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(゚、゚トソンが欠片を拾い集めるようです

ブーン系三国志出展作品。
読者投票で一位を決めるという企画の祭りで、38位に入選。
別に上位じゃないけど最下位でもないという(個人戦参加は全74作品だから本当にちょうど真ん中へん)、俺のブーン系界での存在感をそのまま表したかのような結果でした。
でも絵二つももらったから出て損はなかったな。

あと誰も気付いてくれなかったけど、『幸福の王子』っていう絵本が元ネタです。

欠片 


1.
 人格をデジタル化し機械体へ換装する技術が確立してすでに300年は経つ。

人類はとうとう永遠のテーマだった“不老不死”を手にしたのだ。

 だがそれは同時に大きな問題を生み出した。

機人化手術を受けることの出来る富裕層とそうでない貧困層の間に生まれたとてつもない亀裂。

生身の人間たちは機人に反旗を翻し、宇宙の各地で火の手が上がる。

 開戦当初こそ機人が圧倒的優勢に立っていたものの、人間の反撃は止むことはなく―――

そして―――










トソンが欠片を拾い集めるようです



2.
 町は完全にモノクロームと化していた。

コンクリートの灰色が、分厚い雲に閉ざされた空の灰色が、そして絶望が溶けた灰色の空気が

町を覆い尽くしている。

時折見える色と言えば、黒煙を上げて噴き上がる地獄みたいな炎の赤ばかり。

それは町というよりも、廃墟の群れだった。


(゚、゚トソン


 トソンの姿はた灰の中にただ一つ落ちた水滴のように見えた。

かつてメインストリートだった通りに人の気配はなく、空気は無慈悲なほど無機質だ。

まるで水銀の中で呼吸しているように。


(゚、゚トソン(……)


 不意に立ち止まり、顔を上げる。

ここへやってきてから白い粉のようなものがずっと空から舞い落ちてくる。
3.
手の中に落ちても溶けることはなく、たださらさらと崩壊して滑り落ちてゆく。


(゚、゚トソン(灰だわ。灰の雪……)


空を埋め尽くしているのは雲じゃない。

人類の使用した大量破壊兵器で舞い上がった土砂と灰なのだ。

 瓦礫を乗り越え、彼女はただただ海を目指して歩き続けた。


(゚、゚トソン(潮の匂いがする)


 かすかに海の気配がある。

トソンは機械化された体を軋ませて潮風を追った。

長くメンテナンスしていないせいで関節が滑らかに動かない。

体中をギシギシ言わせながら走るうち、彼女は大きな廃墟の前を通りかかった。


(゚、゚トソン(突っ切った方が近道かな)

4.
どうやら戦前は劇場だったようだ。

豪奢な作りだが今は見る影もないロビーを抜け、途方もなく広いメインホールに出る。

天井はすでに半分崩れ、空が覗いていた。


/ ,' 3

(゚、゚トソン


 客席の前の方で、誰かが背中を丸めて座っている。
 シシャ
“止者”かと思ったが、何か呟いている。


/ ,' 3「ブツブツ……この位置で、メインの歌姫をここに……ブツブツ……

    イルミネーションの……照明の位置が……」


こちらに気付いた様子はないし、関わる気もない。

トソンは横を素通りした。


5.
/ ,' 3「ブツブツ……最高の舞台になる……ブツブツ……」


 劇場を抜けるとサブストリートに出た。

入り組んだ住宅街を小走りに抜ける。

潮の匂いはどんどん濃くなる。


(゚、゚トソン(そろそろ海に出るはずだけど)

???「ああ……あ゛あ゛あ゛……」

(゚、゚トソン「?」


うめき声と一緒にずるり、ずるりと何かを引きずる音がする。

トソンは足を止め、路地裏を覗き込んだ。


(~A~)「あうー、ああ……」


 機人の敗残兵がいた。

6.
礼装的な軍服からして首都防衛を任されたエリート兵に違いない。

下半身は破壊されてなくなっており、上半身だけで地面を這いずっている。

眼球も両方とも潰されていた。


(~A~)「うう、ああ……」

(゚、゚トソン


 トソンはぎょっとして足元を見た。

このあたりの地面にはそこらじゅうに彼が体を引きずった轍のような跡がある。


(゚、゚トソン(この人の足跡……っていうか、這った跡?)

(~A~)


どの道、自分には何も出来ない。

トソンは路地を抜けた。

 それから少し歩くと、すぐに臨海地区が見えてきた。
7.
目の前がぱっと開けて水平線が広がる。

トソンは思わず駆け出し、見晴らしのいい広大な公園の中に入って行った。

降り積もった灰の雪原に足がくるぶしまで沈み込む。


(゚、゚トソン(海だ……)


陸から沖合へ向けて海上に伸びている、高架に支えられた高速道路が見える。

目指すのはあれだ。

 公園を横切って海沿いに高速道路を目指そうとした時、人影に気付いた。


ξ ゚⊿゚)ξ


降り続ける灰を被り、その中に半ば没した少女がいた。

膝を抱いて公園の真ん中、広く平坦な場所で地面の一点を見ている。




8.
ξ ゚⊿゚)ξ

(゚、゚トソン


本当に何かを見ているのだろうか?

トソンにはその瞳に意思らしきものは感じられなかった。

虚空のような眼にはただただ、絶望が溶けている。

この世界に満ちているのと同じ灰色の絶望。


(゚、゚トソン(行かなきゃ)


 少女のそばを通り抜け、トソンは高速道路の入り口を目指した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 道路の入り口には急ごしらえの砦のようなものが築かれていた。

首都防衛戦の際に作られたものだろう。

9.
激しい戦火に晒されてもはやあばら屋のようになってしまっている。

トソンはそっとそこに踏み込んだ。


(゚、゚トソン


 巨大な人型のものが砦の中に鎮座していた。

崩壊した天井から降り注ぐ灰に半ば埋もれた、人型の機械だ。

守り切れなかった拠点と同じく、この兵器もまた著しく損傷している。


(゚、゚トソン(歩行戦車だ)


 横を通り過ぎようとした時、一瞬激しい立ちくらみに襲われる。


( 、 トソン「うっ……」


頭を抱え、その場に跪く。

視界をまだらにノイズが覆っている。
10.
( 、 トソン(大丈夫……まだ大丈夫……)


深呼吸をして気を落ち着かせると、すぐにノイズは晴れた。

ウイルスに対して抗体プログラムが最後の抵抗を見せているが、長くは持つまい。


(゚、゚トソン(もう時間がない。急がないと)


改めて高架に入ろうとした時、歩行戦車の胸のあたりがぼんやり光った。


(゚、゚トソン「?」


引き剥がされた装甲の下、内部機関に埋もれた鉛色の球体が鈍く発光している。

 覗き込もうとした時、突然背後で声がした。


???「そこの方」

(゚、゚;トソン「うわっ?!」


11.
びっくりして振り返る。


/ ゚、。 /


白いローブのようなものを着た女性が地面に立ち、こちらを見ている。

亡霊のように背後の風景が透けて見え、時々その姿にはノイズが走った。

立体映像だ。


(゚、゚トソン「あなたは?」


女性は戦車を手で差した。


(゚、゚トソン「……歩行戦車のAI?」

/ ゚、。 /「そのようなものです。人工島の宇宙港へ行かれるのですか?」

(゚、゚トソン「うん。三日後に衛星弾頭が落ちるって噂が」


 衛星弾頭。
12.
小惑星にロケットと爆弾をつけただけの、安価だが恐るべき兵器だ。

大気圏突入直前に爆発・四散し、大量の弾頭と化して流星雨のように敵地に降り注ぐ。


/ ゚、。 /「……」


 女性はひどく疲れているように見えた。

長い長い溜息をつき、口を開く。


/ ゚、。 /「そうですか……やはり間違いないようですね」

(゚、゚トソン「知らなかったの? ……って、ネットが落ちてるから当然か。

     もう人間の兵隊はみんな逃げちゃったよ」

/ ゚、。 /「滅亡は不可避なのですね」


女性は眼を閉じると、大きく息を吸い込んだ。

それから深い深い溜息をつく。


13.
/ ゚、。 /「歩いて宇宙港まで行く気なら、それはお勧めできません。

      少なくとも一週間はかかる」

(゚、゚;トソン「えっ……」

/ ゚、。 /「幸い、まだ動く車両があります。それをあなたに譲りましょう」

(゚、゚トソン「本当? ありがとう」

/ ゚、。 /「ええ。その代わり一つだけ協力して頂きたい事が」

(゚、゚トソン「?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ダイオードと名乗るその女性と一緒に、トソンはあの劇場へ取って返していた。

相変わらず客席では老人がブツブツと何事か呟きながら、何かをメモしている。


/ ゚、。 / 「この劇場では毎晩夜を徹して華美な催しが行われていたのですよ。

      我々機人たちの文化の象徴であり、栄光の証でもあった」

14.
過去の栄光を懐かしむ口調。

見た目は三十代といったところだが、妙に老けこんで見える。


(゚、゚トソン「ふーん。それで? わたしは何をすればいいの」

/ ゚、。 / 「彼の手にしているモバイルの情報を手に入れて下さい」


老人は手にしたモバイルを如何にも大事そうに、抱きかかえるようにして持っている。


(゚、゚;トソン「出来るかなあ……取ろうとしたら飛びかかってきそうだよ?」

/ ゚、。 / 「さっき貸した“ハイジャッカー”を使って下さい。

      情報さえ手に入ればいいんです」


トソンはダイオードのいた拠点から持ってきた小型の拳銃を取り出した。

狙いをつけて老人の手にしているクリップボード型のモバイルに撃ち込む。

圧縮空気で発射された弾丸型の発信機がそこにくっついた。


15.
(゚、゚トソン「ん、OK」


銃に付属された液晶モニタに、情報の吸い出しが完了したと表示された。

今度は銃を通信機と繋いでダイオードの本体に送る。


/ ゚、。 / 「御苦労さま」

(゚、゚トソン「で、どうしたいの?」

/ ゚、。 / 「……」


 ダイオードは指を顎に当て、何か考え込む素振りをした。


/ ゚、。 / 「あなた、演劇は得意ですか?」

(゚、゚トソン「え? やったことない。何で?」

/ ゚、。 / 「彼の最期の願いを叶えてあげたい」

(゚、゚;トソン「無理だよ! どうやってわたし一人で演劇をやるの?」

/ ゚、。 / 「わたしもいます」
16.
(゚、゚トソン「それでも二人じゃんか! その劇何人でやるの?」

/ ゚、。 / 「未完なのは一幕だけ。ちょうど二人きりのシーンです」

(゚、゚トソン「……」

/ ゚、。 / 「とにかくまずは舞台を作らないと。

      わたしはデータを解析しているのでよろしくお願いします」

(´、`;トソン「はいはい、何でもしますよ」


 トソンはダイオードに言われるままに町に出た。

高級洋服店の跡地を掘り返して衣装を漁り、着付けを試す。

それをカバンに詰めてダイオードのところまで引っ張ってゆく。


(゚、゚トソン(何やってんだかな、わたしは……)


衣裳のほつれや汚れを修繕すれば大体の準備は整った。

 拠点に戻ると、ダイオードは楽しそうにポンと手を叩いた。

17.
/ ゚、。 /「さあ、始めましょう」

(゚、゚トソン「何を……?」


彼女は笑って衣装を指差した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 翌日の明け方、まだ暗い頃。

劇作家荒巻スカルチノフは、永遠とも言える作業を繰り返していた。


/ ,' 3「滅びを間近に……歌姫は……うう、センスがないな」


降り積もる灰を払おうともせず、体を縮めてひたすらボードにアイデアを書き付ける。

しかしその内容は堂々巡りだった。

 彼はこの時初めて手を休め、絶望に天を仰いだ。

ウイルスの侵食により失いかけている正気を不意に取り戻す。

18.
/ ,' 3(駄目だ……すべては机上の空論ではないか?

    実際に舞台上で通してみねば細部まで眼が届かん)


 その時、ぱっと舞台に照明が落ちた。

久し振りに見える強烈な光に、思わず俯きかけた顔を上げる。


/ ,' 3


カーテンやら何やらでツギハギして作り直した緞帳が持ち上がった。

舞台には城での最後の晩餐のシーンが広がっていた。

と言っても、どこかで拾ってきたテーブルに割れた皿が置いてあるだけだけど。


(゚、゚トソン


トソン、今は滅びつつある王国の姫君は、席を立った。

憂いを帯びて、窓の外を見ながら。

19.
(゚、゚トソン「あれなる光は?」


/ ゚、。 /「敵の軍勢がそこまで迫っております。

      親衛隊が死守しておりますが、ここが落ちるのも時間の問題でしょう」


隣に控えた執事姿のダイオードが答える。


(゚、゚トソン「我々の滅亡は宿命ですか……」


 機人は“滅び”をテーマにした作品を好んだ。

永遠の命を得て以来、なくしてしまったものを求めていたのかも知れない。


(゚、゚;トソン(歌のシーンだ。うう、トチらないで出来るかな)

(゚、゚トソン 灰の都に火が落ちる 日とて闇とてもう遠い

     待ち望んだ滅びは今そこに 望まざれし子 蛭子の果てや

     罪の都に火が落ちる

20.
/ ゚、。 / 空の星とてやがて尽く かつての非望は地に堕ちて

      ……

/ ,' 3


 荒巻は確かに見ていた。

今目の前にあるのはみすぼらしい急ごしらえの舞台などではない。

小道具が念入りに選び抜いた小物、衣裳係の最高傑作と言うべき装い。

そしてここは廃墟などでなく、荒巻は今他の観客たちと時間と感情を共有している。


/ ,' 3(おお、見える……)


周囲の笑顔が、涙が、感動が……

舞台とは完成された一つの宇宙。

今自分自身を抜け出し、周囲の皆と同じことを感じている。


(゚、゚トソン 千年の命も今朽ちん 永久の終わりは散華にも似て
21.
(゚、゚トソン 今失楽に身を委ねましょう


 親衛隊を蹂躙し、敵兵士は姫たちのいる部屋を目指して城に雪崩れ込んでくる。

部屋のドアをぶち破ろうと激しく鎚がぶつけられる音。

執事は姫に銃を差し出す。


/ ゚、。 / 夜の神の口付けを 姫


姫は意を決し、それを手に取る。


(゚、゚トソン 賜りましょう


銃口をこめかみに押し当て、一思いに引き金を引く。

銃声。

花が散るかのようにドレスの裾をなびかせ、彼女は床に倒れる。

執事は彼女の手から銃を拾い上げ、彼もまた運命を共にする。

22.
扉が破られた。


(゚、゚トソン(閉幕だ)


 ダイオードが最初と同じく、遠隔操作で緞帳を動かした。

客席が見えなくなってからトソンは立ち上がり、恐る恐るダイオードに聞いた。


(゚、゚;トソン「ど、どうだった?」

/ ゚、。 /「良かったですよ! とても一夜漬けとは思えない」


トソンは緞帳をめくり上げて客席の様子をうかがった。

老人は相変わらず俯いたままだ。


(゚、゚トソン(不評だったかな……?)


ドレスの裾を引きずって客席に降り、彼の元へ行く。

そっと顔を覗き込むと、彼は目を見開いたままモバイルに突っ伏すような形で倒れていた。
23.
緞帳をすり抜けてきたダイオードが悲しげに首を振る。


/ ゚、。 /「せめて最期に完成を見せてあげたかった」


トソンは彼の手の中からモバイルを引っこ抜いた。

モニタを見てかすかに笑い、それからダイオードにも見せてやった。

最期の部分に走り書きがある。

“完成”と。


/   3

/ ゚、。 /


ダイオードは悲しげに笑い返した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 拠点へ戻ると、ダイオードは建物の奥の方を指差した。
24.
/ ゚、。 /「あの瓦礫の下にホバーバイクがある筈です」

(゚、゚トソン「ん」


 雑多なものをどかして掘り起こしている途中、トソンは強烈な目まいに襲われた。

視界を一瞬、ノイズに覆い尽くされる。


( 、 トソン「う……」

/ ゚、。 /「トソンさん?」


頭を抱えて地面にしゃがみ込む。

ダイオードの声がキンキン響いて、恐ろしく不快だ。


(゚、゚トソン「大丈夫……もう大丈夫」

/ ゚、。 /「あなたもウイルスに?」

(゚、゚トソン「ええ……例外なくね」


25.
 何とか立ち上がり、発掘作業を再開する。

やがて軍用のホバーバイクが出てきた。

キーは刺さったままだが、燃料計の針はゼロを指している。


(゚、゚トソン「タンクが空みたい」

/ ゚、。 /「わたしの燃料で良ければあげましょう」

(゚、゚トソン「本当?」

/ ゚、。 /「ただし」

(゚、゚;トソン(また来たよ)


 トソンが察したのに気付いたのか、彼女は言った。


/ ゚、。 /「そのバイクがあれば宇宙港までは半日もかかりません。

      もう少し時間はあるでしょう?」



26.
(゚、゚トソン「だって向こうで何があるかわからないじゃない。

     それに道路だってきっとボロボロだろうから、もっと時間がかかるかも」

/ ゚、。 /「お願いです、トソンさん!

      わたしはこの町を統括するメインコンピュータの一部だったのです」

(゚、゚トソン「え? だって……」

/ ゚、。 /「ウイルスがバラまかれた時、わたしだけはたまたまこの戦車に転写されていて

      オフラインだったんです。おかげで被害を免れた」

(゚、゚トソン「……」

/ ゚、。 /「わたしにはもう市民を守る力はありません。

      ならばせめて……わたしは……お願いです、これで最後ですから」


トソンは顔をしかめて頭を掻いた。

どの道燃料がなければバイクは動かない。


(゚、゚トソン「いいよ、わかった」
27.
/ ゚、。 /「ありがとう。本当にありがとう」

(゚、゚トソン「今度は何をしろっての?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ダイオードの案内でやって来たのは裏路地にある住宅だった。

行く時に通りかかった場所だ。

小さいが洒落た家で、住み心地は悪くなさそうだった。


(゚、゚トソン(まあ今はただの廃墟なんだけど……)


 ドアのなくなった玄関から中に足を踏み入れる。

首都が陥落した際に略奪に遭ったらしく、無茶苦茶に荒らされている。


(゚、゚トソン「この家がどうしたの?」

/ ゚、。 /「お掃除は得意ですか?」

28.
(゚、゚トソン「えっ?」

/ ゚、。 /「ここを可能な限り元に戻して欲しいんです」

(゚、゚;トソン「冗談でしょ……嵐が過ぎ去った後みたいじゃない」

/ ゚、。 /「わたしは動きそうな掃除用ロボットを探してハッキングしてきます」


トソンがそれ以上何か言う前に、ダイオードはどこかへ行ってしまった。

仕方なく作業を始める。


(´、`;トソン(やれやれ)


 倒れた家具を元通りに起こし、蹴破られた扉を慣れない手つきで修理する。

壊れた窓はそのあたりの廃墟から持ってきたのと丸ごと交換した。


/ ゚、。 /「お待たせしました」

やがてやってきたダイオードと掃除用ロボットが、窓から吹き込んだ灰の掃除に取りかかる。

廃墟と言っても出来立てだから元に戻すのにそう時間はかからないだろう。
29.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 再び闇に閉ざされた夜が来る。

傷ついた兵士ドクオは、虚空の中を彷徨っていた。


(~A~)


自分が今どこに居るのかもわからないまま灰の中を這いずり続ける。

 ふと、ドクオは光と熱を感じた。

放置されたままの火災が放つ虚しい熱ではなく、柔らかく暖かい光源。

ボロボロになった指と腕で灰を掻き、ドクオは誘蛾のようにそちらを目指した。


(~A~)(灯りだ……確かにある。感じるぞ)


 闇の中に一軒だけ窓に明かりが灯っている。

朽ちかけた機体に鞭打つ。

30.
ようやく辿り着いたその家のドアを押し開けると、ドクオは恐る恐る中に入った。

 キッチンの方で誰かがこちらに背を向けている。

コーヒーの香ばしい匂いがした。


川 ゚ -゚)


彼女が振り返った。

こちらにやってくる。

ドクオの目の前にひざまずくと、彼の手に触れた。


川 ゚ -゚)「お帰りなさい」

(;A;)


破壊された眼球から涙が溢れ出す。


(;A;)「ただいま。ただいま、クー……」

31.
川 ゚ -゚)

(;A;)「お、俺、約束守ったよ。

    必ず帰るって……必ずここに戻って来るって……

    や、やっと見つけた。やっと見つかったんだ、俺の家……」


妻の手を握り締めて、ドクオは関を切ったように喋り始めた。


(;A;)「お前がいたから、家を見つけられた……お前がいたから……

    世界の全部が廃墟になっても、お前のいる場所なら、きっと見つけ……られ……」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 床に跪いたまま、トソンは自分の腕の中で静かに朽ちてゆく兵士を見ていた。

モーターの鼓動音は徐々に落ち、やがて消えた。

      シ
(゚、゚トソン(止んだ)

32.
 兵士を床に寝かせ、立ち上がる。

後ろにいたダイオードが眼を閉じて首を振った。


/ ゚、。 /「ありがとう、トソンさん」

(゚、゚トソン「この人、わたしのことをクーって……」

/ ゚、。 /「彼の妻の名です。空襲に巻き込まれて亡くなりましたが」

(゚、゚トソン「そっか……」


 二人は家を出た。

拠点に戻る途中、トソンは視界に走るノイズの濃度が徐々に増していることに気付いた。


(゚、゚;トソン(早く宇宙港に行かないと……

      ここを出てワクチンを手に入れないと、何もかも、間に合わな……)


フラついて、思わず廃墟の壁に寄り掛かる。


33.
/ ゚、。 /「トソンさん?」

( 、 トソン「大……丈夫……」


意識を覆うノイズがどんどん濃くなる。

精神がウイルスに食い荒らされて破壊されるのも時間の問題だ。


(゚、゚トソン「燃料を貰うよ」

/ ゚、。 /「歩行戦車の脇腹の部分にメンテナンスハッチがありますから、そこから」

(゚、゚トソン「ポンプは?」

/ ゚、。 /「動きません。手動で」


 あちこち探すと手回し式のポンプが見つかった。

それを使って戦車の燃料をホバーバイクに移す。

燃料が満タンになったのを確認してからホースを抜き、エンジンをかけてみた。


(゚、゚トソン(ん、ちゃんと動くな)
34.
/ ゚、。 /「……」

(゚、゚トソン「良かったら、あなたも一緒に」


ダイオードは微かに笑った。


/ ゚、。 /「“船乗りは船と運命を共にする”」

(゚、゚トソン「……そっか」


 歩行戦車が最後に残された力で足をどけ、トソンに道を開いた。

先には海上へ伸びる高速道路が地平線まで続いている。 


(゚、゚トソン「……」

/ ゚、。 /「あの、トソンさん」

(゚、゚トソン「何?」


 上目遣いをするダイオードに若干イライラしてトソンは答えた。

35.
またか。


/ ゚、。 /「お願いが……」

(゚、゚トソン「イヤ」

/ ゚、。 /「これで本当に最後ですから」

(゚、゚トソン「前もそう言った」

/ ゚、。 /「ホバーバイクがあればほんの二十分で済む仕事ですから」

(゚、゚#トソン「しつこいよ! お願いならもう一杯叶えてあげたでしょ!」


ダイオードは相手の目の中をまっすぐに覗き込んだまま、言った。


/ ゚、。 /「海に面した公園で、女の子を見かけたでしょう」

(゚、゚トソン「……」

/ ゚、。 /「お願いです、トソンさん。あの子の願いなんです」


ダイオードに頭を下げられ、トソンは怒りに任せて溜め息をついた。
36.
バイクのエンジンを止めてスタンドを立てる。


(゚、゚トソン「何をするの?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ダイオードに言われるままにトソンはバイクを駆り、博物館に向かった。

古代の神殿だか何だかを模した壮麗な作りだが、ここも崩壊を免れなかったらしい。

瓦礫を乗り越えながら奥まったところに行くと、ガラスケースに入れられた花が並んでいた。


(゚、゚トソン(本物の花だ……)


遠い昔、人間だった頃に見て以来だ。もうどのくらい昔になるだろう?

灰色の世界を歩いて来たせいで、その色は鮮やかすぎて眼に痛く感じた。


/ ゚、。 /「どれにしましょうか……これがいいかな」


37.
ダイオードはダリアの花を選んで指差した。


/ ゚、。 /「ケースを割って、花びらを一枚だけ取って下さい」

(゚、゚トソン「え? 何で?」

/ ゚、。 /「言う通りに」


おかしなことを言う。

ともかく花びらを一枚だけ千切ってポケットに入れると、トソンは博物館を出た。

 拠点に戻ったトソンはダイオードの指示で花びらを黒い箱のようなものに入れた。

それを砲弾の弾頭に詰めて歩行戦車の砲塔に装填する。


(゚、゚トソン「あの箱は?」

/ ゚、。 /「元素変換式無限複製炉と言います。

      簡単に言うと中に入れたものを無限に複製する装置ですね。

      人間はこの技術を探していたようだけど、とうとう見つけられなかった」

38.
(゚、゚トソン「で、そんなことをしてどうするの?」

/ ゚、。 /「発射はわたしがやります。あなたはその光景を見ることはないでしょうが……」

(゚、゚トソン「まあ、いいけど。それじゃこれで本当にお別れだね」


 アクセルを踏み込む足がなかなか動かない。

グズグズしているとダイオードが首をかしげた。


/ ゚、。 /「忘れ物でも?」

(゚、゚;トソン「いいえ……えっと、あの……本当は、わたしが……」

/ ゚、。 /「?」

(゚、゚トソン「ううん、やっぱり何でもない……。またね」

/ ゚、。 /「ありがとうございます、トソンさん。

      あなたにはお礼を言い尽くせない」

(゚、゚トソン「いいの」


39.
 トソンを乗せたバイクは、拠点を飛び出した。

途中振り向くと、ダイオードがいつまでも見送っていた。


(゚、゚トソン(……言えなかった)


もう衛星弾頭が落ちるまで時間がない。

 上空を気にしながらトソンは道中を急いだ。

道路の状況は思ったより良好で、ダイオードの言った通り数時間で洋上の人工島が見えてきた。


(゚、゚トソン(あれは……)


しかし何か様子がおかしい。

思わずバイクを止め、その場に立ち竦む。


(゚、゚トソン


バイクを降りたトソンはしばらく小走りに進み、そして恒常アスファルトに膝をついた。
40.
島が燃えている。

ロケット燃料に引火しているらしく、頻繁に爆発が起きていた。

まるで花火を詰め込んだ袋に火がついたみたいに。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ダイオードはただ一人、拠点の奥で滅びの時を待っていた。


/ ゚、。 /「!」


 歩行戦車の死にかけのセンサーがその動きを感じ取った。

彼女のホログラフは一瞬で消え、それから本体のある拠点へ戻る。

ちょうどバイクを引いてトソンが戻って来たところだった。


/ ゚、。 /「何故……」

(゚、゚トソン「燃えてた。みんな燃えてた」

41.
 バイクを置き、トソンは笑った。

泣いているような笑い方だった。


(゚、゚トソン「そうだよね。宇宙港だけ無事なわけないじゃんか……

     わたしだって本当はそれに気付いてたけど……気付きたくなくて……」

/ ゚、。 /「トソンさん?」

( 、 トソン「わた……わたし、は……」


 これまでにない濃度のノイズが、圧し掛かるようにして襲ってきた。

頭の中がぐるぐる回り、自分が今倒れているのか立っているのかもわからない。

遂にノイズが視界を覆い尽くし、トソンは意識がシャットダウンされるのを感じた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 機人はデフラグ中に夢を見ることがある。

修復中の破損ファイルの中身が垣間見えるのだ。
42.
( 、 トソン(あれ……わたし、今、町を歩いてる)


シャットダウンした筈なのに、廃墟の町をふらふらと歩いている自分がいる。

まるで他人の体の中にいるように現実感がない。


(゚、゚トソン


 トソンは惑星ニチャンネルの首都、ヴィップシティにいた。

今は廃墟となっているあの町だ。

すべてが同じ規格の大理石のような白亜のビルで、定規で測ったように整然と並んでいる。


( 、 トソン(ううん……だから……今はまだ廃墟になっていないから……

     これは、昔の記憶がオーバーラップしてるんだ)


地方でネットワークシステムの端末を管理する技師だったトソンは、仕事の用事でここへ

来ていた。

43.
(゚、゚トソン(そうだ……わたしは以前、この町に来たことがあるんだ)


顔を上げると、ビルの壁に設置された巨大3Dモニタに戦況が映し出されている。


('、`*川「VIP-442アステロイド・ベルトにおける政府発表をお伝えします。

     我が軍の誇る宇宙軍第11師団の攻撃は目覚ましく、人類軍の掃討に成功。

     これにより人類軍は撤退、我が軍は同区域を完全に制圧したとのことです」


画面がコロシアムの様子に切り替わる。

戦闘服を着せられた人間たちが、居心地悪そうにカメラに睨まれている。


('、`*川「捕虜はすべてデス・ゲームに回されるようです。

     現チャンプ・ジョルジュは30連勝を達成できるでしょうか?

     その模様は今夜九時から二時間の特別枠で生放送します。お見逃しなく!」


人間の捕虜同士が古代ローマの剣闘士さながらの死闘を繰り広げる映像が少しだけ流れた。

44.
彼らは勝ち続ける限り永久に銃殺刑を延期するという契約で戦っているのだ。

もっとも、負ければ大抵は死刑執行前に相手に殺されるのだが。


('、`*川「では次のニュースです。

     中央管理コンピュータ、ダイオードの一部をニューソク級歩行戦車に

     転写し、戦勝祈願パレードに使用する試みが……」


 別の街頭モニタに目をやれば、そこではデス・ゲームの傑作選の映像が流れている。

トソンは血に餓えた観客の熱狂的な歓声に心を奪われた。


(,,゚Д゚)「そこの姉ちゃん、いっちょ運試ししてみないか?

     今夜はどの戦士が生き残るか、見事当てれば大儲けだ」


 ノミ屋の声で我に返った。

手を振って断り、休めていた歩みを再開する。


45.
 途中、劇場の前を通りかかった。

演劇はデス・ゲームと並んで人気の娯楽だ。


/ ,' 3「新作の評判は?」

( ´∀`)「おかげ様で上々ですモナ、先生」


高級車から降りてきた正装の老人が劇場関係者と何か話していた。 

その横を通り過ぎる。

 路地の入口のところでは、若い夫婦が抱き合い、出征の別れを惜しんでいる。


('A`)「必ず戻ってくる。約束するよ」

川 ゚ -゚)「うん……約束」


 美しくも醜悪な町だった。

コンピュータによって完全に管理された、恐ろしく端正だが無菌室のように無機質な町。

出歩く機人たちはみな無気力で、終わりのない人生に倦怠し切っている。
46.
(゚、゚トソン(灰色だ)


 この時もやはりそう感じた。

この時代の空気に溶けていたのは、堕落と退廃の灰色。

 ネットワークシステムの中央管制塔で仕事を済ませ、夕暮れ時に家路についた。

高速機動車両で地方に戻る途中、海辺にある公園に差し掛かった。


( ・∀・)「やあ」


恋人がそこで待っていた。


(゚、゚トソン「来てたの」

( ・∀・)「まあね。迎えに」

(゚、゚トソン「ありがとう」

( ・∀・)「仕事は終わった?」

(゚、゚トソン「ええ。完璧にね」
47.
かすかに笑って見せ、それから二人で公園に入った。

海に面した草原は花で一杯だが、あれは人工的に作られた決して枯れない花だ。

電圧によって花びらの色が変わり、季節によって違った色合いを見せる。


(゚、゚トソン「わたしたちと同じだと思わない? あの花」

( ・∀・)「?」

(゚、゚トソン「美しいけど歪で、生きながらに死んでいる花。わたしたち機人と同じように」


モララーは肩を竦めた。

トソンは「わたしたち」と言ったが、モララーはそれに当てはまらない。

 一面の花畑の真ん中に一人、女の子がしゃがみ込んでいた。


ξ ゚⊿゚)ξ


墓標のようなものを前にしている。


48.
( ・∀・)「あの子は?」

(゚、゚トソン「あそこに彼女の死んだ母親が眠っているんですって。

     だから……止者になって」


 機人の定義に“死”はない。

だからごくまれに何らかの原因で活動を停止した機人は、死者ではなく“止者”と呼ばれる。

時計と同じだ。

ただ、止まっただけ。


( ・∀・)


 彼の手が伸びてきて、トソンの手に触れた。

指先は絡み合って、やがて一つに繋がれた。


(゚、゚トソン「わたしたち、本当に一緒になれる?」

( ・∀・)「なれるさ。これからはきっと、色んな事が良くなる」
49.
(゚、゚トソン「そうかな……」

( ・∀・)「そうだよ」


 風が吹き、花を揺らしてゆく。

それと同時に突然、彼の姿と風景の解像度が下がり、砂嵐が吹いたようになった。

再びノイズが激しくなり、景色は現在の廃墟へと変わってゆく。

デフラグによって一時的に小康状態を取り戻したのだ。


 ( 、 トソン「……」


 トソンは灰の中にひざまずき、両手で顔を覆っている自分に気付いた。

あの造花の花畑だ。


ξ ゚⊿゚)ξ


向こうで少女が膝を抱いて座っている。

50.
(;、;トソン


 震える両手で地面の灰を掻く。

下から現れたのは電力供給を断たれて色を失い、やはり灰色になった造花だった。

この花たちも止んでいるのだ。

 悲しい。

今はただ、悲しい。


/ ゚、。 /「わたしはこの状態で他のコンピュータにアクセス出来るんです。

      少しですがデフラグのお手伝いをさせてもらいました」


背後でダイオードの声がした。


(;、;トソン「……」

/ ゚、。 /「断りなく頭の中を覗いたことは謝ります。

      でもトソンさん、あなたがスパイの“協力者”だったんですね?」
51.
 灰の中に落ちた涙が染みを作るのを見ながら、トソンは背後のダイオードに無言で頷いた。


/ ゚、。 /「何故……」


 圧倒的技術力と物力を誇る機人たちだったが、結局はこの戦争に敗北した。

中央官制ネットワークシステムにコンピュータウイルスを流され、一時すべてのシステム並び

機人たちの精神を侵食された為だ。

人類側はこれを機に大攻勢に打って出た。

一部感染を逃れたシステムもあったが、人間の死に物狂いの反撃に戦況は一遍する。


(;、;トソン「あの人を信じてたの」


 ウイルス攻撃は機人と同じ体に人体改造を施されたスパイの手によるものだった。

しかしこの作戦は内通者、つまりネットワーク技師の協力なくしてはありえない。


(;、;トソン「あの人が本当に好きで……でもあの人は人間で……わ、わたしは……」

52.
/ ゚、。 /


発覚後、機人政府はスパイを見つけ出したが、とうとう内通者はわからずじまいだった。
                          メモリー
スパイが自殺、それも大口径の銃で自らの頭脳を吹っ飛ばすという方法で、永久に自分の口を

封じた為だ。

 機人たちはウイルスに対抗する手段を講じたが間に合わず、皆精神を破壊されて朽ちていった。


(゚、゚トソン「彼が言ったの、自分はこの戦争が終わったら保存してある生身に戻るんだって。

     戦争が終われば人類と機人は和解して、ワクチンが配布されるって……

     そ、それで、僕たちは一緒になれるって……

     その時はわたしもどうにかして生身に戻るつもりで……」


 手の中の灰をぎゅ、と握る。


(;、;トソン「あ、あの人が死んでも、わたしは希望を失わなかった。

      きっと二人が望んだ世界が来るから、何とか生きて行けるから……」
53.
/ ゚、。 /

(;、;トソン「でもそんなふうにはいかなかったの!

      き、きっと二つの種族の垣根は取れるって思ってたのに、人間は機人を

      同じ“人類”とはみなさなかった。

      また同じことが起こるのを恐れて衛星弾頭で……完全に絶滅させようと……」


 人類ならびに知的生命体に対する衛星弾頭の使用は条約で禁止されていたが、人間側は

使用に踏み切った。

彼らの基準からすれば機人は人類ではないし、知的“生命体”でもなかったからだ。

 トソンは灰の中にくずおれた。


(;、;トソン「こんな筈じゃなかったの!!

      わたしたちが望んだ世界は、こんなんじゃなかった!!」

/ ゚、。 /「わたしのお願いを聞いてくれたのは、罪滅ぼしのつもりだったのですか?

      それとも後ろめたさを誤魔化す為?」
54.
(;、;トソン「わたし……わたし、は……!」


ダイオードはため息をつき、両手の指を腹部の前で組んで空を仰いだ。

どこか何かを諦めてしまった口調。


/ ゚、。 /「我々は終わりのない停滞に飽き飽きしていた。これは誰も疑いようがない。

      ただひたすらに目の前の快楽だけを追い求める日々……

      いつしか時間は意味をなくし、自他の生命に関心を払わなくなった」

(;、;トソン

/ ゚、。 /「我々は永遠の命を得た時点で、すでに滅んでいたのかも知れませんね」


 拠点の方で砲撃音がし、残っていた天井を突き破って砲弾が発射された。

白い尾を引いてするするとはるか天空に向かって伸びて行く。

 ダイオードは目を細めた。



55.
/ ゚、。 /「あなたは大犯罪人かも知れません。

      ですが少なくともその行動の動機は理解できるし、正しいと信じたこともわかる。

      魂の鼓動も、その彼への愛も。

      そもそも今更あなたを責めて何になりましょう」


 雲の中に吸い込まれた砲弾が炸裂した。

雲がぶわっと周囲に退き、空に巨大な円形の穴が開いた。

淡い陽光が差し込み、光の柱を作る。


(゚、゚トソン「……!」


その中をひらひらと青いかけらが舞っていた。

雪のように。

花びらだ。ダリアの花びら。

それが幾千も幾万も、空から舞い落ちてくる。

56.
(゚、゚トソン(花の雪……)


 灰の雪に覆われた町に、更に青が覆い被さろうとしている。


( 、 トソン「う……」


 再びノイズの濁流。

ウイルスがシステムの最深を侵しつつある。

もはやデフラグではしのぎ切れない。

トソンは何とか立ち上がろうとしたが、無駄だった。


( 、 トソン


 背中側からゆっくりと地面へ崩れ落ちて行く。

灰が彼女の体を受け止めた。

仰向けになったその上に、舞い上がった灰と花が静かに降り注ぐ。

57.
/ ゚、。 /「トソンさん」


 もうほとんどノイズに埋め尽くされてしまった視界の中にダイオードが映った。


( 、 トソン(わたしを許して、ダイオード……望んだ世界は来なかったけど……

     わたしは正しくなかったかも知れないけど……

     それでも、あの時、彼の夢見た世界を信じたのは本当だったの……)


彼女はトソンの前に跪き、額に手を差し伸べた。

微笑みととも囁く。


/ ゚、。 /「あなたの望み通り、あなたを許しましょう」

( 、 トソン

/ ゚、。 /「眠って下さい」


 意識が途絶える瞬間、ノイズの中にモララーの姿が見えた気がした。

58.
彼は笑っているようにも見えた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ダイオードは空の彼方を見据えた。

流れ星のようなものがかすかに見える。

 花の雪が降る。

横たわるトソンを、劇場で朽ちてゆく老人を、家で眠りについた兵士を、そして母の墓の前で

くるくる舞いながらそれを浴びる少女を、青く沈めてゆく。


ξ ゚ー゚)ξ


 それよりもはるか彼方、ダイオードの視線の先には、尾を引いて真っ赤に燃える流星が見えた。

大気圏への突入前に爆発・四散した衛星弾頭は、更に多弾頭となって地上へと向かう。

流星雨のようだ。

だが決して燃え尽きることはない。
59.
 終わりのない静寂に包まれて、ダイオードはそれを見ていた。


/ ゚、。 /


静かだ。

生まれて初めて静けさに包まれたように、静かだ。










あと数分で、世界が終わる。


おしまい


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非公開コメント

No title

テンプレ変えたけど直らないんだよなあ!
今度こそちゃんとログ保存して一度全部消してまたインポートしたりもしてみたがやっぱり直らない。もういんじゃないかこれで。めんどいし


じゃあ俺の初投下作品は「流石兄弟が未解決事件を企むようです」が正しいってか
略してミカケンって呼ばれてたかも知れないのか

No title

コメント受け付けたり受け付けなかったりしてんな
環境設定→ブログの設定→投稿設定→コメント:受け付ける
にはしてあるんだよな?
記事ごとに毎回コメント受け付けるとかにしてみたら
それもしてるんだったらもうわからん
テンプレ変えてみたほうがいいかも

いや『流石兄弟が完全犯罪~』について なんですが
あれは完全犯罪とは言わず単なる未解決事件だと
いうことらしいです
存在否定なんてとんでもない
わたくしカンザイのファンで‥さっさと超愛かけよ

No title

俺が俺の意味を間違えてるってどういう意味ですか。
俺の存在を根底から否定してんの?

あと二枚目は絵ブログのゆきだまさんとこの管理人の絵だな。
トソンかわいいお

カンザイさん『完全犯罪』の意味間違えてるらしいですよ

No title

雰囲気が凄くよかった!
あと2枚目で抜いた
プロフィール

(゚q 。川カンザイ

Author:(゚q 。川カンザイ
完全犯罪(カンザイ)
プラネットライカは隠れた名作

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