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ハイパーメタボリックエンジェルズのようです #9

 スーパーヒロインの唯一の味方がヤクザという。

1.
从 ゚∀从「おおおお!!」


 気迫を吐き出し、両手に刀を構えたハインが斬り込んでくる。


ξ ゚⊿゚)ξ「!!」


ツンはステッキに仕込まれた刀を抜き、防御に回った。

 先に打ち下ろされたのはハインの右の刀で、これは明らかに牽制だ。

軽く弾いていなし、続いて放たれた左を後ろに下がってかわす。


ξ;゚⊿゚)ξ(鋭い!! こりゃあ本気出さないと)





ハイパーメタボリックエンジェルズのようです

#9 約束の森



2.
 二つの刃が織り成すハインの斬撃はほとんど絶え間がなく、息をつく暇もない。

廊下の突き当たりまで追い詰められそうになった時、ツンは反撃に出た。

打ち込んできた相手の刀の片方を跳ね上げ、意図的にもう片方にぶつけて一時的に二つの動きを

止める。


从 ゚∀从「!!」


二刀の刀身が絡み、攻撃がまばたき一度分ほど止まる。

 ツンは右手の壁に向かってジャンプし、そこを蹴ってハインの後ろに回り込みながら、その背に

向かって斬り付けた。

フィギアスケートの選手のように身をスピンさせての一撃だ。


ξ ゚⊿゚)ξ「てぇええい!!」


ハインは振り返りもせず素早く二刀を背後に回し、背中で刀身を交差させて防いだ。

ギィン!!

3.
鋼同士が噛み合い、火花を噴く。

 逆に壁を背負う形になったハインに対し、ツンはラッシュをかけた。


ξ#゚⊿゚)ξ「非喪手流・秘奥義! 非喪手乱舞~ッ!!」


見様見真似でいつかの技を繰り出す。

横一文字に斬り付け、すぐさま切っ先を180度返して逆に薙ぐという一連の技を凄まじい速度で

繰り返す必殺技だ。


从 ゚∀从「ハッ」


 ハインは鼻で笑い、右手の一刀でそれをすべて防いで見せた。

しかしツンが押し、ハインが下がる形になる。

とうとう背中に壁が当たろうかという時、左手を持ち上げ、二刀を交差させてツンの刀を挟み込む。

ガチッ!


ξ;゚⊿゚)ξ「うっ?」
4.
从 ゚∀从「お遊戯は終わりか?」


三つの刀身が空中で噛み合った。

ハインに押されて再び位置が代わり、またツンが壁を背負った。


ξ ゚⊿゚)ξ「離せ、このっ」


苦し紛れの蹴りを放って間合いを離そうとするが、ハインはそれは足を跳ね上げて膝で防いだ。

そのままつま先を床に付けず、ツンの軸足に強烈なローキックを撃ち下ろして払う。


ξ;゚⊿゚)ξ「だっ」


壁に寄り掛かる形で尻餅をついたツンに対し、ハインはくるりと背後を向けた。

振り返りざまに放った後ろ蹴りがツンの顔面に突き刺さる。


ξ;>⊿<)ξ「!!」


ドゴン!
5.
蹴りはツンの頭ごとコンクリートの壁を突き破り、彼女の上半身を壁の中に埋めた。


从 ゚∀从「ロマネスクのバカが。あいつは何でこんな奴に苦戦……!?」


足が抜けない。

足首を万力のような力で掴まれ、ハインはそのまま壁の穴の中に引き込まれた。

 ハインの足を掴んだツンは彼を引きずり回して走り、壁の向こうにあった部屋を横切った。


ξ#゚⊿゚)ξ「女の子の顔面に、」


さっきツンが幻霧の心臓を始末した部屋だ。

ツンはその部屋の奥を目指した。

引きずられているハインは床に転がっているガラクタに次々にぶつかり、翻弄されている。


ξ#゚⊿゚)ξ「蹴りなんか入れやがって、」


部屋の反対側の壁が見えてきた。

6.
勢いに任せてそこにハインを投げつける。


ξ#゚⊿゚)ξ「こんにゃろおおおっ!!」


壁際に積まれていた様々な器具や折り畳み式の椅子、スチールのファイル棚などの中に突っ込む。


ξ;゚⊿゚)ξ ゼェゼェ「あー、ちょっとスッとした」

l从・∀・ノ!リ人「スーツを差し引いてもお前、つくづく頑丈じゃのう」

ξ ゚⊿゚)ξ「唯一の取り柄ってやつよー」


 ツンは鼻血を手の甲で拭い、ガラクタに半ば埋もれているハインに革靴を投げ付けた。

彼を投げ捨てたときに脱げて手の中に残ったのだ。


从 ゚∀从「投げるんじゃねえ。20万円もしたんだぞ」


それを空中でキャッチすると、ハインはガラクタを押し退けて這い出してきた。

履き直してとんとんと爪先で床を叩き、馴染ませる。

7.
ξ ゚⊿゚)ξ「あんたが?」

从#゚∀从「靴がだ、ボケ」

ξ ゚⊿゚)ξ「あんた荒巻さんの息子さんだったんでしょう。何で裏切ったの?」

从 ゚∀从「子供は親に逆らうのが世の通例らしいぜ。反抗期ってヤツさ」

ξ#゚⊿゚)ξ「どんだけ世の中に迷惑かける反抗期なのよ!」

从 ゚∀从「チッ、女と話すのは嫌いだ。どいつもこいつも頭ァ空っぽ、感情でしか喋らねえ」


深呼吸し、埃まみれになったハインは構えた。


ξ ゚⊿゚)ξ「クーちゃんの誘拐を指示したのもあんたね?」

从 ゚∀从「まあな。あれが上手く行ってりゃ、もう少し物事はスムーズに運んでた」

ξ#゚⊿゚)ξ「義理とは言えあんたの妹じゃない! 平気だったの!?」

从 ゚∀从「別に。顔合わせた事ァなかったしな」


ツンもまた刀を構え、彼と対峙する。


8.
ξ#゚⊿゚)ξ「もう許せない! 月までぶっ飛ばしてあげちゃうわ」

从 ゚∀从「お喋りは終わりか? 助かったよ、殺し合いの方がまだ気楽だぜ」


ツンは真っ直ぐに斬りかかった。


ξ#゚⊿゚)ξ「おああああ!!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 荒巻は重い体を引きずり、上の階を目指した。


/ ,' 3 ゼェゼェ「ええい、年は取りたくないわい」

(-@∀@)「おやっさん!? 無事でしたか」

/ ,' 3「わしゃ不死身だ。どうだ首尾は」


 奥のドアの前で、口元を上着の袖で押さえたギコタイガーが部屋の中を指差す。


<゚Д゚=>「この部屋みてえなんですが」
9.
/ ,' 3「どうした?」

( ・3・)「入るのはヤバそうだ。中にクリムゾンの素が立ち込めてますぜ」


荒巻が部屋を覗くと、確かに赤い霧が床にうっそうと積もっている。

あれを吸い込んでも平気という保証はどこにもない。

 荒巻は腹に巻いたサラシに手を突っ込み、中から厚紙の筒みたいなものを取り出した。


/ ,' 3「ほれ」

(;-@∀@)「ダッ、ダイナマイトじゃないですか?! どこからこんなものを」

/ ,' 3「山岳労働者の親方と知り合いでのォ。持ってきて良かったわい」


全部で四つあるそれを全員に配り、それから荒巻は腕時計を見た。


/ ,' 3「あと15分待て。わしは嬢ちゃんの様子を見てくる」

(-@∀@)「おやっさん!」

/ ,' 3「見て来るだけだ、わしだってこれ以上無理はしたくないわ。クソ、腰が痛い……」

10.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――


ξ ゚⊿゚)ξ


 ツンは誰もいない部屋で一人、刀を構えて周囲を警戒していた。

あれからハインと数度斬り結んだのだが、もつれ合った後に姿を見失ったのだ。


ξ;゚⊿゚)ξ「くっそー、どこに隠れたんだ」

l从・∀・ノ!リ人「防戦一方じゃのう。このままじゃ押し負けるぞえ」

ξ ゚⊿゚)ξ「う、う~ん。どうすればいいかな」

l从・∀・ノ!リ人「お前気付かなかったかえ? 奴の剣技は……」


ツンのウサミミがかすかな物音を捕らえた。


ξ ゚⊿゚)ξ「!!」


思わず振り返る。

11.
次にガツンという衝撃音がし、奥の壁際にあったファイル棚がこっちに向かって吹っ飛んで来た。


ξ#゚⊿゚)ξ「ふんっ!!」


蹴りで横へ弾き飛ばす。

 妹者が叫んだ。


l从・∀・ノ!リ人「目くらましじゃー!」

从 ゚∀从


ハイン自身は自分で蹴り飛ばした棚の影に隠れていたのだ。

走りながら身をごく低くし、地面を摺るような姿勢になると、両側から挟み込む形でツンの足に

斬り付ける。


ξ;゚⊿゚)ξ「おっと!」


その足刈りをバック転でかわし、追いすがってくるハインを迎撃すべく刀を振るう。

12.
 ハインはツンの放った牽制打を跳ね上げ、猛攻をかけた。

斬撃の豪雨が降り注ぐ。


ξ;゚⊿゚)ξ「くそおお!!」


ハインの剣技は圧倒的な圧力をもってラッシュをかけ、ひたすら攻め続けるスタイルだ。

一度飲まれると防御に回る以外になくなり、これがどうしても破れない。


从 ゚∀从「チッ、しぶとさだけはホメてやる」


 不意を突いたハインの中段蹴りがツンの脇腹を捕らえた。


ξ >⊿<)ξ「がっ!!」


体勢が浮いたところでハインはツンの刀を絡め取った。

手の中からすっぽ抜けて宙に跳ね上がる。


ξ;゚⊿゚)ξ「あっ、しまっ……」
13.
从 ゚∀从「ちょっと痛いぜ」


 ハインのトーキックがツンのみぞおちに突き刺さる。

杭に貫かれたような衝撃が胴体を駆け抜け、ツンは思わず体をくの字に折った。

腰を引いて頭を下げたところで、踵落としが後頭部に落ちてくる。


ξ >д<)ξ「フギャッ!!」


ツンは頭から床に突っ込んだ。

タイルが砕け散り、コンクリートに顔面がめり込む。


从 ゚∀从「手間取らせやがって」


二刀を逆手に持ち、床に顔を突っ込んでいるツンの背中に突き立てる。

 だが寸前でツンは両手を床に突き、顔を引っこ抜いて地を蹴った。

下半身を持ち上げて逆立ちする姿勢になり、相手の顔面に蹴りを放つ。


14.
从;゚∀从「がっ!?」

ξ#゚⊿゚)ξ「顔ばっか狙いやがって、お返しだこのやろー!」

从 ゚∀从「クソッ、ふざけた奴だ!」


ツンは真っ直ぐ立って構え直したが、すでに逃げ腰だ。

そこに妹者が寄ってきて耳打ちする。


ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと勝てないかも……刀も取られちゃったし」

l从・∀・ノ!リ人「突破口がわかったのじゃー。ツン、お前、音楽は得意かえ」

ξ ゚⊿゚)ξ「え?」

l从・∀・ノ!リ人「いいかえ、奴のラッシュはリズムなのじゃー。

         拍子をランダムに組み合わせることでこちらのタイミングをズラしているのじゃ」

ξ;゚⊿゚)ξ「カラオケは得意だけど……」

l从・∀・ノ!リ人「リズムを掴めばラッシュを打ち破れるのじゃー。

         頭の中にメトロノームを用意するのじゃ!」

15.
ξ ゚⊿゚)ξ「わ、わかったわ」


 ツンは深呼吸し、体の内側を静寂で満たした。


从 ゚∀从「作戦会議は終わったかい? 俺もそろそろ帰らないと、明日の仕事に響くんでね」

ξ ゚⊿゚)ξ「有給を取ってもらうわ。永遠にね」

从 ゚∀从「フン」


ラッシュをかけてくるハインに対し、ツンは素手のまま迎え撃った。

つま先でタンタンと床を叩き、リズムを取る。


从 ゚∀从「おおおお!!」


左右の刀で順番に斬り付けてくる。

右、左。右、左。


ξ ゚⊿゚)ξ(二拍子)

16.
ツンはダンスをするように軽やかにステップを踏み、風に凪ぐ柳のようにラッシュを掻い潜った。

右、左、左。右、左、左。左、右、右。

右、左。右、左。


ξ ゚⊿゚)ξ(三拍子、二拍子)


頭の中のメトロノームがリズムを刻み、それに従って攻撃を読む。

ハインが苛立ってくるのが手に取るようにわかった。


从#゚∀从「クソッ、フニャフニャと……」

ξ ゚⊿゚)ξ(三拍子、二拍子、二拍子、三拍子)


床に落ちていた自分の刀のところまで来ると、ツンは隙を突いてそれをつま先で蹴り上げた。

手に取ってそれで相手の斬撃を防ぐ。


ξ ゚⊿゚)ξ(相手をダンスのパートナーみたいに呼吸を合わせて……

      拍子と拍子の変わり目を突けば……)
17.
ツンが一刀にも関わらず舞うように二刀をいなすと、徐々に攻守が入れ替わってゆく。

とうとうハインは追い詰められ、壁に背がぶつかった。

 ツンは切っ先をその喉元に向けた。


从;゚∀从「ぐっ!?」

ξ ゚⊿゚)ξ「ハイパーメタボリックエンジェルを甘く見たわね」

/ ,' 3「ハイン……!?」


 部屋の入口に荒巻が姿を現した。

ツンの意識がそっちに向いた瞬間、ハインは彼女の刀を弾き上げた。


ξ ゚⊿゚)ξ「!?」

从 ゚∀从「バカめ! 死……」


二刀を振りかぶった瞬間、ツンは間合いを詰め、相手の両腕の肘あたりを脇の下に抱え込んだ。


从;゚∀从「ね!?」
18.
ξ ゚⊿゚)ξ「カロリィィ……!!」


 全身の熱が高まり、体が内側から弾け飛びそうになる。

床のタイルがカタカタと震え、めくれて浮かび上がった。

ツンは怒号と共にすべてを解放した。


ξ ゚⊿゚)ξ「クラッシュ!!」


ツンの周りを取り囲むように白いエネルギーが炸裂し、すべてが閃光に包まれた。

 すべてが収まった時、床のコンクリートに出来たクレーターに立っているのはツン一人だった。

脇の下に灰になりかけた背広の袖だけが残っている。


l从・∀・ノ!リ人「寸前に脱したかのう」


窓の一つが外側に向かって割れている。

ハインはあそこから飛び出して逃れたらしい。


19.
ξ;´⊿`)ξ「ちぇ、逃がしたかー。顔二回も蹴られたのに」

/ ,' 3「今のはハインか?」

ξ ゚⊿゚)ξ「え? うんと、そう」

/ ,' 3「そうか……」


彼の胸中を何が駆け巡っているのだろう。

ツンは部屋の出口へ彼を促した。


ξ ゚⊿゚)ξ「行きましょ。仕事が残ってる」

/ ,' 3「うむ」


 階下へ向かう途中、社長室らしき部屋の前を通りかかった。

奥に金庫がある。


ξ ゚⊿゚)ξ「……」

/ ,' 3「どうした?」

20.
ξ ゚⊿゚)ξ「先行ってて。後からすぐ行くわ」

/ ,' 3「急げよ。あと五分からそこらで爆破するからな」

ξ;゚⊿゚)ξ「ば、爆破……わかったわ」


荒巻が行ってしまうと、妹者が怪訝な顔をした。


l从・∀・ノ!リ人「何か用でもあるのかえ」

ξ ゚⊿゚)ξ「ゆうたろうさんはさー、火災保険に入ってなかったみたいじゃない?」


ツンは金庫の方を視線で差した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 路上に停めておいたワゴン車に乗り込み、一同はその場を離れた。

いくらか離れたところで、腕時計を気にしていたアサピーが顔を上げる。


(-@∀@)「そろそろ導火線が尽きる」

21.
と、言うと同時に後ろでラウンジ商工ビルの複数の階層で窓ガラスが内側から吹っ飛んだ。

地響きを伴う爆音が炸裂し、衝撃波がびりびり空気を震わせるのがここまで感じられた。

 
(=゚д゚)「ハッハー! やったぜ」

<゚Д゚=>「イヤッホーウ!」


トラギコ・ギコタイガー兄弟がハイタッチをかわし、ぼるじょあが口笛を吹く。


(;=゚д゚)「いて、いててて!」

<゚Д゚=>「バカ、腕怪我してんだろ」

(=゚д゚)「お前が馬鹿力なんだよ!」

(-@∀@)「これでしばらくは時間を稼げる筈だ。やりましたね、おやっさん」

/ ,' 3「うむ、散った仲間を掻き集めてシマを奪回するぞ。忙しくなるわい」

( ・3・)「残念。祝宴はまだ先か」

/ ,' 3「嬢ちゃん、どこで下ろす?」

ξ ゚⊿゚)ξ「ここでいいわ。屋根の上走ってくから」
22.
 ぼるじょあが車を止めると、ツンは男臭い車内から降りた。


ξ ゚⊿゚)ξ「これから連中、あなたたちを探すのに血眼になるわよ。気を付けてね」

/ ,' 3「お互いにな。お前さんにゃ本当に世話になった」

ξ ゚ー゚)ξ「いいってのに。お兄さん方もまったねー」


チュッと唇を鳴らして愛想を振り撒く。

男らは彼女の大人びた仕草に呆れつつも笑い、手を振った。


<゚Д゚=>「おうよ」

( ・3・)「またな」

(=゚д゚)「色々ありがとよ」

(-@∀@)「これを持っててくれ」


アサピーが携帯電話をくれた。


ξ*゚⊿゚)ξ「わお。くれるの?」
23.
(-@∀@)「協力が必要な時は遠慮なく電話してくれ。いつでも駆け付けるぜ」

/ ,' 3「料金はこっちで持つが、あんまり無駄話するんじゃあないぞ」

ξ ゚⊿゚)ξ「ありがとー、ケータイ欲しかったのよー。じゃあね!」


彼女は近くの建物の屋根に飛び乗って姿を消した。

 彼女を見送ってから、アサピーが呟いた。


(-@∀@)「何者なんでしょうかね、彼女」

/ ,' 3「さあな。しかしF.O.Gの裏の支配者ってのが気にかかる」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 少し離れた場所でハインもまた、ビルが燃え上がる光景を見ていた。

上着はなく、Yシャツ姿だ。


从 ゚∀从「……」


24.
どこかでパトカーと消防車のサイレンが聞こえる。

ハインは舌打ちした。

 そこにフィレンクトが運転する車が滑り込んでくる。


(‘_L’)「社長」

从 ゚∀从「この借りは必ず清算するぞ、荒巻め」


ハインが乗り込むと、フィレンクトは車を出した。

ノロノロと進み始める。


从 ゚∀从「どうした? もっとスピードを出せ」

(;‘_L’)「そ、それがちょっと、強くアクセルを踏み込めないもので。イタタ」


妙に内股で彼は答えた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


25.
 翌朝。

ベッドから起き上がろうとしたツンは呻き声を上げた。


ξ;゚ з゚)ξ「ふっ、ふおおお……!」


油が切れてるみたいにギシギシした動きだ。

全身の骨という骨、筋肉という筋肉が猛烈に痛む。


l从‐∀・ノ!リ人「ん、おはよーなのじゃー、ツン……ってお前、何やってるんじゃ?」

ξ;´ з`)ξ「き、筋肉痛ぅぅう!! こんなの久し振りだわー」

l从・∀・ノ!リ人「あー、昨日はかなり無理したからのう」

ξ ゚ з゚)ξ「い、痛い痛い痛い! いたたたた、いたたたたたた!!」


ベッドから這い出す事には成功したが、まっすぐに立つことが出来ない。

ツンは床に腹這いに倒れた。


ξ;´ з`)ξ「ぐえっ。が、学校に行かなければ……」
26.
l从・∀・ノ!リ人「無理するでないのじゃー。休んだ方がええ」

ξ;´ з`)ξ「約束があるのよー、どうしても行かなきゃ」

l从・∀・ノ!リ人「約束?」

ξ ´ з`)ξ「そーそー、荒巻さんとしたでしょー」

l从・∀・ノ!リ人「……ああ、あれかえ」

ξ;´ з`)ξ「ところで妹者ちゃん、ちょっと薬取ってきてー」

l从・∀・ノ!リ人「しゃあないのう、どこなのじゃ」

ξ ´ з`)ξ「わたしの机ん中。アンメルツってやつ」


 妹者はふよふよと机まで飛んで行き、引き出しを開いて中からそれらしきものを取り出した。

彼女から受け取った薬を体中に塗りたくる。


ξ;´ з`)ξ「よし、これで何とか立って歩くくらいは……うぐぐっ!?」


着替えようと腰の動きを変えたらまた痛みが。

ツンはその姿勢のまま固まった。
27.
l从・∀・ノ!リ人「延期した方がいいんじゃないかえ」

ξ;´ з`)ξ「そうはいきません。わたしも最近、任侠道に目覚めたので約束は破れぬわ!」


 とにもかくにも身支度を済ませ、朝食を摂る。

テレビでは昨日の夜の事件がやっていた。


(#゚;;-゚)『滝川クリスでぃルです。昨夜起きたラウンジ商工ビル爆破事件の続報をお伝えします。

     このビルは犯罪組織F.O.Gの麻薬工場だったという情報が……』


 家を出て交差点のところでクーと合流する。

彼女は出会い頭にツンの肩を叩いた。


川 ゚ -゚)「波打つ脂肪! めり込む地面! おはようツン!」

ξ ゚ з゚)ξ「ホゲェエ!!」


全身を電流のように苦痛が駆け抜け、悲鳴を上げる。

前衛芸術家が苦悶を現してるみたいなポーズでピクピクするツンにクーは怪訝そうな顔をした。
28.
川 ゚ -゚)「なんだ、新しいギャグか?」

ξ;´ з`)ξ「ちょ、ちょっと筋肉痛でさー」

川 ゚ -゚)「そうか。それはそうと肩揉んでやろう」

ξ;゚ з゚)ξ「フギャアアア、ヒギイイ! や、やめてえええ!!」

川 ゚ -゚)「どうせあれだろ、痩せようと無駄な努力をしたんだろ」

ξ;´ з`)ξ「そ、そんなとこ。ところで今日なんか予定ありますかい」

川 ゚ -゚)「ないけど。デートするか?」

ξ ´ з`)ξ「一緒にどっか行こうよ」

川 ゚ -゚)「ところでこのへんに便秘に効くツボがあるそうだ(グリグリ)」

ξ;゚ з゚)ξ「らめええええ!!」


 途中、ゆうたろうの店の前を通りかかった。

店主がスーツ姿の男と一緒に焼け跡を眺め、見取り図を手に何か話している。


ξ ´ з`)ξ「おはよーございまっす」

29.
| ^o^ |「ぐーてんもるげん」

川 ゚ -゚)「ん、建て直すことにしたんですか」

| ^o^ |「ええ じつ は F.O.G の ひとたちが おかね を くれたのです」
  
川 ゚ -゚)「え? そりゃなんでまた」

| ^o^ |「“反省してます F.O.Gより”という てがみ といっしょに だんぼーるばこ に

      つめこまれた さつたば が いえ のまえ に おいてあったのです

      渡辺ベーカリー でも おなじようなこと が あったそうです」

ξ ´ з`)ξ「あーそりゃきっと悔い改めたんだよ、ダミー会社が爆破されたとか朝のニュースで

         やってたじゃない。暴力は何にも生まないと気付いたんだね」

川;゚ -゚)「そ、そうか……?」

ξ ´ з`)ξ「いい話だわー」

| ^o^ |「とにかく たすかりました これ で おみせ が たてなおせます」


 もちろんそれはツンが金庫から持ち出した金だ。

クーは納得してない顔だったが、ツンは素知らぬ素振りをした。
30.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 放課後。

一度家に帰ったツンは自転車に乗り、クーの家に行った。

クーを自転車の後ろに乗せて郊外に向かう。


ξ;´ з`)ξ ゼェゼェ「こ、これはキツイ!」

川 ゚ -゚)「代わるか?」

ξ;´ з`)ξ「いや、もうちょいだから」

川 ゚ -゚)「どこへ行こうってんだ?」

ξ ´ з`)ξ「いいとこなんだよー」

川 ゚ -゚)「そうか。まあ好きにしてくれ」


 周囲の風景から建物の数が減り、田園や造成地が目立ち始めた。

空気に何かの果実の香りが溶けている。

 目的を目前にしてツンはとうとう力尽きた。
31.
ξ;´ з`)ξ「ご、ごめん。やっぱ代わって……」

川 ゚ -゚)「ん。どきな」


二人は担当を交代した。

ツンを後ろに乗せ、クーが漕いで走り出す。


川 ゚ -゚)「ドナドナドーナードーナー♪ 子豚をのーせーてー」

ξ;´ з`)ξ「その替え歌やめて下さい……」

川 ゚ -゚)「ドナドナドーナードーナー♪ ペダルがおーもーいー」


郊外に入って一時間ほど経ち、二人は果樹園の前にやってきた。

木製のアーチがかかり、果樹園の名前が書かれているのだが、かすれていて読めない。


ξ ´ з`)ξ「ここ、ここ」

川 ゚ -゚)「ここは……」

ξ ´ з`)ξ「奥で人が待ってんのよー。行ってあげて、待ってるから」

32.
川 ゚ -゚)「ん」


 クーは自転車を降り、果樹園に入って行った。

あたりにはオレンジの木が立ち並んでいて、濃厚な果物の香りがする。

風の中に溶けているその爽やかな香りに、クーは記憶がよみがえるのを感じた。


川 ゚ -゚)「……」


オレンジ畑の一番奥のはずれに開けた場所があって、離れた場所に一つだけポツンとオレンジの

木が生えている。

まだ若木だが力強く成長していて、すでに小さな果実も付けていた。


/ ,' 3


木を前にしてクーに背を向けていた男が振り返る。

彼は笑い、また若木の方に向き直った。


33.
川 ゚ -゚)「荒巻さん」

/ ,' 3「もう10年も前になるか、お前とここで初めて会ったのは……

    何にも変わっとらんのう」

川 ゚ -゚)「その木は?」

/ ,' 3「ハハハ、おぼえてないか」

川 ゚ -゚)「ここにあなたと一緒に来たことがあるのは覚えてるよ」


クーはあたりを見回し、ちょっとムキになって答えた。


川 ゚ -゚)「四つか五つの時だったかな。いきなりでかい車でわたしんちに来て。

     わたしはあなたが最初怖かったよ」

/ ,' 3「そりゃお互い様だ。わしだって怖かったさ」

川 ゚ -゚)「え? わたしのことが?」


荒巻は振り返り、クーと向かい合った。苦笑している。


34.
/ ,' 3「お前がわしを憎んでるんじゃないかってな。内心ビクビクしとった」

川 ゚ -゚)「……」

/ ,' 3「わしゃ若い頃にさんざん女を不幸にしてな。

    少しでもその埋め合わせをせにゃならんと努力してきたつもりだった。

    結果はまあ、見ての通り。わしゃどうも、何て言うか……」


笑みに自嘲が混ざる。


/ ,' 3「とにかく下手なのだ。そういうのが」

川 ゚ -゚)「母さんも言ってたよ。不器用だって」

/ ,' 3「ペニサスか。あいつも変わらんのう、おてんばなお嬢ちゃんのままだ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 スコープ内の照準に荒巻のこめかみが重なる。

草むらにひざまずいて狙撃銃を構えた男はほくそ笑んだ。

35.
<ヽ`∀´>(ホルホルホル、尾行した甲斐があったニダ。

      自分から人気のない場所に来てくれるとは)


用心金の外に置いておいた指を引き金にかける。

安全装置を外し、引き金を絞ろうと指先に僅かに力を込めた時……


<ヽ`∀´>(他の連中には悪いが出世はウリが頂きニダ! 死……)


突然、スコープ内の視界を何かが遮った。

巨大な目玉がこっちを見ている。


<ヽ`∀´>「ニダッ!?」

ξ ‐⊿゚)ξ


しゃがみ込んでスコープを反対側から覗き込んでいるツンがそこにいた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

36.
 果樹園を突き抜け、オレンジの葉を舞い上げながら、上空に向かって黒服姿の男が跳ね上がる。


<ヽ゚A゚>「ドクトォオ―――ッ!?」


頂点に達し、そしてまたすぐ森の中に落ちた。

 クーは一瞬何か聞こえたような気がして振り返ったが、すでに男は樹木の狭間に没している。


川 ゚ -゚)「……?」

/ ,' 3「どうした?」

川 ゚ -゚)「ううん、何でもない。

     それでその車にわたしと母さんを乗せて、ここへ連れて来てくれたんだよね」

/ ,' 3「ああ。何か一つくらい、お前たちに形があるものを残してやろうと思ってな。

    ちょうどこの果樹園が売りに出されてたワケよ」


荒巻は広場の隅にある、ボロボロに腐食した木のテーブルと椅子の方へ行った。


/ ,' 3「憶えてるか? ここで一緒にもいだオレンジを食べたじゃろ」
37.
川 ゚ -゚)「うん。酸っぱかった」

/ ,' 3「あれからかなり品種改良したぞ。まだ収穫の季節じゃないが」


 クーの脳裏にあの日のことが更にくっきりと浮かび上がってきた。

まだ髪が真っ黒だった荒巻と一緒にここでオレンジを食べた。

会話は途切れがちでお互いに本当に気まずくて、でも荒巻は精一杯の優しさを見せていて……


川 ゚ -゚)「……」


クーは荒巻の隣へ行き、若木の前にしゃがみ込んだ。

―――オレンジを食べた後、自分は種の一つをここに埋めたんだ。


川 ゚ -゚)「これ、あの時の……」

/ ,' 3「ちゃんと育ったな」

川 ゚ -゚)「そっか。すっかり忘れてた」

/ ,' 3「お前との思い出の証だからな。ずっとこれがわしの宝物だった」

38.
川 ゚ -゚)「……」


―――この木、どのくらい大きくなるかな?

―――さあな。お前が嫁に行く頃には一つか二つくらい実が取れるようになるかのう


そんな会話を交わした記憶がある。

 カーン、カーンとどこかで何かを連続的に打ちつけている音がした。


/ ,' 3「おお、キツツキだ」

川 ゚ -゚)「え? こんなとこに?」

/ ,' 3「ああ、益鳥ってヤツよ。木に付く虫を食ってくれる」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 そのちょっと離れたところ。


ξ#゚⊿゚)ξ「あんた、みたいな、陰険、野郎、は」

39.
カーン、カーン、カーン、カーン。

地面に腰まで埋まった男の頭を、逆さに持った狙撃銃でぶっ叩く。

まるで杭打ちだ。


<ヽ;A;>「あだっ、だっ、だっ、でっ」

ξ#゚⊿゚)ξ「ここで、埋まって、肥料に、なりなさい!!」

l从・∀・ノ!リ人「お前ほんとにスナイパー嫌いじゃのう」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 荒巻は果樹園の入り口までクーを送った。

途中、地面に埋もれ、頭だけ地上に出して眼を回している男を目撃する。

頭がタンコブだらけだ。


<ヽ×∀×>

川;゚ -゚)「うわっ、何やってんだあの人」

40.
荒巻はその顔に見覚えがあった。

クーを救出しにF.O.Gの溜まり場を襲撃した時に見た顔だ。

思わず身構えたが、そばに落ちている狙撃銃はくの字にひん曲がっている。


)))ξξ゚)


視界の隅で見覚えのあるツインテールが揺れ、木々の狭間に消えた。


/ ,' 3(やれやれ、山ほど貸しを作ってわしを破産させる気か?)

川 ゚ -゚)「どうしよう?」

/ ,' 3「ああ、ありゃ一種の健康法だ。ああする事により大地のパワーを吸い上げとるのだ」

川;゚ -゚)「え、でもなんかタンコブ出来てるし……」

/ ,' 3「邪魔しちゃ悪いわい。行こう」

川 ゚ -゚)「ああ、うん」


彼女を半ば強引に引っ張って入口へ向かう。

41.
 アーチの下にツンの姿はなかった。

自転車を置きっぱなしでどこへ行ったのだろう。


川 ゚ -゚)「あれ、友達が連れて来てくれたんだけどな」

/ ,' 3「トイレでも行ったのかのう」


眼が届く場所には見当たらず、すぐには戻って来そうにない。

クーはこの時間を利用することにした。


川 ゚ -゚)「わたしはあなたを憎んでなんかいなかった」

/ ,' 3「……」

川 ゚ -゚)「今のわたしの生活があるのは荒巻さんのおかげだし。

     でも、頭のどこかであなたを父さんとは認められなかった」


間の悪いところでツンが走ってきた。


ξ ´ з`)ξ「ごめんごめん、トイレが見つかんなくってさー」
42.
川 ゚ -゚)「中学生にもなって野良ションはよせ」

ξ;´ з`)ξ「してませんって。我慢するからいいよ」

/ ,' 3「よう」

ξ ´ з`)ξ「こりゃどーも」


二人の様子にクーは笑った。


川 ゚ー゚)「二人で共謀したな?」

ξ ´ з`)ξ「何の事やら。ねー?」

/ ,' 3「ああ。そうそう、土産をやらんとな」


荒巻はポケットからチケットを二枚取り出し、二人に渡した。


ξ*´ з`)ξ「ニューソクホテルのケーキバイキング無料招待券ですとー!」

/ ,' 3「二人で行ってくれ。わしゃ甘いもんは苦手だ」

ξ*´ з`)ξ「いやーん、おじさまありがとー」

43.
川 ゚ -゚)「ありがと」

/ ,' 3「うむ。またな」


 帰りもツンが後ろに乗り、クーが漕ぐことになった。

サドルに腰を下ろし、クーはふと荒巻に振り返った。


川 ゚ -゚)「あなたのことはまだ父さんとは呼べないけど、また会いに来てくれる?」

/ ,' 3「ああ。いつかな」

川 ゚ -゚)「ありがとう、荒巻さん」


自転車は快調に滑り出し、二人の姿が遠くなる。

荒巻がその姿を見送っていると、アサピーの運転する車がやってきた。
 

(-@∀@)「どうでした?」

/ ,' 3「一歩前進ってとこかのォ」

(-@∀@)「戻りましょう。今日から一週間はほとんど眠れませんからお覚悟を」

44.
/ ,' 3「やれやれ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 クーは途中、自転車を立ち漕ぎし始めた。

後ろにツンという重しを乗せているのにどんどんスピードが上がる。


ξ;´ з`)ξ「ちょっとちょっと、そんなに急がないでもケーキは逃げないよー!?」

川 ゚ー゚)「ふふ、くっくく……」


クーは何かがおかしいらしく、笑いを堪え切れないでいる。


川 ゚ー゚)「わたしは今全力で自転車を漕ぎたいんだ! イヤッホー!」

ξ;゚ з゚)ξ「ヒィィ、この先は下り坂だよー!」




つづく……


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