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ハイパーメタボリックエンジェルズのようです #13

来シーズンに続く。寝て待て!


1.
 それははるか遠い昔の記憶。

彼女はバルコニーに立ち、町が途切れて続くなおその先、地平線の彼方を見ていた。

西の空が夕焼けのように赤く染まっている。


―――“紅蓮の黄昏”がもう手が届くほど近くに見える


ごうごうと獣の咆哮のような音を立てて荒れ狂う風にドレスの裾をはためかせ、彼女は呟いた。


―――前までは赤い点のようだったのに








ハイパーメタボリックエンジェルズのようです

#13 ファイヤー・タイダルウェーブ



2.
∬´_ゝ`)「将軍から連絡があったわ」


 背後にいた彼女の姉が囁いた。


―――なんと?

∬´_ゝ`)「戦線の崩壊は時間の問題だろうと。持ってもあと一週間」


彼女の声には静かな絶望が込められていた。


∬´_ゝ`)「数日以内に血の霧の軍勢は我が軍を打ち破り、王都に雪崩れ込んでくるでしょう」

―――お兄様たちの行方は?


その問いには溜め息が返ってきた。

妹の隣までやって来て、同じ方向を見つめる。

“紅蓮の黄昏”。

血の霧の軍勢によって赤く染まった地平線のことを彼女たちはそう呼んでいた。

あの下にはミストドールや霧の猟犬が蠢いているのだろう。
3.
∬´_ゝ`)「いいえ。恐らくはもう彼らの手にかかり……」

―――そうですか

∬´_ゝ`)「次回の議会で降伏が決定するでしょう。他に方法はないわ」

―――まだ方法はあります

∬´_ゝ`)「なりません」

―――まだ何も……

∬´_ゝ`)「夢渡りでミストライダーの精神に侵入するつもりでしょう」

―――……


言いながらも、妹の親譲りの鋼鉄の意思に姉はほとんど諦めたような口調だった。

口元がほころび、苦笑を浮かべる。


―――奴の弱点の情報さえ手に入れば……

∬´_ゝ`)「霧の猟犬が群れをなして守っているというのに、どうやって?」



4.
―――わたしだけここで手をこまねいているわけにはいきません

     お父様もお兄様もこの国の為に命を捨てたのです

∬´_ゝ`)「どうしても行くのですか」

―――ええ

∬´_ゝ`)「ならばわたくしも行きます」

―――お姉様!?

∬´_ゝ`)「あなたがそう言うのなら、わたくし一人ただ黙って見ているわけにはいかないでしょう」

―――……

∬´_ゝ`)「この策が失敗すればもう、滅びを受け入れる以外にありませんね」

―――はい


二人はしばらく黙り込み、地平線を見ていた。


∬´_ゝ`)「一つ、約束なさい」

―――?

5.
∬´_ゝ`)「夢の狭間ではお互い命よりも、奴の情報を持ち帰ることを最優先すること。

      例えわたくしが霧の猟犬に捕らえられたとしても、その時は見捨てなさい。

      わたくしもあなたが捕らわれた場合、同じようにします」

―――そんなこと……

∬´_ゝ`)「誓いなさい。やる以上はどうあっても成功させねばなりません」

―――……はい


 姉は手にしていたものを彼女に差し出した。

小さな人形だ。

彼女が趣味の裁縫で作ったものだろう。


―――これは?

∬´_ゝ`)「お守りです。あなたを悪い夢から守ってくれるように」

―――ありがとう、お姉様

∬´_ゝ`)「いいのです。このくらいのことは」

6.
姉は微笑みかけ、部屋を出て行った。

残された彼女は手の中の人形を眺めた。


l从・∀・ノ!リ人


―――ぶ、ブサイクだわ


 その出来にちょっと苦笑する。

姉は裁縫が得意だがセンスの方はイマイチだった。


今にして思えば、あの時すでに姉は自分の盾となって死ぬ覚悟だったのだ。

―――夢の狭間ではお互い命よりも、奴の情報を持ち帰ることを最優先すること―――

だからあんなことを……。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


l从‐A‐ノ!リ人

7.
ξ ゚⊿゚)ξ「どうしたの?」

l从・∀・ノ!リ人「少し昔を思い出しておったのじゃー」


 客船の甲板、船内へと続く入口の前で妹者は我に返った。


l从・∀・ノ!リ人「思えば長い時間が過ぎたものなのじゃー。

         あれから一体どれほどの月日が流れたのか……」

ξ ゚⊿゚)ξ「19歳じゃなかったの?」

l从・∀・ノ!リ人「うむ、実は数百年かそこらサバ読んでおったのじゃ」

ξ;゚⊿゚)ξ「それはサバってレベルじゃないと思う……」

l从・∀・ノ!リ人「実際は時空の狭間を漂っておったからのう。

         最期に生身だったのが19歳の頃って事なのじゃー」

ξ;゚⊿゚)ξ「生身? あんたその格好で生まれてきたんじゃなかったの!?」

l从#・∀・ノ!リ人「んなわけあるかなのじゃー! わらわは人形の子か!?」

ξ ゚⊿゚)ξ「まーまー。さて、お喋りはさておきそろそろ行ってみようかしら」

8.
l从・∀・ノ!リ人「うむ、気を付けるのじゃー」


 船内へ続くドアは自動ドアになっている。

センサーに反応しないのでツンは手を押し当てて力を込め、無理やり開けた。


l从・∀・ノ!リ人(姉者も兄者たちもわらわと国のために死んだのじゃー)


妹者は宙を漂いツンを追いながら、彼女のその背中を見つめた。

親にも似た感情がある。


l从・∀・ノ!リ人(こいつにもしものことがあれば今度はわらわが盾にならねばならんのじゃー。

         こんな姿になってまで生き永らえたのもそのためなのじゃー)


 暖かい視線で見つめていたその背中がいきなり停止し、妹者はそこに顔から突っ込んだ。


l从;>A<ノ!リ人「うぶっ?! 急に止まるななのじゃー!」

ξ ゚⊿゚)ξ「うわー、すごーい」

9.
 客船はひっそりとして静まり返っていた。

中央にパーティ会場を兼ねたカジノが据えられ、ショッピングモール、レストラン、映画館まで

入っている豪華さだが、人っ子一人いない。

放置されていた筈なのにどこもかしこも掃除が行き届いているのも不気味だった。


ξ;゚⊿゚)ξ「『ザ・グリード』みたい」

l从・∀・ノ!リ人「でっかい船じゃのう。こりゃミストライダーを探すのに一苦労なのじゃー」


 ツンは吹き抜けになっているカジノへやってきた。

上へ向けて五階分くらいの各階層が見渡せる。

天窓から差し込む灰色の陽光以外に明かりはなく、周囲は鬱蒼としていた。

ツンはウサミミを凝らした。


ξ ‐⊿‐)ξ「……」

l从・∀・ノ!リ人「どうじゃ?」

ξ ゚⊿゚)ξ「いるわ、どっかに隠れてる。この無機質な息遣いはミストドールね」
10.
l从・∀・ノ!リ人「なるべく体力を温存するのじゃー。

         まだ正体不明のミストキャリアーも一人いるしのう」

ξ ゚⊿゚)ξ「夢の狭間で見た人ね。ん~と……」


 ツンはあたりを見回した。

近くにオシャレな感じのショットバーがある。
                       ファン
そこに入ると案の定、天井に三枚羽の扇が据え付けられていた。

あの何の意味があるのかよくわからないがぐるぐる回ってるやつだ。


ξ ゚⊿゚)ξ「よっと」


ジャンプしてそれに取り付き、天井から力尽くで引っこ抜く。

それを手にカウンターの内側に入ってシンクの表面を覆う金属板を引っ剥がし、羽に巻いて補強した。

縁をステッキの刀で研いで尖らせたら、ファンは巨大な手裏剣のようになった。


l从・∀・ノ!リ人「何に使うんじゃー?」

11.
ξ ゚ー゚)ξ「ザコを一掃する武器にするのよー」

l从・∀・ノ!リ人「ブーメランみたいに投げつけるのかえ」

ξ ゚⊿゚)ξ「惜しいっ!」


カウンターの裏に回り、その下を這っていた水道管を取り外す。

それにファンを取りつけて竹トンボみたいにし、更にもう一回り太い水道管に入れる。

竹トンボの軸をストローに入れたものを想像してもらいたい。


ξ#゚⊿゚)ξ「ここをちょこっとだけ、曲げてっ、と……」


更に竹トンボの方の軸の尻を曲げてレバーにし、そこをぐるぐる回すとファンも回転する、

という装置を作った。

 装置を肩に担ぎ、カジノの真ん中に出向く。


ξ ゚⊿゚)ξ「出て来なさい、いるのはわかってるわよ!」

(゚q 。)(゚q 。)(゚q 。)ザワザワ

12.
声を張り上げたツンに呼応し、あちこちの通路からミストドールが群れをなして現れた。

いつかクーを助けに廃墟に行った時よりもまだ多い。

だが180度全方向を敵に囲まれて尚、ツンは余裕だった。


ξ ゚ー゚)ξ「お出迎えありがとう。月並みなセリフだけど……」


片手をくいくい振って周囲に挑発を送る。


ξ ゚⊿゚)ξ「パーティ開始と行きましょうか!」

(゚q 。)ウボァア―――!!


 まずは真後ろにいた一体が両手を剣に変え、飛びかかってくる。

ツンは背後にあったルーレットテーブルを後ろ蹴りで蹴り上げ、そいつにぶつけて迎撃した。

ガンッ!


(゚q 。)ブホッ!?


13.
すかさず正面からも来る。

ツンは装置を振り被り、バットのように振り回してその胴体を薙いだ。


ξ#゚⊿゚)ξ「とりゃああ!」

(゚q 。)ブヘッ (゚q 。)ゴホッ


数人がそれに巻き込まれる。

頃合いを見て装置のファンを正面に向け、腰を落として構えると、レバーを力いっぱいぐるぐる回す。

ファンが換気扇のように高速回転を始めた。


ξ#゚⊿゚)ξ「新兵器、ハイパーメタボリックスライサーよ! おんどりゃあああ!!」


そのままミストドールの群れに突っ込む。

ツンの怪力によって回転するファンはミキサーよろしくミストドールを切り刻み、バラバラに

粉砕しながら人波を薙ぎ倒して行く。

まるで芝刈り機で芝を刈ってるみたいだ。

14.
スパパパパパパ(゚//q 。//)(//゚q 。//)(゚//q //。)パパパパパパ


 ミストドールの手足やら何やらが派手に宙を舞う。

ミストドールもテーブルも椅子も観葉植物もお構いなしだ。

人垣が割れ、ツンの駆け抜いた跡地にだけぽっかりと道が出来ていた。


ξ#゚⊿゚)ξ「ドララララァ―――!!」

l从;・∀・ノ!リ人(恐ろしいことを思いつくやつなのじゃー)


カジノを縦横無尽に駆け巡り、ミストドールの数を半分以下にまで減らした頃、とうとう

スライサーの軸が折れ曲がって使い物にならなくなった。

更に先端のファンが軸から取れてぽろりと落ちる。


ξ ゚⊿゚)ξ「ありゃ」


 それを好機と見たか、残りのミストドールたちがツンに殺到する。


15.
(゚q 。)(゚q 。)(゚q 。)シボウフラグ!! ウボァァアア―――!!!


ツンは手の中に残った鉄パイプを床に突き刺し、その中ほどを両手で持って水平方向に

逆上がりする要領で回転しつつ全方向に蹴りを放った。


ξ#゚⊿゚)ξ「錦馬超by三国無双!」


自分を取り囲む形で飛びかかってきたミストドールをそれで一掃すると、更に回転して勢いを

付けながら先端へ向けて上って行き、そこを掴んで空中で床からパイプを引っこ抜く。


ξ ゚⊿゚)ξ「そぉい!!」


引っこ抜くと同時に正面に向かってパイプを叩き付ける。

ちょうど隙を突いてこちらに向かっていたミストドールの一体が頭を叩き割られ、床に潰れた。


(゚q 。)ブチャッ



16.
 着地するとパイプを回転させながら、脇の下から頭上、更に上体を折って背中の上へと巡らせ、

構え直す。

TVで見た少林寺拳法の真似だ。


ξ ゚⊿゚)ξ「ほわちゃあああ!!」


ミストドールが固まっているところへそのパイプを投げつけた。


(゚q 。)ナゲルノカヨッ!?


三体ほどの胴体を貫き、ダンゴ状になって壁へ繋ぎ止められる。

いずれもしばらく逃れようと身をよじっていたが、やがて霧になって消えた。


(゚q 。)ウボァー ウボァー


 吹き抜けの各階層にばらばらとミストドールたちが現れた。

彼らが身構えるとその両手が霧に溶けて形を変え、腕と一体化した機関銃となる。

17.
ξ ゚⊿゚)ξ「うわっ、新型!?」

l从・∀・ノ!リ人「わらわの世界では見なかったタイプなのじゃー。この世界のオリジナルじゃな」


たちまち銃弾が豪雨となってツンたちに降り注ぐ。

ツンはあわててそこらのカードテーブルに飛び付き、それを傘のように持って盾にした。

銃弾がテーブルに食い込み、木片が弾ける。

一時的にはしのげるが、すぐにばらばらになってしまうだろう。


ξ;゚⊿゚)ξ「ひいい!」

(゚q 。)ウボァ


 腕が砲になっているのがいる。

ツンに腕の先を向けて力を込める素振りをすると、シュポンというガス圧の音がして何かが

こっちに発射された。


l从・∀・ノ!リ人「ツン、ありゃ爆弾じゃー!」

18.
ξ ゚⊿゚)ξ「へ!?」


煙の尾を引いて飛んできたグレネードランチャーの砲弾はツンの目前の床に突き刺さり、弾けた。

爆音が空気を震わせ、更にその震動が津波となって周囲に押し寄せる。

テーブルや椅子の破片が宙を舞った。


ξ#゚⊿゚)ξ「ふんっ!」


 ツンは一瞬早く傘を捨ててジャンプし、爆風を逃れていた。

壁に取り付き、更にそこを蹴って頭上にあった大きなシャンデリアに捕まる。


ξ ゚ー゚)ξ「ヒャホーイ!」


捕まったシャンデリアが振り子のように揺れると、その勢いを利用して吹き抜けの階層の柵際で

銃を構えているミストドールたちに肉薄する。


(゚q 。)ウボァ!?

19.
銃弾を掻い潜りながら、ベルトに引っかけておいたステッキから刀を抜き放ち、ミストドールの

首を跳ねる。


(゚q 。)ウボ……

ξ ゚⊿゚)ξ「次はあっちよ、そーれ!」


 壁を蹴って方向を調節しつつ反対側へ向かい、壁沿いにシャンデリアを巡らせるかたちで

次々にミストドールに斬り付けて行く。

もちろん他のミストドールは絶え間なく撃ちまくっているのだが、シャンデリアはフラフラと

揺れているのでなかなか狙いが定まらない。


(゚q 。)ターザンカヨッ!!


腕をランチャーに変えていたミストドールが腕にグレネードを再装填している。

ツンは視界の端でそれを捕らえ、壁を蹴ってシャンデリアごとそっちに向かった。

ミストドールが顔を上げてランチャーの狙いをつけようとした瞬間、その目の前にツンがいた。

20.
ξ ゚⊿゚)ξ「よっ」

(゚q 。)!?


手を伸ばしてそいつの胸倉を捕まえる。

片腕にそいつをぶら下げ、そのままシャンデリアが反動で反対側へ向かうのに任せる。


(゚q 。)ウボッ、ウボァ

ξ#゚⊿゚)ξ「そーら、お届けものよ!」


 ランチャーのミストドールを、他の連中が群れているテラスに向かって投げつける。


(゚q 。)ウボッ!?

(゚q 。)ウボァ!?


数体を巻き込んで床に倒れ込んだ瞬間、ツンは両手を組み合わせて銃の形にした。

全身の熱量を掻き集めて人差し指の先端に収束させ、光の球体を作りだす。


21.
ξ ゚⊿゚)ξ「カロリィィ……!!」

(゚q 。)ウボァ!!


 腕をランチャーにしていた奴が仲間を押し退け、何とか砲を掲げてツンに向ける。

だが時すでに遅し。


ξ ゚⊿゚)ξ「ブレイク!!」


放たれた光と熱の弾丸はテラスに突き刺さり、同時にランチャーに装填されていたグレネートを

誘爆させた。

テラスの一角がばらばらに吹っ飛び、ミストドールの一部やらなんやらが宙を舞う。


ξ ゚ー゚)ξ「アハハハ! イヤッホーウ!」


ツンはスカッといい気になって片手でシルクハットを振り回した。

 銃弾を受け続けていたシャンデリアを吊っているワイヤーが軋んでいる。


22.
ξ;゚⊿゚)ξ「あっ、やばっ」


壁まで飛ぶにはちょっとタイミングが合わない。

ワイヤーがぶっつりと千切れる寸前、ツンは床のテーブルの上に着地した。

衝撃でテーブルが潰れ、すぐにシャンデリアが目の前に落ちて来る。


ξ ゚⊿゚)ξ「わっ」


クリスタルガラスが粉々に砕け、天窓から注ぐ光の中でダイヤモンドダストのように輝いた。

 残りのミストドールは数体となり、遠巻きにツンの様子を窺っている。

周囲にはさっきまで彼らを成していた血の霧が立ち込め、むせ返るほどの生臭さに満ちていた。


ξ ゚ー゚)ξ「後片付けと行きましょうか」

(゚q 。)……


ツンは待ち構えたが、ミストドールたちは動かない。

最初に先頭に立っていた一体が一歩退き、それを引き金にすべてのミストドールが下がり始めた。
23.
現れた時と同じくあっという間に消え失せる。


ξ ゚⊿゚)ξ「ん?」

l从・∀・ノ!リ人「どうしたのかのう」


こちらには聞こえない命令を誰かから受信したかのようだ。

 いぶかしんでいると、奥の通路に人影が現れた。

サンダル履きの足音をぺたぺたと鳴らすその人物が天窓から降り注ぐ淡い光の中に入り、

輪郭が露わとなる。


( ФωФ)「ククク、久し振りであるな」

ξ ゚⊿゚)ξ「あら、オヒサ」


相変わらず不健康そうな顔をした白衣にネクタイ姿の男で、身長はかなりあるが痩せ気味だ。

ゴボウみたいな体型だが、クマの出来た眼だけは狂気をたっぷり孕んでいた。


(#ФωФ)「ミクたんの恨みは忘れちゃおらんのである」
24.
ξ;´⊿`)ξ「まだあのフィギアのこと言ってんの? あんた全っ然モテないでしょ」

(#ФωФ)「ほっとけゴルァア!!」


 吠えた後に咳払いし、ロマネスクは奥を親指で指差した。


( ФωФ)「来い。御前が会いたいとおっしゃってるのである」


ツンと妹者は顔を見合わせた。


ξ ゚⊿゚)ξ「どうする?」

l从・∀・ノ!リ人「あやしいのう、罠だぞえ」

( ФωФ)「安心しろ、下手に手を出したら御前に怒られちゃうのである」

ξ ゚⊿゚)ξ「いいわ、ついてってあげる。そのかわり……」


 ツンは背後に振り返った。

自分の身長の倍くらいの高さのポールに、飾り紐のついた旗が掲げられている。

旗にはこの船の名前が刻まれていた。
25.
ξ ゚⊿゚)ξ「条件があるわ」

( ФωФ)「ん? なんであるか」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(#ФωФ)「ふざけるなあああ! わ、我が輩を何だと思って……」

ξ ゚⊿゚)ξ「暴れなさんな。おっこちるわよ」

l从・∀・ノ!リ人「なのじゃー」


 ツンはポールの先端に飾り紐でロマネスクを結び付け、それを通路の先に掲げて進んでいた。

罠がありそうなところでは先にロマネスクを差し出して様子を窺う。


(#ФωФ)「わ、我が輩は科学会にその人ありと言われた英知、天才の中の天才!

        杉浦ロマネスク様であるぞ! それをこんな使い方を……」

ξ ゚⊿゚)ξ「あー床に落とし穴がありそう。ほれほれ」


うるさくなってきたので床をロマネスクで数度叩く。
26.
転ばぬ先の杖だ。


(;ФωФ)「へぶっ!? あばっ?! や、やめんかこら!」

l从・∀・ノ!リ人「天才だかなんだか知らんがミストライダーに魂を売ったのは頂けんのう」

( ФωФ)「ふん、品性まで売った覚えはないのである」

ξ ゚⊿゚)ξ「戸愚呂弟かあんたは」

( ФωФ)「お、よくわかったな。その先の催事場がそうなのである」


 廊下の突き当たりに観音開きの大扉がある。

まずロマネスクを突っ込んで振り回し、反応がないことを確かめてからツンは中に入った。


ξ;゚⊿゚)ξ「うっ!?」


思わず口元を覆う。

これまでにないほど濃い血の霧のニオイだ。

真新しい鮮血に似た臭気。

27.
l从・∀・ノ!リ人「……!!」

( ФωФ)「入るのである」

ξ ゚⊿゚)ξ「よし、いよいよね……」


ロマネスクを捨て、二人は中に入った。


(;ФωФ)「あっぶべ!? こ、こら、放り投げるな!」


 中は血の霧で陰り、数メートル先も見渡せない。

息苦しいほどの濃霧だが、ツンはその中に確かに感じていた。

想像を絶する邪悪さと魂の暗さを持ち合わせた、人型の狂気とでも呼ぶべき存在。


(:::::::::::)


人影が見える。

彼が物々しい動作で手を掲げて軽く一振りすると、霧すらも彼を畏れたように退いた。

玉座に腰を下ろし、肘掛に右肘をついて手に頬を乗せている。
28.
かすかに笑っているように見えた。

かつてなく冷たく、暗く、禍々しい笑み。


l从・∀・ノ!リ人「ミストライダー!!」

(:::::::::::)「久し振りだな。随分みすぼらしい姿になったじゃないか」

l从・∀・ノ!リ人「お互い様なのじゃー」

(:::::::::::)「これかい?」


 彼は両腕を拡げて自分の姿を見せてみた。

想像以上に小さい、というかツンとほぼ同い年の少年だ。


( ・∀・)「誰かさんに体をバラバラにされちゃったんでね。

      必死に掻き集めてようやくここまで元通りに出来たのさ」


黒い髪に陶器のように白い肌、そして血の霧よりも尚赤い鮮血の色をした瞳。

長いマントを羽織り、ゾッとするほど冷たい美貌の持ち主だった。

29.
( ・∀・)「次元の狭間は暗く冷たかった。何度も意識が遠退きかけたよ。

      だが僕の意思は消滅を許さなかった」


 笑みが濃くなる。


( ・∀・)「すべては復讐心の賜物だ、妹者」

l从・∀・ノ!リ人「ミストライダー、貴様だけは……」


妹者は数百年前、彼と決別の際に呟いたのと同じセリフを繰り返した。

あの時と同じように憎しみと怒りを込めて。


l从・∀・ノ!リ人「貴様だけは許さない!!」


ミストライダーはそれを一笑に伏した。


( ・∀・)「お前はひどい奴だよ、妹者。身内だけでは飽き足らずに今度はそいつを犠牲に

      しようってのか?」

30.
ξ ゚⊿゚)ξ「悪役は話が長いのが定番ねー。いいからそのおケツをそっから持ち上げたら?」

( ・∀・)「思い出話くらいさせろ、せっかちだな。まあいい」


片手を上げて合図する。


( ・∀・)「お前の相手は彼女がする。おい、出番だ」


 カッ、カッ。

霧の奥にブーツの足音を響かせ、新たな人影が現れた。

ファイヤーペイントの赤いガウン姿で、頭にタオルをかけていて顔は窺えない。

人影はツンたちとミストライダーの間で立ち止まった。


ξ ゚⊿゚)ξ「例の最後の一人ね?」


相手は答えない。

 突然床から大きな四角いものがせり上がって来た。

人影はその四隅を支えるポールの上に立つ形となる。
31.
ξ;゚⊿゚)ξ「わっ!?」

―――コールしてくれ


相手が呟くとミストライダーは苦笑し、朗々と唱えた。

             ファイヤー・タイダルウェーブ
( ・∀・)「赤コーナー、“炎 の 津 波”HEAT!」

ノパ⊿゚) バッ!!


タオルとガウンをポール上で脱ぎ捨て、その姿を露わにする。

真っ赤に染めたショートカット、赤地にファイヤーペイントを施したリングスーツ姿の女だ。

ブーツ、エルボーパット、ニーパットにも同じ炎の模様が施してある。

気の強そうな顔立ちと相まって、その姿はまるで火の玉のようだった。


ノパ⊿゚)「メインイベンターの出番は最後ってのがお決まりだ」


年はツンより一回りは上に見えた。

体はネコ科の動物を思わせるしなやかな筋肉に包まれており、無駄な肉が一片足りともない。
32.
ξ ゚⊿゚)ξ「あんたを倒さなきゃミストライダーには触れもしないってわけね」

ノパ⊿゚)「そういうことだ。リングに上がりな」

ξ ゚⊿゚)ξ「ええ、喜んで」


 ツンはひとっ飛びでリングに上がった。

背の高さは相手の方が少し高いくらいだが、間近にすると相手の威圧感に圧倒されそうになる。


l从・∀・ノ!リ人「青コーナー、ハイパーメタボリックエンジェルなのじゃー」

ξ;゚⊿゚)ξ(強そうだなこいつ。後にミストライダーも控えてるのに……)

ノパ⊿゚)「レフェリーはなしだ。凶器も反則技も好きに使ってくれ。

     じゃ、そろそろ始めるか!」

( ФωФ)「皆さまこんにちは。今日はここ、豪華客船クイーンエリザベスたん号より

        ハイパーメタボリックエンジェルVSファイヤータイダルウェーブHEATの

        一戦をお伝えするのである。

        実況は我が輩、杉浦ロマネスクが科学的にお送りするのである!」

33.
どうやってか拘束から抜け出したロマネスクがインカムをつけ、折り畳みテーブルについている。

隣には妹者の姿もあった。


l从・∀・ノ!リ人「解説の妹者なのじゃー。よろしくなのじゃー」

( ФωФ)「妹者さん、今回の見どころは?」

l从・∀・ノ!リ人「どっちも名前が長いのじゃー」

( ФωФ)「ありがとうございます。さあ、今ゴングです!」


ロマはハンマーを手に取り、ゴングを叩いた。

カ―――ン!


ノハ#゚⊿゚)「ふんっ!」

ξ#゚⊿゚)ξ「てぇぇい!!」


 開始と同時に二つはぶつかり、お互いの両手を空中で掴んで睨みあう形になった。

四つに組むってやつだ。

34.
ξ#゚皿゚)ξ「ふんぬぐぐぐ……!」

ノハ;゚⊿゚)「!」

( ФωФ)「む、ヒートが押し負けているのである!」

l从・∀・ノ!リ人「ツンのパワーは頑丈さと並んで最大の長所の一つなのじゃー」


 ツンの圧力に負けて少しずつ状態を反らしていったヒートは、寄り切られる寸前、相手の胴体に

トーキックを叩き込んだ。


ξ;>⊿<)ξ「ぐっ!?」


上体を折ったツンから力が抜けた瞬間、相手の左手を掴んで逃げられなくし、右手でツンの喉の下に

逆水平チョップを連打する。

バチン、バチン、バチン!


ノパ⊿゚)「オラァ、オラァ、オラァアア!!」

ξ;>⊿<)ξ「あだっ、だっ、だっ!?」

35.
 チョップを叩き込みながらコーナーポストまで押しやると、すかさず胴体に膝蹴りを叩き込む。

どすっ!

胴体を貫かれるような衝撃にツンが動きを止めると、ヒートはツンの腕を抱え込み、それを振る形で

反対側のコーナーに向かって走らせた。


ξ;゚д゚)ξ「ほげぇ!?」


 逆らおうにも相手も人並み外れた怪力の持ち主だ。

走らされるというよりは投げ付けられ、つんのめるようにして向かいのコーナーに激突する。


ξ;>⊿<)ξ「でっ!?」


思わず振り返った瞬間、自分も走ってきたヒートが自分目がけて跳ねたところだった。

空中で身をよじって背を向け、肘を突き出す。

背面エルボーがツンの顔面に突き刺さった。


ξ *)ξ「おうふ!?」
36.
ノパー゚)「行くぜ!」


 ロープをくぐってエプロン(マットと場外の間にある僅かな隙間。タッグ戦の時にパートナーが

待機しているところ)に移り、ヒートはそこで逆立ちをする姿勢になった。

顔面を抱えて蹲るツンの首根っこを、ロープ越しに足で捕まえる。


ξ;> 3<)ξ「ぐ、ぐえっ?!」

( ФωФ)「おお、あれは吉野正人の必殺技、コウモリであるな」

l从・∀・ノ!リ人「む、パワーではツンに劣るが技術はヒートとやらのが上かのう」


両足でツンの首を絞めつつ、両手でツンの足を掴んで背中を限界以上に仰け反らせている形だ。

複合関節技、メキシコプロレスではジャベと呼ばれる技である。
                     ジャベ
 ツンは逃れようと暴れまくったが、鍵の名にふさわしくガッチリ固められていてなかなか外れない。


ξ#゚⊿゚)ξ「ぐ、ぐぞ……!!」


それでも何とか両手で相手の足のロックを外し、ロープ外に投げ捨てる。
37.
支えを失ったヒートは場外に落ちた。


ノパ⊿゚)「おっと」

ξ ゚⊿゚)ξ「けったいな技かけやがって、この! この!」


 リング下のヒートにツンが蹴りを放つと、彼女は逆にその足を捕まえた。

ツンを場外に引きずり落とす。


ξ;゚⊿゚)ξ「あらっ!?」

ノパ⊿゚)「いいレスラーは場外戦をも制すんだぜ」


 落ちながらもヒートに蹴りを入れて突き離すと、ツンは反撃に出た。


ξ ゚⊿゚)ξ「でぇぇい!!」

ノハ*)゚⊿゚)「ぐっ、いでっ、」


左右のパンチの連打。

38.
ヒートはほぼ最低限しか防御を使わず、大半は体で受け止めた。

ツンが体重を乗せたストレートを叩き込もうとした瞬間。


ノパー゚)「あたしの相棒に挨拶しろ」


相手を捕まえてその勢いを利用し、さっきと同じ要領でツンを走らせる。

ツンは四角いリングの四隅を支える鉄柱と強烈な抱擁を顔面から交わした。


ξ;>⊿<)ξ「だっ!? ……ま、また顔面!!」


 瞼の裏で火花が飛び散っている。

頭を振り、顔を両手で拭って無理矢理正気を取り戻しながら、ツンは振り返りざまに身構えた。


ξ;゚⊿゚)ξ(流れるような連続技だわ、付け込む隙がない……!! ありゃ!?)


ヒートの姿がない。

 彼女は先にリングに上がっていた。

39.
走って勢いを付けると、ジャンプしてロープを飛び越え、空中で一回転してツンに空中で

体当たりを放つ。


ノパ⊿゚)「ドラァアア!!」

ξ;>д<)ξ「ほげぇぇ?!」

( ФωФ)「堀口元気ばりのトペ・コンヒーロだぁあ!! なんと美しいフォームであるか!」

l从・∀・ノ!リ人「あの女、百戦錬磨じゃな。ツンのパワーを上手く受け流してるのじゃー」

( ФωФ)「マイナー団体とは言え元トップレスラーであるからな!

        ちなみにファイヤー・タイダルウェーブは現役時代からのニックネームであるぞ。

        さあヒート、HMAを掴んでリングに押し上げた」


 押し上げるというよりは投げ込まれたツンはマットの上を転がった。

四つん這いになって喘ぎながら、玉のような汗を垂らす。


ξ;゚⊿゚)ξ(つ、強い!! 今までで最強かも)


40.
 ヒートも一緒にリングに上がって来た。

ツンの方にやってくる。


ノパ⊿゚)「寝てんじゃねえぞ、っと」


顔の両側を万力のような力の手で挟み込まれ、ツンは無理やり立たされた。

立たされたと思った時にはもう、ヒートは彼女の背後に回り込んでいた。

右腕でツンの頭部を抱え込んで首関節を極めつつ、相手の右腕を捻り上げて自分の両手を繋げる。


( ФωФ)「おーっと、チキンウイングフェイスロックであるぞー!」

l从・∀・ノ!リ人「首と片腕の関節を同時に極めてるのじゃー」


 ツンはそれを振りほどこうとしたが、利き腕が使えず左腕一本ではどうにもならない。

頚椎と右肩の関節が限界以上の角度を強要されて悲鳴を上げている。


ξ;>⊿<)ξ「ぐぞ、ぐぞおお!?」

l从・∀・ノ!リ人「ツン、足じゃー!!」
41.
ξ;>⊿<)ξ「足……?」


妹者の飛ばした激に閃き、カカトで相手のつま先を思い切り踏み付ける。

ガッ!


ノハ;゚⊿゚)「!!」


相手が思わず手を緩めた瞬間に技を外し、背中越しに肘打ちを当てて完全に振りほどく。

振り向きざまにラッシュをかけた。

拳の連打で畳みかける。


ξ ゚⊿゚)ξ「ドラララララァァア―――!!!」

ノハ*)゚⊿゚) ガッ、ゲフッ

( ФωФ)「HMA、まったく能がない攻め方であるな」

l从;・∀・ノ!リ人「無茶するな!! そいつは力尽くでは倒せないのじゃー!」


 ラッシュのシメに放ったハイキックをヒートは身を沈めてかわし、相手の軸足を自分の両足で
42.
挟んだ。

カニ挟みでツンを正面から転倒させる。


ξ;゚⊿゚)ξ「おっと!」


 ロープ際だったのでツンは思わずそこに捕まった。

軽やかで素早い足音が離れ、そしてまたすぐに近づいてくる。


ξ ゚⊿゚)ξ「ハッ!?」


ロープを掴んだまま振り返るが、ヒートの姿はない。


l从・∀・ノ!リ人「後ろなのじゃー!!」

ξ ゚⊿゚)ξ「へ!?」

ノパ⊿゚)「遅い!」


 ヒートはすでにツンの右隣にいた。

43.
勢いに任せて上下のロープをそれぞれの手で掴み、体をコマのように回転させながら両膝を

ツンの顔面に叩き込む。


ξ *)ξ「おうふっ!?」

( ФωФ)「出たあああ!! レイ・ミステリオの得意技、619であるぞー!!」

l从・∀・ノ!リ人「すぐ攻撃に移れるよう防御を最低限にして隙を窺っていたのじゃー。

         しかも血の霧にほとんど頼ってないのじゃー」

( ФωФ)「地力の違いってやつであるぞー! HMAの命運も尽きたのである!」

l从#・∀・ノ!リ人「黙らんかいこの!」


 妹者はロマネスクの耳に噛み付いた。


l从・皿・ノ!リ人 ガブ

(;ФωФ)「ひぎいい?! いでで、いでででで、離せ、離すのである!!」


 ヒートの蹴りでロープの合間から弾き出されたツンはマットに仰向けになった。

44.
呼吸が乱れ、限界以上に稼働している肺がひどく痛む。


ξ;>⊿<)ξ(ヤバイ、勝てないかも……ど、どうしよー、泣いちゃおうかな)

ノパ⊿゚)「しょっぱい試合になっちまったなー。楽しみにしてたのに」


 ヒートは両手を腰にやり、溜息をついた。

ミストライダーの方を見ると、彼は退屈そうに親指を下に下げた。


( ・∀・)「飽きて来たな。久々にお前のフィニッシュホールドを見せてくれ」

ノパ⊿゚)「ジャベ、飛び技、投げ。どれがいい?」

( ・∀・)「どれでもいい」

ノパ⊿゚)「了解。オラ、立て」


ヒートの蹴りが倒れたままのツンの脇腹に突き刺さる。

肋骨が軋み、ツンは肺に残った空気を悲鳴と一緒に吐きだした。



45.
ξ;>⊿<)ξ(今は逃げることを考えて……妹者ちゃんもああ言ってたし、こんな思いしてまで

        痩せたくないよ~!! アイドルになれなくてもいい! あ、あたしは……)

ノパ⊿゚)「なんだ、もう立てないのか? ジャベのがお好みみたいだな」


 絶望と逃げ腰のツンの頭に、ある光景が去来した。

クーがさらわれた時の荒巻。助けられた直後の憔悴し切った彼女。

ビンを投げ込まれた渡辺。店を焼かれたゆうたろう。


ξ;>⊿<)ξ(あたしは何のためにここにいるの!?

        あたしは……あたしは、自分に価値が欲しかったんだ。

        みんなを守れるって証明したかったんだ!)


今こそ信じなければならない。

他でもない、自分自身を。




46.
ξ;>⊿<)ξ(今もし逃げたら、あたしはこの先ずっと逃げる癖がつく……!

        プライドをこんなとこで捨てちゃダメ! 戦って、戦うのよ!!)


 こっそりシルクハットを手に取り、中に手を入れる。


ノパ⊿゚)「ん? 何やってんだ?」


ヒートが自分に手をかけた瞬間、ツンはハットから取り出したコーラを口に含み、霧状にして

彼女の顔面に吐きかけた。


ノハ;>⊿<)「ふぎゃああ?!」

(;ФωФ)「おお、毒霧!?」

l从・∀・ノ!リ人「ん!?」


顔面に取りついた妹者に口の端を引っ張られて伸ばされながら、思わずロマが叫ぶ。

 一時的に目を潰されたヒートは顔を押さえて退いた。


47.
ノハ;>⊿<)「くそっ、味なマネを……」


 ツンはヒートの頭を脇の下に抱え込むと、手の中に隠し持ったフォークを彼女の額に叩き込んだ。

ガツン、ガツン、ガツン!!


ξ#゚⊿゚)ξ「レフェリーをなしにしたことを後悔なさい!」

ノハ;>⊿<)「いだっ、だっ、だっ、て、てめえ、卑怯だぞ!」

( ФωФ)「ひどい、ひどすぎるぞー! 往年のブッチャーばりである! あんた鬼やー!」

l从・∀・ノ!リ人「勝ちゃいいのじゃー」

(;ФωФ)「正義の味方とは思えんセリフであるな」


 妹者は実況席を離れ、折り畳み椅子を引きずってリングに向かった。


l从・∀・ノ!リ人「ツン、これを使うのじゃー!」


小さな体で頑張って椅子を押し上げ、マットの上を滑らせる。

 ヒートはツンの体を両手で押して何とか腕の中から頭を引っこ抜くと、怒りに任せて吠えた。
48.
ノハ#゚⊿゚)「てめえぶっ殺……」

ξ#゚⊿゚)ξ「そぉい!!」


ツンが振り返りざまに放った、椅子を使った横殴りの一撃。

さしものヒートが怯んだところに、椅子ラッシュをかける。


ノハ#゚⊿゚)「だっ、いでっ、でっ、この、いい加減にしろぉ!」


 ヒートが椅子を掴んで受け止めると、ツンは抵抗せずに手を放した。

すかさずジャンプし、ヒートが持っている椅子めがけてドロップキックを放つ。

椅子越しに顔面にキックを叩き込まれたヒートはロープ際まで吹っ飛んだ。


ノハ;>⊿<)「へぶっ?!」

ξ;゚⊿゚)ξ ゼェゼェ「ヒールレスラーにしちゃ反則技に弱いじゃない」


 ロープにもたれかかったヒートは息を整えつつ、鼻血を親指で拭った。


49.
ノパ⊿゚)「チッ、調子に乗りやがって。勝負はこれからだぞ」

( ・∀・)「いや、もういい。決着はお預けだ。」


モララーが手を上げて二人を制した。


ノパ⊿゚)「御前!」

l从#・∀・ノ!リ人「部外者は引っ込んでるのじゃー!」

( ・∀・)「もう充分さ。お前らをここへ誘い込んだのは余興に過ぎない。

      妹者、お前との再会を演出したかっただけなんだよ。ロマ!」

(;ФωФ)「え? まさかあれをやるのでありますか、御前」

( ・∀・)「やれ」

(;ФωФ)「わ、わかりましたである」


 ロマネスクはテーブルの下から鉄で出来たアタッシュケースを取り出した。

蓋を開いて中の赤いボタンを押し込む。

すると部屋の明かりが落ち、赤色警報がけたたましく鳴り始めた。
50.
ξ;゚⊿゚)ξ「あのさ、このパターンって……」

l从・∀・ノ!リ人「自爆装置かえ?!」

( ・∀・)「生きてここを出られたらまた会おう」


椅子から立ち上がり、マントをひるがえす彼に妹者が叫んだ。


l从#・∀・ノ!リ人「待て、ミストライダー!! “鍵”とはなんなのじゃー!?」

( ・∀・)


 彼は笑っただけだ。

すぐに霧の奥に姿を消す。


ξ;゚⊿゚)ξ「ヤバイよ、妹者ちゃん! あたしたちも逃げないと!」

l从#・∀・ノ!リ人「うぬぬ……き、今日はこのくらいにしといたるわー!」

ノパ⊿゚)「甲板にゴムボートがある。プールのシャワーんとこだ。使いな」

ξ ゚⊿゚)ξ「え?」

51.
 ヒートは好戦的に笑い、ツンを指差した。

すぐにリングから飛び降りてミストライダーの後を追う。


ノパー゚)「いいか、まだ勝負は継続だからな。次会う時まで誰にも負けんなよ!」

ξ ゚⊿゚)ξ「え? ああ、うん、ありがと」

(;ФωФ)「あわわ、置いていかないで欲しいのである!」


 彼らが霧の中に消えるとツンはすぐに踵を返し、カジノに戻った。

生き残ったミストドールたちが右往左往する中を掻き分け、船内から飛び出す。


(゚q 。) ヤバイヨ ヤバイヨ

(゚q 。) シズムワコレ マジシズンデマウワ

ξ;゚⊿゚)ξ「えーとえーと、プールって言ってたっけ?」

l从・∀・ノ!リ人「ん、あれじゃないかえ」


 船尾側に大きな流れるプールがある。

52.
ツンはそのシャワールームの方へ走った。

壁際に鉄の箱がある。


ξ ゚⊿゚)ξ「これか! えーと、……??」

l从・∀・ノ!リ人「どうしたのじゃ?」

ξ;゚⊿゚)ξ「説明書きが英語だよぉ!? どうすんのこれ!?」


そこらじゅういじり回すが、うんともすんとも言わない。

 ずん、と言う震動があった。

すぐに爆音が遅れてついてきて、ブリッジの方で炎の柱が噴き上がった。


ξ;゚⊿゚)ξ「ひいいい!!」

l从;・∀・ノ!リ人「お前学校で英語習ってるんじゃろ!?」

ξ;゚⊿゚)ξ「語学は苦手なのよー!」


再び爆発があった。

53.
船内のそこらじゅうに仕掛けてあったらしい爆弾が次々に爆発し、船を砕いてゆく。

船体が傾き始め、全体のフレームが歪む不気味な音が高く響き始めた。


ξ;゚⊿゚)ξ「ひぎいいい! タイタニ―――ック!!」

l从;・∀・ノ!リ人「仕方ないのじゃー、ツン! シルクハットを……」


 とうとう船体が真っ二つに折れた。

前半分と後ろ半分がそれぞれ垂直に立ちあがり、海中へと引きずり込まれてゆく。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 血の霧によって歪んだ空間を通過したミストライダーと他二人は、遠く離れた別の船で客船が

爆発するのを見ていた。


( ФωФ)「さすがにあれでくたばったであろう」

( ・∀・)「まさか。生きてるさ」

ノパ⊿゚)「悪くない使い手だな! また戦いたいぞ」
54.
( ・∀・)「“鍵”が先決だ。行くぞ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ツンの家ではドクオがアニメDVDを鑑賞していた。

津田家自慢の50インチのプラズマテレビに食いついている。


(;A;)「クロニコたーん! ク、クロニコたぁぁ―――ん! ひ、ひどい! かわいそすぎる!」


思わず滲んだ涙をハンカチで拭う。


(;A;)「うう、このシーンは何度見ても泣いちゃうぜ……お?」


テレビとドクオが座っているソファの間、何もない空間に突然、黒い粒が現れた。

それがぐにゃぐにゃと歪み、形を変えながら広がると、ニュッとツンの頭が飛び出す。


ξ;゚⊿゚)ξ「おっ!?」

l从;・∀・ノ!リ人「せ、狭い! 潰れてしまう! 速く通り抜けるのじゃー!」
55.
('д`)


 服の端を焦がし、黒くススにまみれたツンは顔面から絨毯の上に落ちた。


ξ;>⊿<)ξ「あだっ」

l从・∀・ノ!リ人「ふう、やれやれ。危ないとこだったのう」



二人が落ちてきた穴はぐるりとひっくり返り、シルクハットになる。

ツンはそれを手に取り、顔をさすりながら床に座り直した。


ξ ゚⊿゚)ξ「あれがミストライダーか……」

l从・∀・ノ!リ人「奴はあのヒートってヤツより確実に強いのじゃ。

         どうだえ、それでもまだやるかえ?」

ξ*゚⊿゚)ξ「もちろんよ! あたしはハイパーメタボリックエンジェルだもん」

(;'A`)「えっと……どっから出てきたんだ、あんたら」

ξ ゚⊿゚)ξ「おっと!? こりゃ失礼」









第2シーズンへ続く……



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