ξ「ダメねえ。どこも雇ってくれないわ」

(;´ω`)「まったく、いつになったら景気が良くなるんだお……」
36.
ξ ゚⊿゚)ξ「暗い話はこれくらいにしてご飯にしましょ。

      ほら、あんたの好きなサラミ買ってきたわ」

(*^ω^)「おっおっお。ありがたいお」


夕食を終えると特にやる事もなく、二人は早々にベッドに入った。


ξ -⊿-)ξ「ZZzz……」

( ^ω^)(昼間のおっさんのセリフが気になるお。

      まるで強盗を予見したかのようだお)


なかなか寝付けず深夜になると、どこかで大型車両の排気音がした。

どんどんこっちに近付いて来てやがて停まる。


( ^ω^)(ん……何だお?)


足音がいくつか、ばらばらとこっちにやって来る。

37.
一時間後。

荒巻の住むアパートの一室では、彼が就寝していた。

電話が鳴る。


/ ,' 3「今何時だと思ってるんだ、まったく……もしもし?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


荒巻は町の小さな病院へと駆け付けた。

ベッドの上では応急手当をされたツンが横たわっている。

左腕を撃たれたようだった。


/ ,' 3「ツン!」

ξ -⊿-)ξ「荒巻さん……」


麻酔で朦朧とした視線がこちらを向く。

38.
(´・_ゝ・`)「うちでこれ以上の治療は無理だね」

/ ,' 3「何だと!?」

(´・_ゝ・`)「薬も医療機器も何にも足りないんだ。

      まあ、大きな病院に移せないでもないけど……」

/ ,' 3「そんなことだろうと思った」


荒巻は膨れ上がった封筒を懐から取り出し、医者に押し付けた。

医者は封筒の中身を確認すると、頷いて部屋を出た。


(´・_ゝ・`)「すぐに手配するよ」


ξ -⊿-)ξ「ごめんなさい、こんなことに……なるなんて……」


ベッドの横に椅子を置いてツンの顔を覗き込む。


/ ,' 3「ここに来る前に刑事に聞いた。強盗か?」

39.
ξ -⊿-)ξ「ええ、強盗……強盗がね、店の車を……」

/ ,' 3「……」

ξ -⊿-)ξ「今日の昼間に入ったばかりのワゴン車が盗まれそうになって……

     止めようとしたブーンが撃たれてね……ねえ、ブーン、ブーンは……?」

/ ,' 3「……」


荒巻は目を固く閉じ、首を振った。


/ ,' 3「死んだそうだ」

ξ -⊿-)ξ「ああ、何てこと……何て、こと……」

/ ,' 3「……」

ξ ;⊿;)ξ「あんないい子が死ぬだなんて……!」


荒巻はそれ以上何も言えなかった。

医者が戻ってきて、ツンを担架に移す。

40.
(´・_ゝ・`)「ラウンジ病院に移すことになった。いいな?」

/ ,' 3「ああ……」

ξ ;⊿;)ξ「ブーン、ブーン……! 嘘でしょ、ブーン……」


ツンの声が遠退いてゆく。

荒巻は椅子から立ち上がることも、顔を上げることも出来なかった。


/ ,' 3「わたしのせいだ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


翌朝、自分の店に出ると、確かにワゴン二台だけがなくなっていた。

警察は早々に引き揚げてすでに姿は見えない。

事務所に入ると明らかに腹を立てているショボンと部下二人がいた。


(・ω・`;)「どうしてくれるんだい? 20キロのヘロインだぞ」

41.
/ ,' 3「……」

(´・ω・`)「取り戻してもらうぞ。イヤでもな」


目の前にショボン、彼の部下は荒巻を取り囲む形で圧力をかけている。


/ ,' 3「ふざけるな」

( ゚∋゚)「ふざけてるのはお前……」


背後から荒巻を羽交締めにしようとした男にピュッと空気が唸りを上げた。

かすかに衝撃が駆け抜けた喉を押さえ、一歩後ずさる。


( ゚∋゚)「あ……!?」

(,,゚Д゚)「てめえ!」


もう一人が掴みかかってくる。

影のような身のこなしでその腕を逆関節に取ると、再び右手に持ったものを宙に滑らせた。

42.
再び数度、空気が唸る。


/ ,' 3「下がれ若造ども。お前らは三度死んだ」

(;゚∋゚)(,;゚Д゚)「!?」


荒巻が持っているのはボールペンだった。

男二人のそれぞれ喉と両手首の頸動脈に当たる部分に黒い線が走っている。


(・ω・`;)「うぐ……」


ショボンの手が懐に入る。

その前に荒巻は怒声を上げた。


/ ,' 3「お前なら他の車を差し置いてあんなボロいワゴン二台だけ盗んでいくか?

    それもトレーラーまで引っ張り出してな。

    強盗どもは知ってたんだ、ワゴンに何が隠されているか!」

43.
(・ω・`;)「あっ? ああ……」

/ ,' 3「お前らの身内の誰かが裏切って、他の組織に情報を売った。違うか?」

(´・ω・`)「……」

/ ,' 3「お前は裏切り者を見つけ出せ」

(´・ω・`)「あんたはどうするんだ?」

/ ,' 3「ブツを取り戻し、報復する。お前に言われるまでもないわ」

(´・ω・`)「!」


相手の眼の中にある冷たい決意に、ショボンはその意志を察した。


(´・ω・`)「へへへ……こりゃすごい、“赤い梟”の復活ってわけだ」

/ ,' 3「とにかくどこの誰がくすねたかわからねばどうしようもない」

(´・ω・`)「わかってるって。それはこっちに任せろよ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

44.
裏切り者は案外簡単に見つかった。

ショボンの部下の一人があの夜以来、連絡が取れなくなっていたのだ。

街を出るあらゆるルートに部下を置いて見張らせておいたところ、そいつが捕まった。


((((;^Д^)))) ガクガクブルブル


地下室の椅子に縛り付けた裏切り者を、ショボンと荒巻が睨みつける。


(´・ω・`)「こいつがそのプギャーだ」

(;^Д^)「誤解があると思うんだ! 俺はただ旅行でもしようと……」

(´・ω・`)「黙らせろ」

( ゚∋゚)「ういっす」


ショボンの部下がアイスホッケーのスティックでプギャーを張り倒す。


(#) Д )   ゚ ゚ 「へぎい!!」

45.
(´・ω・`)「お前が情報を売った奴は? 言えば街を出るだけで許してやる」

( ^Д^)「……」


言うわけない。

例えショボンの言葉が本当だったとしても、言えば“本当の雇い主”に殺される。

街を出る前に、確実に。


(´・ω・`)「仕方ない。あれ使え、ドイツ製の」

( ゚∋゚)「へーい」

/ ,' 3(ドイツ製……?)

(´・ω・`)「まあ見てろ。これで絶対に吐く」


拷問役はプラスチックのケースを開き、中から電動ドリルを取り出した。

先端に螺旋状になったくり抜き用のビットを装着し、トリガーを握り込む。

キュイイイイ、という無慈悲な機械音。

46.
(;^Д^)「ちょっ……ちょっと待っ……!!」

(´・ω・`)「そうだな、じゃあ耳から」

(; ゚Д゚)「止めてくれええ!! 言う言う、言うよ!」


ショボンが手を上げて拷問役を制す。


(´・ω・`)「誰かな?」

( ^Д^)「流石兄弟だ……」

(・ω・`;)「くそ、よりによって連中か!」

/ ,' 3「流石兄弟……あの流石兄弟か?」

(・ω・`;)「そうだ。今流石ファミリーつったらここらで一番でかい組織だぞ」


ショボンと荒巻は地下室の出口へ向かった。


(´・ω・`)「後は好きにしろ」

( ゚Д゚)「え……?」
47.
( ゚∋゚)「へい。どこまで好きにしていいんで?」

(´・ω・`)「どこまでもさ」

( ゚∋゚)「やったね! それじゃあ早速、やりかけの耳から」

( ゚Д゚)


体中から絞り出される裏切り者の断末魔を、地下室と地上とを区切る鉄のドアが

真っ二つに遮断した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


数日後、警察から連絡があった。

ワゴン車は町はずれで見つかったが、放火されていたという。


/ ,' 3(くそ。証拠を消すためか、念入りじゃないか)


ショボンと一緒に車に乗り、流石兄弟の屋敷を下見に行く。

48.
どでかく堅牢な建物で、いかにもな黒服たちが周囲を警戒している。


(´・ω・`)「来たぞ。あれだ」

/ ,' 3「む」


護衛つきで黒塗りの高級車に乗った男が屋敷を出てきた。

双眼鏡でウィンドウ越しに姿を確認する。


(´・ω・`)「組織の切り盛りは商才のある弟がしてる。

     兄は元は旧ソのKGBで、崩壊後に弟を頼ってこの国に来た」

/ ,' 3「元KGBか……」

(´・ω・`)「粛清を趣味にしてたようなヤツだ。

    崩壊後に山ほど責任を問われて逃げ出したみたいだな。

    ナイフの達人で近接格闘では右に出る者がいないそうだ。

    ブツは屋敷のどこかにあるんだろうが……算段は?」

49.
/ ,' 3「ないでもない。装備を調達してくれ」

(´・ω・`)「わかった」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


自宅のアパートでショボンが持ってきた装備を一つ一つ確認する。

闇に紛れる黒の軍服、サイレンサー付き拳銃、弾丸、手榴弾、スタンガン、無線。

リモート爆弾とその起爆に使う遠隔操作スイッチ。

最後に荒巻は床板の一部を引っ剥がして小さな木箱を取り出した。

中から一振りのナイフを取り出し、鞘から抜く。

すさまじく研ぎ澄まされた鋭利な刃に自分の顔が映っている。


/ ,' 3(許せ、クーよ。誓いを破ることになるとは)


棚の上に置いた写真の女に目をやる。


50.
/ ,' 3(一度憎悪の連鎖に取り込まれたら逃げ出せんのかも知れん。

   だがわたしは内藤のカタキを取らんわけにはいかんのだ)


ナイフを他の装備と一緒にボストンバッグに詰め、灯りの落ちた職場に向かう。

事務所に入り、机に持ってきた封筒を置いた。

ツンに当てた遺書だ。

もし自分が死んだ場合はこの土地の資産はすべて彼女のものになる。

椅子に座って待っていると、ショボンが送った迎えが来た。


(,,゚Д゚)「準備はいいか?」

/ ,' 3「ああ。そっちこそわたしの言った通りに出来るか?」

(,,゚Д゚)「訳ねえよ」

/ ,' 3「よし。それじゃあ行こうか」


車が夜の闇に塗り潰された町に滑り出す。

51.
やがて目的の地、流石兄弟の屋敷。

装備を身に付けた荒巻は物陰から様子を伺った。


/ ,' 3(そろそろだ)


腕時計をちらりと見て時間を確認すると、突然屋敷の明かりが落ちた。

ショボンの部下が電線をぶち切ったのだ。


/ ,' 3(よし)


屋敷をぐるりと囲む壁の一部に取り付き、フック付きのロープを投げる。

それを使って壁を乗り越え、庭に降りる。


<ヽ`∀´>「ああくそ、懐中電灯の電池がないニダ」

/ ,' 3(邪魔なところにいるな)


建物に向かう途中の場所に一人、男がいる。
52.
<ヽ`∀´>「ん?」


気配を察してこちらを振り向こうとした瞬間、懐の銃を抜こうとした相手の腕を

片手で押さえつつナイフで喉をえぐる。


<ヽ゚A゚>「ぐふ……」


血を噴く男を花壇の影に引きずり込んでおき、建物の勝手口に向かった。

ピッキングで開いて中に入る。

談話室のようだ。


/ ,' 3(む……)


真っ暗だが何か様子がおかしい。

異変を察して消音機付きの銃を抜いた瞬間、天井の電灯がついた。

眩しさに一瞬目がかすむ。

53.
/ ,' 3「……」


黒服たちが数人ずらりと並んでいて、拳銃や軽機関銃をこっちに向けていた。

そのうちの二人が罠にかかった間抜けな獲物を見下すごとく、嘲笑を露わにした。


( <●><●>)「非常電源です。あなたが来るのはとっくにワカッテマス」

( ´ー`)「お前らの動きを掴んでないとでも思ったのか?

     ショボンごとき小物の動きなんざ、流石兄弟はお見通しだよ」

/ ,' 3「そうかい」


荒巻は両手を上げて降参のポーズを取った。


( <●><●>)「銃を捨てて下さい」


荒巻は眼を閉じたまま肩を竦めただけだ。


( ´ー`)「捨てろ! 蜂の巣になりてえのか」
54.
荒巻は銃口を真上に向けたまま引き金を引いた。

頭上の電灯が弾け、一瞬スパークして再び暗闇があたりに圧し掛かる。

すぐさま銃弾が乱れ飛んだ。


(;<●><●>)「バカ、同士討ちになる、撃つんじゃないんです!!」


暗闇の中を何かが滑るように動いている。

恐ろしく静かで滑らかな、舞うような動き。

混乱の最中に時折銃声が咲き、その都度短く断末魔を上げて倒れてゆく男たちの姿が

一瞬だけ見えた。


(;´ー`)「何だ、何が起きてる!? 誰か明かりを……うっ」


誰かに後ろから抱き付かれ、喉に硬いものが触れた。

数度ホイールが弾かれる音がして明かりが灯った。

荒巻がシラネーヨに背後から抱き付き、首に腕を回して喉にナイフを突き付けている。
55.
(;´ー`)「……!!」


足元には死屍累々と男たちが転がっている。

いずれも動脈から命の根源たる紅の液体をどくどくと垂れ流しながら。


(;´ー`)(全員急所をやられてる……バカな、あの暗闇の中をあんな一瞬で……!?)

/ ,' 3「灯りは点けない方が良かったかね?」

(;´ー`)「お前、何者だ」

/ ,' 3「質問はこっちがする。お前らが盗んだ20キロのヘロインはどこだ?」

( ´ー`)「……」

/ ,' 3「別の奴に聞いてもいいんだが」

(;´ー`)「やめろ! 弟者の執務室の金庫だよ」

/ ,' 3「執務室? どこだ?」

( ´ー`)「エントランスの階段を上がって向って右の突き当たりだ!」

/ ,' 3「ありがとう」
56.
荒巻は一瞬も躊躇せずに腕を引いた。

血まみれのナイフがもう閃き、シラネーヨの喉を切り開く。


( ´ー`)「がふっ……」


死体をまたいで廊下の様子を窺うと、運悪く黒服の一人と眼が合った。

  _
( ゚∀゚)「いたぞ、こっちだ!」

/ ,' 3「くそ」


再び銃火が花開き、荒巻は慌てて首を引っ込めた。

銃弾が壁をえぐって破片が飛び散る。

拳銃で牽制しつつ、集まってくる黒服たちの位置を確認する。

エントランスへ続く長い廊下で、曲がり角と柱時計の影に数人、待ち構えている。


/ ,' 3(今更退くわけにはいかん。やるしかない)

57.
ここに居座っていても拉致が明かない。

荒巻は床に落ちていた軽機関銃を拾い上げると、銃弾をばらまきながら廊下の奥へ突進した。

  _
(;゚∀゚)「うおっと!」


そうやって連中の頭を引っ込めさせておいて一番近い曲がり角へ飛び込む。

壁に背をつけて機会を窺うと、いきなり隣のドアが開いた。


(=゚ω゚)「死ね!」

/ ,' 3「!」


飛び出してきた黒服が拳銃をこちらに向ける。

だが彼が引き金を絞るよりも早く荒巻は間合いを詰め、相手の腕を抱き込んだ。

相手の背後に回り込む形で逆関節に捕らえて肘関節を砕く。

グギン!


58.
(=゚ω゚)「あっ!?」


ほぼ同時にナイフを逆手に抜いて男の首筋に突き立てる。


(=゚ω゚)「げほっ!!」


そのまま荒巻が彼の体を押すと、男はよたよたと抵抗なく歩いた。

男の体の背に隠れて盾にし、銃弾の飛び交う廊下に出て前進する。

荒巻は拳銃で正確に他の黒服を撃ち抜いて行った。

  _
(;゚∀゚)「ぐあっ!?」


廊下の十字路に差しかかる。


(’e’) 「死ね、くそ!」

( ∵)


59.
両側に待ち構えた男たちが挟み込む形で撃ってくる。


/ ,' 3(こんな老いぼれ一人に大歓迎だな)


盾にした男と一緒にその場でくるくる回転して銃弾を防ぎつつ、両側に弾丸をバラまく。

死体をパートナーにした殺戮の舞踏だ。


(’e’)「ぐあああ!!」

( ∵)「……!!」


二人を片付けた後、盾に使っていた男からナイフを引き抜く。

遠心力の余韻で男はバレリーナのように回転しながら床へ崩れ落ちて行った。


(= ω )


荒巻は灯りのついていない、真っ暗なエントランスに入った。

戦闘の興奮で全身にアドレナリンが駆け巡り、あらゆる感覚器官が限界を超えて稼働している。
60.
だからすぐにわかった。

そこにいる男が、かつてない使い手であることが。


/ ,' 3「……」


エントランスは正面に両側に広がった形の階段を備えた立派なものだ。

床が大理石のタイル張りになっていて、足音がカツンカツンと良く響く。

何も見えない。

だが、いる。

エントランスの中央に立った荒巻は銃を捨て、ナイフを抜いた。


(   )「荒巻スカルチノフ。元ヴィップ秘密警察の暗殺者」


どこからか声がする。


(   )「ナイフ格闘の達人で現役時代に粛清した人間は百を下らんそうだな」

61.
(   )「コードネームの“赤い梟”は暗闇の中でも相手の気配を頼りに殺せたからだとか」

/ ,' 3「貴様が兄者か……」

( ´_ゝ`)「KGB時代にちょいとお前のことを知る機会があってな。

      共産主義の崩壊を待たずに引退、経歴は抹消され以後姿を消す。

      他の国の特殊部隊から引く手数多だったって聞いてたが」

/ ,' 3「……」


声は荒巻の周囲を回るように聞こえてくる。

距離を取って歩き回っているのだろうが、何故足音がまったくしない?

例え裸足でもここまで無音にすることはできない筈だ。


( ´_ゝ`)「お笑いだよ。それが今や中古車屋のオヤジとはね」

/ ,' 3「後悔ってヤツはな、いつだって遅れてやって来るんだよ」

( ´_ゝ`)「あんたの妻のことかい? 報復で殺されたそうだな」

/ ,' 3「悔やんでも過去は変えられん」
62.
/ ,' 3「だがクーはわたしに過ちを認める勇気をくれた。

   わたしのやったことは間違っていたさ。

   だがわたし一人ではそれに正面から向き合えなかった……」

( ´_ゝ`)「ふん。それがまた何で強盗の真似事を?」

/ ,' 3「強盗じゃないさ。ただ貸したもんを返してもらいにな」

/ ,' 3(来る!!)


荒巻は反射的に身をよじった。

冷たい刃が闇を裂き、閃光となってかすめて行く。


/ ,' 3「ぐっ」


頬をかすったか。

親指で血を拭う。

すかさず再びもう一閃。

63.
喉に伸びてきた一撃をギリギリのところでかわす。

荒巻は必死で相手の位置を掴もうとしたが、幽霊のように存在感が希薄だ。


/ ,' 3(駄目だ、わたしの老いぼれたセンサーでは奴を捕らえられん。

   くそ、どうする……!?)

( ´_ゝ`)「どうした? まだまだこれからだぞ」


苦し紛れにナイフを振るう。

しかし呆気なくかわされ、胴体に相手の拳がめり込んだ。


/ 。゚ 3「げふっ」


間髪入れず蹴りが放たれる。

荒巻はたまらず床に倒れた。


/ ,' 3「ぐふっ。ぜえ、ぜえ……」

64.
( ´_ゝ`)「あんたのやろうとしてることは無駄なあがきだ」

/ ,' 3「くっ」


何とか立ち上がり、ナイフを構え直す。


( ´_ゝ`)「俺たちはどうせマトモな人間じゃねえ。

      まるで悪いジョークみたいな人間なんだよ」


荒巻はじわじわと後退し、階段の手すりを背にした。

大きな花瓶が支柱の上に乗っている。


( ´_ゝ`)「考えるのを止めればいいのさ。

      俺たちみたいなのにとっての救済はな、“放棄”。これだけだ。

      お前も俺と同じさ。粛清マニアなんだよ」

/ ,' 3「一緒にするな、チンピラめが!」


65.
怒声と共に花瓶を投げつける。

陶器の瓶は床に当たって砕け散り、中の水と花が散乱した。

嘲笑が漏れる。


( ´_ゝ`)「どこ狙ってんだ」

/ ,' 3「……」

( ´_ゝ`)「まあいい、老いたとは言え伝説の男、赤い梟。殺っておいて損はない」

/ ,' 3(一点にのみ集中しろ……すべてを捨てて一点にだけ……)


先ほどまでは動的に鋭敏だった感覚を、静的なものへと変えて行く。

ぶつかり合う雄牛の闘争心から、獲物の背後に飛びかかる寸前の蛇へ。

自らの呼吸音に意識を合わせる。

鼓動。

荒巻は静寂の中にほんの一瞬、蚊の羽ばたきほど僅かな音を捕らえた。

ぱしゃっ、という床の水滴を踏む音だ。
66.
/ ,' 3

( ´_ゝ`)


荒巻と兄者は正面切って向かい合っていた。

鼻と鼻がくっつくくらい、近くで。

兄者のナイフは荒巻の喉を狙っていたが、彼の掌に阻まれ、それを貫いていた。

荒巻のナイフの刀身は兄者の首の横、虚空にある。


( ゚_ゝ゚)「畜、生ォ……」


兄者の喉に赤い線が走って、ぱっくりと割れた。

罵倒と共に口と喉の傷から血が溢れ出す。


/ ,' 3「許せ。貴様に恨みはないが」


床へと崩れ落ち、自らの作った血の海へと沈んでゆく。

67.
掌から兄者のナイフを引き抜くと、荒巻は兄者の靴を調べた。

靴底に薄いゼリーみたいなものが張り付いている。


/ ,' 3(消音シューズとはな。わたしの現役時代ではまだ実験段階だったが……)


階段を上がって執務室に向かう。

聞き出した通り向って右の突き当たりの部屋へ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(´<_`;)「ええいくそ、まさか兄者まで殺られるとは」


壁際に並んだ監視カメラで成り行きを見ていた弟者は、本棚の後ろの隠し金庫を開いた。

バッグに中身を大急ぎで移し替えていると、ドアが蹴破られた。

バン!


(´<_` )「!?」
68.
/ ,' 3「おっと、動くな。銃を捨ててもらおうか」

(´<_`;)「わかったわかった。撃つなよ、人でなし」

/ ,' 3「お前にだけは言われたくない。バッグにヘロインを詰めろ」

弟者が言われた通りにしていると、荒巻の無線がバイブレーションした。

銃を構えたまま傷が痛むのを堪えて左手で受信ボタンを押す。


(´・ω・`)「俺だ。どうだい、状況は」

/ ,' 3「兄は殺した。今弟に例の物を運ばせるところだ」

(´・ω・`)「うーん……その弟なんだけど、殺さないでくれ」

/ ,' 3「何だと?」

(´・ω・`)「考えたんだが、そいつは兄と違って小心者だ。

     共同経営者にするのがいいと思うんだよ」

/ ,' 3「共同? つまり流石ファミリーをそっくり貰っちまおうってのか?」

(´・ω・`)「まあそういうこと。それにはそいつが死んだら困るんだよ」

69.
/ ,' 3「嫌だと言ったら?」

(´・ω・`)「んーと、殺されたお前さんのバイトに姉がいるだろ。

     実は俺の部下が“お見舞い”に行ってるんだよ」

/ ,' 3「貴様……!!」

(´・ω・`)「ホントにただの見舞いさ。だがお前の態度によっちゃ目的が変わるぜ」

/ ,' 3「最初からそういうつもりだったな?」

(´・ω・`)「さあて、何の事やら。じゃ、頼むぜ。屋敷の前で待ってるから」


無線はそこで切られた。


(´<_` )「詰め終わったぜ」

/ ,' 3「……」

(´<_` )「おい、ボケたか?」

/ ,' 3「よし、それを運べ」

(´<_`;)「何でもするよ、だから撃つなよ」
70.
屋敷から荒巻が出てくるのを見、ショボンは車をやった。

兄者の方は荒巻に抱えられるようにして立っている。


(´・ω・`)「おい、殺したのか!?」

/ ,' 3「逃げようとしたんで気絶させただけだ。コレだよ」


スタンガンを見せる。

ショボンの部下が兄者の脈を調べ、頷いた。


( ゚∋゚)「生きてます」

(´・ω・`)「よーし。ブツは?」

/ ,' 3「あそこだ。手を怪我してな、わたし一人では運べん」


部下たちが屋敷に入り、玄関前に置いてあるバッグを担いで来る。

ショボンはにこやかに笑って荒巻と握手しようとしたが、彼は憮然とした顔で拒否した。

荒巻のそんな態度に彼は肩を竦めて手を引っ込める。
71.
(´・ω・`)「いやあ、とにもかくにもよくやってくれたよ、お前は!

     おかげで今日から俺がこの街の支配者だぜ、ヒャッホー」

/ ,' 3「……」


部下がバッグを開け、確かに20キロのヘロインが入っていることを確かめると、

車のトランクに積み込んだ。

一緒に兄者も車に放り込む。


(´・ω・`)「乗りな。送るよ」

/ ,' 3「ツンを解放してもらおうか」

(´・ω・`)「せっかちだな」

/ ,' 3「今すぐやれ!」


ショボンはケータイを取り出し、部下に戻るよう伝えた。


(´・ω・`)「さあ、難しい話は終わりにして一杯やろうぜ。乗れって」
72.
/ ,' 3「……」

(´・ω・`)「チッ、気難しい野郎だぜ」


荒巻を置いてショボンたちは車に乗り込み、その場を去った。


(´・ω・`)「いやあいい日だ、まさに今夜は革命の夜だよ。

     お前らにも臨時ボーナスを出してやろう!」

( ゚∋゚)「おお、太っ腹ですな」

(´・ω・`)「それも当然……ん、何だ?」


どこかでピーピーという音がする。

部下とショボンはそれぞれケータイを調べたが、着信音ではないようだ。

それはどうやら兄者の方からするらしかった。

ショボンが後部座席の隣に座っている兄者の服をまくり、音の源を調べる。

兄者の腹にはビニールテープで爆弾がくくりつけられていた。

73.
(´゚ω゚`)「荒巻の野郎ォォ――――!!」


夜の街に爆炎が咲く。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


リモート爆弾のリモコンを握ったまま、荒巻は背で爆音を聞いた。

何が起こったか知るのに振り返るまでもない。


/ ,' 3(内藤……お前はわたしの復讐のやり方を責めるか?

   だが他に何の方法も思いつかなかった……

   やはりわたしはあいつと……兄者と同じ、粛清マニアなのかも知れん)


とぼとぼ歩いて家へと戻る。

途中何度かパトカーや消防車とすれ違ったが、誰も荒巻には見向きもしなかった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――
74.
数日後、荒巻は職場へ向かっていた。

途中売店でコーヒーを買う。


( ´∀`)「毎度モナ。いつもので?」

/ ,' 3「ああ。ブラックで」


売店の奥に置かれたテレビでは新鋭の政治家が選挙で買った事を報じている。


( ´∀`)「この人ならきっと世の中を変えてくれるモナ。期待モナ」

/ ,' 3「だといいんだがね」

( ´∀`)「ん。手をどうしたんで?」

/ ,' 3「これか?」


包帯を巻いた左手を見せる。


/ ,' 3「猫に引っかかれてな。まったく最近は野良猫までタチが悪い」

75.
( ´∀`)「良くなりますモナ。そのうち、きっと」


金と引き換えにコーヒーを受け取り、荒巻はまた歩き始めた。

自分の店の前で自分と同じく腕に包帯を巻いたツンが待っていた。


ξ ゚⊿゚)ξ「荒巻さん」

/ ,' 3「ツンか……もういいのか」

ξ ゚⊿゚)ξ「ええ、何とか。手をどうしたの?」

/ ,' 3「まあちょっとな。猫に引っ掻かれて」


ツンはもう一つ納得いかない顔をしたが、荒巻はそれ以上何も説明しなかった。

逆に聞き返す。


/ ,' 3「生きて行けるか?」

ξ ゚⊿゚)ξ「えっ? ええ、うん……」


76.
ツンは頷いた。涙を見せながら、それでも力強く。


ξ ;⊿;)ξ「そうでなきゃ、何であの子は……何の為に……」

/ ,' 3「わたしには昔、妻がいた。わたしバカだったせいで永遠に失ったが……」

ξ ゚⊿゚)ξ「!」

/ ,' 3「彼女に会えて、ようやくわたしは自分自身に価値があると思えるようになった。

   それまでゴミクズとしか思えなかった自分でも、何かが出来るんじゃないかとな」


荒巻は笑った。

内藤に見せたように優しさを込めて。


/ ,' 3「プライドを持て。それが誰かに踏みにじられることがあってもいい。

   だが他人に売り渡すようなことだけはするな」

ξ ゚⊿゚)ξ「え、ええ……うん。わかったわ」


事務所に入りかけて、荒巻はもう一度ツンに向き直った。
77.
/ ,' 3「何しとる?」

ξ ゚⊿゚)ξ「えっ?」

/ ,' 3「内藤から聞いただろうが。まあ、忘れたのならもう一回教えてやる。

    青い缶がワックスで緑の缶が錆取り剤だ。

    ボケッとしとらんで早く動け」

ξ ゚ー゚)ξ「え、ああ、うん!」

/ ,' 3「適当でいいぞ、張り切り過ぎるな。お互い怪我人だからな」


荒巻はガレージに駆け込むツンを改めて笑顔で見送った。

事務所に入ると机に遺書が置きっぱなしになっている。


/ ,' 3(ま、生きて帰って来ちまったからな)


遺書をゴミ箱に捨て、この日一番の客を迎える。


(-_-)「俺、結婚したんだ。子供も入れて三人乗せられるやつ、ないかな」
78.
/ ,' 3「そりゃおめでとう! それならこれがお勧めだな」


荒巻は今なら思える。自分はやはり兄者とは違うと。

奴は何もかも切り捨てなければ正気を維持できなかったのだ。

だがそれはつまり、魂を悪魔にくれてやったのと同じじゃないか。


/ ,' 3(わたしは違う)


最愛の妻と最高の友人を失ったことは決して忘れない。

後悔をすべて引きずって生きて行こう。






今、あらゆる痛みがすべて自分の一部になった気がする。


おしまい
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Author:(゚q 。川カンザイ
完全犯罪(カンザイ)
プラネットライカは隠れた名作

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