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ハイパーメタボリックエンジェルズのようです #8

 繰り返すけどこの物語のハインは男設定です。

1.
 放課後、ツンは学校のパソコン実習室に寄っていた。

パソコン研究部の部員に教わりつつ、何とか2chを開いてPC板にアクセスする。


ξ;´ з`)ξ「えーとえーと、ハンドルとか言ってたなー。ハンドルってなんだー」

(゚n゚*@「ハンドルってのは名前のことだよ。何て人探してんの?」

ξ ´ з`)ξ「TORAGIKOって人なんだけど」

(゚n゚*@「ページ内検索すりゃ一発だ。んー……」


すぐに下の方に一つ、該当する書き込みが見つかった。





ハイパーメタボリックエンジェルズのようです

#8 霧幻の心臓




2.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――


573.TORAGIKO ID.giko834n30

○月×日 夜9時
こないだ話したとこに行くぞ
場所はわかってるな?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(゚n゚*@「これだな。どういう意味だ?」

ξ ´ з`)ξ「うんと、何でもないの。色々ありがとう、名も知らぬAAさん」


パソ研部員が向こうに行ってしまうと、ツンはとあるビルの名前をgogleで検索した。

出てきた住所を更にgogleアースに打ち込み、表示された地図を記憶して閉じる。

 隣のパソコンでは一緒についてきたクーがネットオークションを覗いている。


川 ゚ -゚)「見ろツン、乗馬用ムチだ。これがあったら毎日が楽しくなると思わないか?」

3.
ξ;´ з`)ξ「いや、あんまり」

川 ゚ -゚)「じゃあこっちの象使いの棒ってのは? でも20万円は暴利だな」

ξ;´ з`)ξ「そんなもんどうする気ですか……」


 部員に改めて礼を言い、学校を出る。


川 ゚ -゚)「しかし何だって急にインターネットなんか始めたんだ?」

ξ ´ з`)ξ「情報化社会に適応すべくスキルアップがライフハックだよ」

川 ゚ -゚)「よくわからんが、ケータイでだって出来るだろ」


クーは自分のケータイを見せびらかしたが、ツンは悲しげに首を振った。


ξ ´ з`)ξ「我が家はケータイ禁止なのよー。自分で料金払えるなら買えってさ」

川 ゚ -゚)「今や小学生だって2chに“釣り乙”と書き込む時代だってのに」

ξ ´ з`)ξ「ちぇー。うらやましいなあ……」

川 ゚ -゚)「ん、あれ見ろ」
4.
二人はゲームショップゆうたろうの跡地の前を通りかかった。

店主のゆうたろうが焼け跡に一人佇み、虚空を見つめている。


| ^o^ |


染み付いた思い出を回想しているのだろうか。

ツンは痛ましい思いをした。


ξ ´ з`)ξ「あ、ゆうたろうさん。かわいそーになー」

川 ゚ -゚)「このへん大分ガラ悪くなったよな。鼎心会の頃はまだ……」

ξ ´ з`)ξ「なに?」

川 ゚ -゚)「いや、なんでもない」


クーは口を閉じた。

 交差点のところでクーと別れた直後、ツンはまたも荒巻の姿を見つけた。

大衆車に乗り、ヤクザっぽくない地味な背広を着ているが、どうしたって目立つ男だ。
5.
ξ ´ з`)ξ「どーもどーも」

/ ,' 3「ん、嬢ちゃんか。良く会うのう」

ξ ´ з`)ξ「あれでしょ、クーちゃんに声かけらんなくてウロウロしてるんでしょ」

/ ,' 3「うぐっ。な、何故わかった」

ξ ´ з`)ξ「あれですよ、クーちゃんはそんなにパパさんのこと嫌ってませんよー。

         ただ距離感が掴めないでいるだけで」

l从・∀・ノ!リ人(わらわが言った事そのまんまなのじゃー)

/ ,' 3「う、う~ん、距離感か……どんなもんなのかのう」


ツンは苦笑して首を振った。


ξ ´ з`)ξ「押しが強いのは顔だけですなー」

/ ,' 3「よしてくれ。わしはデリケートなんだ」

ξ ´ з`)ξ「よろしい! このわたしが協力してしんぜよう」

/ ,' 3「……」
6.
ξ;´ з`)ξ「そんなあからさまに不安そうな顔するのやめてください」

/ ,' 3「まあ、プランだけでも聞こうか」


大仰な仕草で彼を指差し、ツンは断言した。


ξ ´ з`)ξ「ズバリ! 記念日を利用するのです!」

/ ,' 3「記念日って?」

ξ ´ з`)ξ「なんかあるでしょー、クーちゃんの誕生日とか発表会の日とかこう、

         かつて二人の思い出の接点となった日が」

/ ,' 3「うぬぅ」

ξ ´ з`)ξ「その日に何かイベントを仕掛けることにより“覚えててくれたんだ……”とこう、

         パパさんがクーちゃんのことを大事に思ってたって証明するのです!

         ダメ押しでプレゼントあげれば言うことナッシング」


強面にシワを寄せてより一層面構えを凶悪にしながら、荒巻は記憶を巡らせた。

7.
/ ,' 3「あいつは妾の子じゃからなあ。一緒にいた時間が少なくて……」

ξ;´ з`)ξ「そんな重大なことをサラリと言うのやめてください」

/ ,' 3「わしは本妻との間に子供ができなんでな。

    ……お、そう言えば記念日らしきものが一つあるぞ! しかも数日後だ」

ξ ´ з`)ξ「おお、まるでブーン系小説のように都合のいい展開」


しかし彼は表情を曇らせた。


/ ,' 3「ん、実はちょっと用事があってな。しかも帰って来られるかちょっとわからんのだが」


ツンはその用事というのが何なのか知っていた。

ツンとしてではなくハイパーメタボリックエンジェルとしてだが。

もちろん今は知らないフリをし、笑って見せる。


ξ ´ з`)ξ「何があっても“死ぬ気で生きて帰る”って頑張れば帰って来れますって」

/ ,' 3「そうか……ん、そうだな。色々助かったわい、悪かったな」
8.
ξ ´ з`)ξ「お礼は食べられるものでお願いしますね」

/ ,' 3「しっかりしとるのう。まあいい、任せとけ。

    ……ああ、それから一つだけ頼めるか?

ξ ´ з`)ξ「?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 その二日前。

濡れネズミになった一行は運転手が“借りて”きた車に乗り、隠れ家へ向かった。

廃工場の裏にあるプレハブ小屋で、見た目は廃屋にしか見えないが、中は快適に設えられている。

ちょっとした応接間ふうだ。


(=゚д゚)「まあともかくおやっさん、よくご無事で」

/ ,' 3「こんな背広しかなかったのか? 冴えんのう」


水に漬けてダメにしてしまったので代わりに安いスーツを調達したのだが、荒巻は不満そうだ。
9.
 部下の一人、全身が筋肉の巨漢が髪をタオルで拭いているツンの方を見る。


<゚Д゚=>「で、こっちのお嬢さんは?」

ξ ゚⊿゚)ξ「ハイパーメタボリックエンジェルです。よろしくね」

<゚Д゚=>「F.O.Gのアジトをぶっ潰して回ってるって奴か? あんたが?」


こんな小娘が、って顔だ。まあ無理もないだろう。

ツンはあまり気にせず、肩をすくめた。


/ ,' 3「この娘っ子のおかげで九死に一生ってとこだったわ。

    いやあ、本当に世話になったのう。おい、誰か着替えを用意せんかい」

(;=゚д゚)「女物はちょっと……」

ξ ゚⊿゚)ξ「あ、大丈夫。もう乾いたから」


ツンはぱりっとしたタキシードを手で軽く引っ張って見せた。


10.
ξ ゚⊿゚)ξ「特別製なの。ま、それはいいとして。

      荒巻さん、さっき言ったパソコンってのはこれなんだけど……」


ツンは頭からシルクハットを取り、中に手を突っ込んだ。

四次元的に繋がっている自分の部屋の机のあたりを探る。


ξ ゚~゚)ξ「えーと、確かこの辺に……あったあった」


F.O.Gの拠点で手に入れたノートパソコンを掴んで引っ張る。

シルクハットはゴムのように柔軟に変形し、パソコンを吐き出した。


(;-@∀@)「随分便利な帽子だな。それがそうなのか?」

ξ ゚⊿゚)ξ「ええ。F.O.Gの事務所でね。わたしパソコン得意じゃなくって……」


アサピーが受け取り、テーブルの上で開いた。

起動させてしばらくいじる。

11.
(-@∀@)「ん、パスワードがかかってるな」

ξ ´⊿`)ξ「なんてこったい、せっかく苦労して手に入れたのに」

(=゚д゚)「待った。俺に見せてくれないか」


アサピーは机の上でパソコンの向きを変え、部下の一人の方にやった。

筋肉男と対照的に知的な雰囲気を漂わせている。


(=゚д゚)「これなら解析出来るかも」

/ ,' 3「ん、お前はハッキングが専門だったな」

ξ ゚⊿゚)ξ「電脳極道か」

(-@∀@)「時代の流れってやつさ。どうだ?」

(=゚д゚)「しばらくかかるな」


彼が解錠を試みている間、ツンはソファに腰かけて荒巻に向き直った。


ξ ゚⊿゚)ξ「荒巻さん、F.O.Gのことを教えてくれない?」
12.
/ ,' 3「うむ。お前は何故連中を追う?」

ξ ゚⊿゚)ξ「訳あって血の霧を追ってるんだけど……でも、連中のやり方が単純に許せないの」


店を焼かれたゆうたろうの姿が瞼に浮かぶ。

ツンは今初めて、自分自身の胸の内に痩せること以外に戦う理由があることに気付いた。


ξ ゚⊿゚)ξ「わたしはこの町が好きなの。パン屋さんもゲーム屋さんもみんな好き。

       言うこと聞かないからって人んちに火付けたりするような連中は許せない」

/ ,' 3「まあ、あんたにはわし自身はもちろん、クーを助けてもらった義理もある。

    話さんわけにはいくまい」


荒巻は重い口を開いた。

    テイシンカイ
/ ,' 3「鼎心会という組織については?」


ツンはクーがその名を口にしていたことを思い出した。

13.
ξ ゚⊿゚)ξ「えっと……名前だけならどっかで聞いたわ」

/ ,' 3「うむ、改めて自己紹介させてもらうと、わしは荒巻スカルチノフ。鼎心会の会長だった」

ξ ゚⊿゚)ξ「だった?」


壁に背を預けて立っていたアサピーが補足を入れる。


(-@∀@)「もうわかってると思うが、暴力団ってやつだ。

      ついこないだまでVIPニュータウンを仕切ってた」

/ ,' 3「極道、任侠などと気取っていても確かにわしらはヤクザ者よ。

    だが我々には三つの鉄則があった。絶対の掟が」


荒巻は棚の上に飾ってある壷に目をやった。
                        カナエ
三つの足で胴体を支える中国製の壷で、鼎と呼ばれるものだ。





14.
/ ,' 3「一つ、堅気の衆に手を出さぬこと。一つ、麻薬を扱うべからず。

    そして任侠として男の名に恥じぬよう生きるべし。

    この三つの心構え、すなわち鼎心が組織を支えていた」

ξ ゚⊿゚)ξ「支えてたって、実際はどんな商売してたの?」


 荒巻は視線を反らし、言い淀んだ。


/ ,' 3「あ、あー……えーと、アミューズメントパーク、のようなものを経営したりしてな。

    トランプとかルーレットとか、そんなので遊ぶようなところを」

(;-@∀@)「極端に薄着なお姉さんがいるマッサージ店、のようなものの面倒を見たり……とか」

( ・3・)「本物ソックリのブランド品を格安でご提供したりな」


“借りた”車を返して来た運転手、ぼるじょあが付け足し、ついでに買い込んできた食糧を冷蔵庫に詰め始めた。


ξ;゚⊿゚)ξ「へ、へえ……そうなんだ」


15.
/ ,' 3「あんたにはわかってもらえんかも知れん。

    だが我々には我々のルールがあり、世の道を外れても男の道だけは外れちゃいなかった

    つもりだ。だが……」


荒巻はため息をついた。

アサピーが彼の心中を察したらしく、目を伏せて後を継ぐ。


(-@∀@)「ある日、ある男がそのルールの一切を変え始めた。

      うちの組織の若頭筆頭で、頭がキレることに関しちゃ右に出る奴ぁいなかったが」

/ ,' 3「うむ……」


荒巻が構わんから続けろ、という顔をする。

アサピーは頷いた。


(-@∀@)「とにかく欲深い野郎でな。頭ん中にあるのは自分が頂点に立つ事だけだった。

      おやっさんは度々諭したが、そいつは受け入れやしなかった」
16.
ξ ゚⊿゚)ξ「誰なの?」

/ ,' 3「ハイン。わしの義理の息子だ」

ξ;゚⊿゚)ξ「!!」

/ ,' 3「盃を交わして結縁した仲だから血は繋がっちゃいない。元は孤児でな」

(-@∀@)「あの野郎は本物の親以上に良くしてくれたおやっさんを裏切りやがったんだ。

      奴はやがて麻薬に手を出して、おやっさんもとうとう絶縁するしかなくなった」

/ ,' 3「それがもう半年以上も前になるか……」

(-@∀@)「それからだ、F.O.Gが町に現れるようになったのは。

      麻薬、人身売買、恐喝、何でもありの連中はたちまち巨大化した」

<゚Д゚=>「“虎二匹は一つの森に住めない”」

(-@∀@)「そうだ。当然のごとくシマの奪い合いで抗争が始まった。

      我々はしばらくは持ち応えたが、向こうの物量にゃ適わなかった」

ξ ゚⊿゚)ξ「それからどうなったの?」


17.
(-@∀@)「潰されたさ。仲間はみんなやられるかF.O.Gに寝返った。

      あんたが戦ったフィレンクトの奴だって元はウチのもんだったんだぜ」

/ ,' 3「ここにいる奴らは鼎心会の生き残りでな。いずれも連中に屈さぬ反骨の士ばかりよ」

(=゚д゚)「どうも」

(-@∀@)「光栄です」

ξ ゚⊿゚)ξ「そっか、F.O.Gは鼎心会を根絶やしにしようとしてるのね?」

/ ,' 3「うむ。全滅させねば枕を高くして眠れんのだろうよ」

ξ ゚⊿゚)ξ「なるほどねー……」

/ ,' 3「ハインが今のF.O.Gのトップであることは間違いない。

    状況は圧倒的に不利だが、わしらは諦めんぞ。窮鼠の意地を見せてくれる」


 これでだいたいのところは納得が行った。

ツンは自分の膝の上に座っていた妹者に聞いた。



18.
ξ ゚⊿゚)ξ「ミストライダーはF.O.Gを使って血の霧を町にバラまいてる、と。

      でもお金と町の支配だけが目的じゃないんでしょ?」

l从・∀・ノ!リ人「奴が求めているのは血の霧によって叶えられる欲望のエネルギーなのじゃ」

/ ,' 3「うお!? しゃ、喋った……」

(;-@∀@)「人形じゃなかったのかそれ!?」

ξ ゚⊿゚)ξ「あーいえ、お気になさらず。こういう人なんです」

l从・∀・ノ!リ人「そういうわけなのじゃ。納得しとくのじゃー」


まったく納得してない様子で頷く彼らにそっぽを向け、妹者は続けた。


l从・∀・ノ!リ人「奴はかつてわらわに深手を負わされ、傷を癒すために長い間眠っていたのじゃー。

         完全復活するのに必要なエネルギーを掻き集めてるのじゃ」

/ ,' 3「よくわからんがそのミストライダーと言うのがF.O.Gの裏の支配者なのか?」

l从・∀・ノ!リ人「そういうことのなのじゃー」

(-@∀@)「今のハインの雇い主ってワケか。どうせロクでもない奴なんだろ」
19.
l从・∀・ノ!リ人「そりゃもう、人知を超えたロクでもなさなのじゃー」


 パソコンに向かい合っていた男の歓声が彼らの会話を断ち切った。


(=゚д゚)「やったぜ! 突破したぞ」


一同、彼のところに集まり、背中越しに画面を見る。


<゚Д゚=>「どれどれ」

(=゚д゚)「どけよ。おやっさんが先だ」

/ ,' 3「うむ、どうだ?」


部下の一人、トラギコはモニタを指差した。

何かの搬出・搬入を記録した出納表のようだ。


(=゚д゚)「○月×日、ラウンジ商工ビルからCを十二箱搬出。各支部へ輸送」

<゚Д゚=>「C……何のことだ?」
20.
(-@∀@)「ラウンジ商工は確かF.O.Gのダミー会社の筈だ」


ツンがぽんと手を叩いた。

            クリムゾン
ξ ゚⊿゚)ξ「CってCRIMSONの略じゃない?」

( ・3・)「えと、つまりどっかから密輸してきて、このビルに保存してるって事か?」

l从・∀・ノ!リ人「いや、恐らくここで作ってるのじゃー」

(;・3・)「作ってる?! 麻薬をか?」

l从・∀・ノ!リ人「血の霧を作り出す装置があるのじゃー」

/ ,' 3「おチビさん、あんたの見立てではクリムゾンの製造工場はここだけだと思うか?」

l从・∀・ノ!リ人「それはないのじゃー。他にもいくつかあるじゃろ」
20.
ξ ゚⊿゚)ξ「保管場所だっていくつかに分けてたもんね。用心深いわー」

(-@∀@)「ここを潰してもさして意味がないって事か……」

/ ,' 3「いや」


21.
荒巻は腕を組み、顎ヒゲを撫でながらパソコンに背を向けた。


/ ,' 3「ここを潰せばF.O.Gは大騒ぎになるだろう。

    一時的にこちらには手が回らなくなる筈だ。その間に体勢を整える時間が作れる」

(-@∀@)「おやっさん」

/ ,' 3「やるぞ。起死回生の一撃となるかやも知れん」


男たちは目に見えて色めき立ち、掌に拳を打ち込んだり身震いしたりし始めた。


( ・3・)「へへへ、出入りか。久し振りだな」

<゚Д゚=>「やっとで反撃か! 待ちくたびれたぜ」

(-@∀@)「この人数で……なんて言っても無駄ですよね。わかった、やりましょう」

/ ,' 3「嬢ちゃん、あんたは……」


ツンは隠れ家のドアに向かっていた。


22.
ξ ゚⊿゚)ξ「日時が決まったら教えて。ご一緒するわ」

/ ,' 3「どうやって?」

ξ;゚⊿゚)ξ「あ、あー……えっと、どうしようかな」

(=゚д゚)「2chのPC板に自作スレの総合が立ってる。今14スレ目だったかな。

     そこにカキコするから小マメにチェックしろ。

     ハンドルは……んーと、TORAGIKOにすっか」

<゚Д゚=>「ラウンジ商工ビルの住所を調べとけよ。gogleアースを使え」

ξ ゚⊿゚)ξ「わかった。じゃあまた」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 時間は戻り、その日の夜八時半。

ツンは自分の部屋で右手を差し出し、意識を集中させた。


ξ ´ з`)ξ「メタボリックチェンジ!!」

23.
シルクハットとステッキを抽象化させたメダルの文様が浮かび上がって来て、手の甲から飛び出し、

光を放って炸裂した。

自分の体が砕けるような感覚があり、すぐに飛び散った全身がまた戻ってきて一か所に固まる。


ξ ´ з`)ξ三ξ ´⊿`)ξ三ξ -⊿-)ξ三ξ ゚⊿゚)ξ「―――!!」


スレンダーボディに再構築されたツンが光の中から現れた。

折れそうなほど細い腰と肩、ほっそりした顎、優美なカーブを描いて伸びる足。

身にまとった膝下丈のタキシードは体にぴったりフィットしていて、彼女のスタイルをより

美しく見せている。


ξ ゚⊿゚)ξ「愛、勇気、そして痩身! ハイパーメタボリックエンジェルとはあたしのことよ!」


頭に生えたウサミミをピクピク動かしてキメる。


l从・∀・ノ!リ人「誰に自己紹介し……いや、まあええ。行こうかえ」

24.
 ツンは部屋の窓から飛び出し、自宅の屋根に上がった。

眼を閉じて両手の人差し指をそれぞれこめかみに当てる。


ξ ‐⊿‐)ξ「えーっと、確か駅の近くであー行ってこー行って」


思い出しながら建物の屋根から屋根へと飛び移り、そのビルの近所へと向かう。

 目立たないように物影に潜み、ツンは荒巻たちの姿を探した。


ξ ゚⊿゚)ξ「まだ九時にはなってないよね。荒巻さんたちまだかな」


世間の会社はとっくに退社時間を過ぎているのに、ラウンジ商工ビルはまだぽつぽつと明かりが

点いている。

残業しているのだろうか。

 ツンは眼を閉じ、ウサミミに意識を集中させた。


ξ ‐⊿‐)ξ「誰かいるわ……こっちに来る、すごく近い……すぐそこにいる!」

25.
背後に回り込んだ男がいきなりツンに声をかけてきた。


/ ,' 3「おい、嬢ちゃん!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ひぎい!! あ、荒巻さんか。おどかさないでよ!」

/ ,' 3「いや済まん。立ったまま寝てるのかと思ってな」

ξ;´⊿`)ξ「もー、耳がキンキンするぅ」


ウサミミを手で掴んで顔の横に引っ張りながら、ツンはじんじんするのを堪えた。

 鼎心会の面々はすでに勢ぞろい(といっても六人だが)しており、それぞれ思い思いの武器で武装していた。

金属バット、ドス、刀、警棒、スタンガン。


ξ ゚⊿゚)ξ「わたしは屋上から行くわ」

/ ,' 3「うむ。わしらは下から上がって連中を挟み打ちにするか」

(-@∀@)「気を付けろ。見た感じまだかなり人が残ってる」


ξ ゚⊿゚)ξ「ええ、そっちも。じゃ、そろそろ行きましょうか」
26.
/ ,' 3「お前にゃ借りを作ってばっかりじゃのう」

ξ ゚ー゚)ξ「よしてよ。お互い自分の目的のために協力しあってんでしょ。じゃあね!」


ツンは屋上へと跳ね上がり、姿を消した。

 残された荒巻は二つの白鞘から刀を抜き、両手に構えた。

切っ先を下げたまま深呼吸し、ふと笑う。


/ ,' 3「若いころを思い出すのォ。毎日のようにヤンチャの限りを尽くしたもんだ」

( ・3・)「今もあんまり変わってないんじゃないですか」

(-@∀@)「いつも俺が後始末するところもね」

(=゚д゚)<゚Д゚=>「ハハハハ!!」


場の空気が砕け、しばし緊張が解れる。

しかしすぐに一同、表情を引き締めた。

 荒巻は腹の底から鬨の声を上げた。

27.
/ ,' 3「我ら鼎心会ここにあり!! 行くぞォォオ!!」

(=゚д゚)<゚Д゚=>(-@∀@)(-@∀@)( ・3・)「オス!!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ツンがひとっ飛びで屋上まで上がった時、下で誰かが車を正面玄関に突っ込ませるのが見えた。

激しい衝撃音、そしてガラス張りの入り口が砕け散る音。

車は一度バックして場所を開け、出来た穴に男たちが怒号を上げながら殺到する。


ξ ゚⊿゚)ξ「お。みんな張り切ってるな」

l从・∀・ノ!リ人「こっちも行くのじゃー」

ξ ゚⊿゚)ξ「よっしゃあ、負けてらんないぜ!」


 屋上の出入り口のドアを蹴り破ると、ツンは階下へ向かった。

ビルの中はすでに蜂の巣を突っついたような騒ぎになっている。


28.
(;`ハ´)「みんな落ち着くアル、本社に連絡するアル!!」

(゚q 。) ウボァウボァ

( `ハ´)「連中の狙いは製造所アル、バリケードを築いて時間を稼……」


廊下で右往左往するミストドールたちに指示を飛ばしていた男の背後に忍び寄り、ツンは肩越しに

横顔にそっと触れた。


( ゚パ)「!?」

ξ#゚⊿゚)ξ「そぉい!!」


そのまま横手の壁に頭から突っ込ませる。


( ゚パ)「ホゲェェエ!?」


ドゴン!

コンクリートを破って男の体は壁に突き刺さった。

29.
(゚q 。) ?!

ξ ゚ー゚)ξ「お邪魔するわよ。お構いなくって言いたいところだけど……」


ツンは身構えた。


ξ ゚⊿゚)ξ「今日のあたしはちょっぴり厚かましい気分! おもてなししてもらうわよ!」

(゚q 。)(゚q 。)(゚q 。) ウボァァァ―――!!


ミストドールたちの両腕が溶けて霧と化し、片刃の剣に変化して固まる。

 真っ先に真正面から突いて来た一体の攻撃を身を捻ってかわすと、ツンはその懐に入り、

相手の喉元と片腕を掴んだ。

一緒にダンスするようにしてくるりと回り、相手との位置を入れ替える。


(゚q 。)アッ!! ヤベッ!!

(゚q// 。)ウボァッ!?


30.
ちょうどツンの背後にいた一体が横一文字に斬りつけて来たところだ。

同士討ちになり、ツンのダンスのパートナーの胴体は真っ二つになった。


ξ#゚⊿゚)ξ「ほわちゃあああ!!」


 まだ霧に戻らず形をとどめ、腕の中に残っているミストドールの上半身を振り回す。

肩から脇の下、腰の後ろへと高速回転させながら巡らせる様は三節棍の使い手のようだ。


ξ ゚⊿゚)ξ「ホワッ、ホワァアア!!」


ミストドールの両腕の刃が飛び交い、斬撃の旋風が巻き起こって、ツンの周囲の敵は次々に

切り刻まれて行く。


(゚q// 。)(゚//q 。)(゚//q //。)


周囲のすべての敵を解体した頃には、腕の中のミストドールもが霧となって消える。

ツンはブルース・リーの真似をして震えて見せた。
31.
ξ ゚⊿゚)ξ「ホワァアア……!」

l从・∀・ノ!リ人「アホなことやっとる場合じゃないぞえ。製造所を探すのじゃー」


 とりあえず一番近い部屋のドアを開けて中に入る。

すべての窓にシェードが下りた部屋で、得体の知れない道具が並んでいた。

床には血の霧が立ち込め、真新しい血臭に似た臭いがかすかにする。


ξ;゚⊿゚)ξ「うわっ、臭い!」
                                  ムゲン
l从・∀・ノ!リ人「見るのじゃー。あれが血の霧製造装置、“霧幻の心臓”なのじゃー」


 灰色の陶器に似た質感の物体が台座に掲げられている。

見た目はまさに心臓で、血管のような大小のパイプがそこらじゅうにあり、本体がドクンドクンと

脈動するのに合わせて血の霧が噴き出していた。

パイプは更にゴムのチューブに繋がれ、大きなビンに貯められている。


ξ;゚⊿゚)ξ「き、きもっ! 動いてる!」
32.
l从・∀・ノ!リ人「あの血の霧に更に色々混ぜ物をし、適度に薄めて売ってるようじゃな。

         かさを増やすと同時に誰にでも受け入れられるようにのう」

ξ ゚⊿゚)ξ「そっか、みんながみんなクリムゾン飲んで暴走してたら商売にならないもんね」

l从・∀・ノ!リ人「うまいことを考えたものなのじゃー」


霧幻の心臓はドラムカンくらいの大きさがあり、部屋に全部で四つある。

 ツンは左手を持ち上げ、手の甲に意識を集中させた。

ステッキの紋章が入ったメダルが飛び出し、ポンと弾けて実物のステッキとなる。


ξ ‐⊿‐)ξ「……」


部屋の中央、四つの心臓をすべて見渡せる位置に立ち、腰にステッキを構える。

ツンは息を静め、やがて止めた。


ξ ゚⊿゚)ξ「ふんっ!!」


33.
銀光の糸が宙に引かれ、舞う。

仕込まれた刀をパチンとステッキの中に戻すと同時、四つの霧幻の心臓のそれぞれにピシッと

線が走った。

その線から縦、あるいは横にズレて床に崩れ落ちてゆく。


l从・∀・ノ!リ人「よし、これで大分時間が稼げるのじゃー」

ξ ゚⊿゚)ξ「荒巻さんの言う通り、連中をテンテコ舞いに出来るってわけね」

l从・∀・ノ!リ人「次の部屋に行くのじゃー、連中をサービス残業で過労死させるのじゃー!」

ξ ゚⊿゚)ξ「よっしゃー」


バラバラになって床に落ちた霧幻の心臓はブスブスと泡立ちながら煙を上げて溶け、床に

吸い込まれて行った。

 部屋を出たツンが次のドアに行こうとした時。


ξ ゚⊿゚)ξ「……」

34.
ツンは廊下の真ん中で立ち止まった。

妹者が怪訝そうな顔をする。


l从・∀・ノ!リ人「どうし……」


言い終わるより早くツンのウサミミがそれを察知した。

その場で素早く、そして思い切り体を仰け反らせる。

ザシュッ!


ξ ゚⊿゚)ξl从・∀・ノ!リ人「!!」


右手の壁を突き抜けて、刀の切っ先が二つ突き出して来た。

さっきまでツンの体があった虚空にだ。

それは目標を捕らえそこねたとわかるとすぐに引っ込み、場所を改めて再び突いて来た。


ξ;゚⊿゚)ξ「おっ、わっ、ひぇっ、」

35.
ツンもまた仰け反り、飛び退いて、間一髪でかわし続ける。

まるで壁が透明であるかのように正確に突いて来る。


ξ;゚⊿゚)ξ「わっ、わっ、うわっ!!」


 ツンがとうとう反対側の壁まで退いてやりすごした時、二つの切っ先は引っ込まずに

そのまま残った。

それぞれがぐるりと半円を描く形で壁を切り裂き、円形にコンクリートをくり抜く。


ξ ゚⊿゚)ξ「へ?!」


壁の向こうにいた誰かが、くり抜いたコンクリートをツンの方に蹴り出した。

弾丸と化して飛んできたそれをツンが咄嗟に拳で叩き割る。


ξ#゚⊿゚)ξ「でぇいっ!!」

从 ゚∀从「ふん」

36.
 いかにも傲慢な仕草で鼻を鳴らす音がした。

自分で作った穴をくぐり、一人の男が出てくる。

黒いスーツ姿の三十路に届こうかという年齢で、手にしている二つの抜き身の刀に似た

鋭い眼差しをしていた。


从 ゚∀从「やっと会えたな。てめえか、俺の商売をメチャクチャにしてくれてんのは」

ξ ゚⊿゚)ξ「……!!」


頭の周囲に血の霧が立ち込めているのが見える。

それがフィレンクトとは比べ物にならないほど濃い。


l从・∀・ノ!リ人「ミストキャリアーじゃな。それも幹部クラスなのじゃー」

从 ゚∀从「ミストライダーは俺をホメてくれたぜ。ここまで血の霧が適合する奴は珍しいってな」


 ツンは相手が放つプレッシャーをビシビシ感じていた。

まるで殺気の暴風が体にぶつかって来るみたいだ。
37.
ξ ゚⊿゚)ξ「あんたがハインリッヒね?」

从 ゚∀从「ハインでいい。死に際に長い名前は言いづらいだろ」

ξ ゚⊿゚)ξ「ハイパーメタボリックエンジェルがお相手するわ。

      神様を信じてるならせいぜい祈りなさい!」

从 ゚∀从「俺はビジネスマンなんでね」


 男は二刀を構え直し、静かな憤怒を込めて呼気を吐き出した。


从 ゚∀从「名刺を出さない奴は信じねえ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 一方、こちらは荒巻たち。


(゚q 。)ウボァァア―――!!

/ ,' 3「ふんっ」

38.
両腕を剣に変えたミストドールの一撃を、荒巻はそれぞれ両手の刀で受け止めた。

すかさずそのまま間合いを詰め、軽くジャンプして相手の眉間に頭突きを叩き込む。


(゚q 。)パチキッ!?


怯んだところで鳩尾に蹴りを入れ、間合いを拡げる。

数歩後退したそのミストドールのこめかみに、背後からぼるじょあが金属バットを

フルスイングした。


( ・3・)「んだらぁあ!!」

(*)゚q 。)ボゲェェ


そのミストドールが霧に戻るのを見届けると、両手の刀をくるりと回して逆手に持ち、それぞれ

鞘に納めるような仕草で背後に向かって突きを放つ。


(゚q 。)グホッ

39.
背後に忍び寄っていたミストドールの胴体に突き刺さる。

一息に引き抜くとそいつもまた霧となり、消えた。

 向こうではアサピーとギコタイガーが床に倒れたミストドールの脇腹に蹴りを入れまくっている。


(-@∀@)「オラオラオラァ!!」

<゚Д゚=>「野郎オラ、シャオラ!」

(゚q 。)グフッ……グ、ウボァ……


やがて霧に返る。


(-@∀@)「これで大体片付きましたぜ、おやっさん!」


汗を拭いながら振り返ると、トラギコが力なく呻いた。


(;=゚д゚)「畜生……」

<゚Д゚=>「兄貴!!」

40.
( ・3・)「やられたか?」

(=゚д゚)「くそぉ、運動不足が祟ったぜ」


腕を斬られ、血を流している。


/ ,' 3「お前は外に出てろ、これ以上は無理だ」

(=゚д゚)「いや、俺はまだ……! ぐっ、すまねえ、おやっさん」

/ ,' 3「構わん。ここに来るまでに十分役に立ったわい」

(‘_L’)「あァらあらあらあら、美しい、美しくってよその師弟愛!」


 場違いに黄色い声が廊下の奥から響いて来た。

スラリとした長身に趣味の良くないスーツを纏った、中性的だが美形と言うよりはオカマくさい顔立ちの男だ。

鼻が妙に高い。


(‘_L’)「ウフフ、ウフフフ、この場所に来ることは明白でしてよォ」

(#-@∀@)「フィレンクト、てめえ……!」
41.
(‘_L’)「あーらお兄様、お久し振りでいらしてよ。ご機嫌いかが?」

(-@∀@)「他の組から絶縁されたてめぇを拾ってやった恩を忘れたのか!?

      泣いて感謝してたクセに!」

(‘_L’)「ウフフフフ……! ご存じの通ォり、わたくしは常に強い方に付きますのよ。

     死にかけの鼎心会に残ってどーんな将来が望めますの?」

/ ,' 3「フン、かつての部下を手にかけるのは気が進まんが、貴様は別だ! 裏切り者め」

(‘_L’)「ウフ!」


フィレンクトは体の後ろに隠していたものを掲げて見せた。

彼がもっとも得意とする武器、トンファーだ。ただしチェーンソーと合体させた特別製の。


/ ,' 3(;-@∀@)「!!」

(‘_L’)「ほォら、この組織にいればこーんなイイモノだっていただけましてよォ」


まず右手に持っている方の始動機の取っ手を口に咥え、思い切り引っ張って点火する。

42.
ブォン!!

火の入った原動機が目覚め、無慈悲な機械音を上げてチェーンが回転を始める。

続いて左。


(‘_L’)「ウフフフ……!! このロマネスク博士特製のオモチャで遊んで差し上げる」


両手に咆哮するチェーンソーを構え、これから始まるであろう暴力と惨劇に恍惚としながら

フィレンクトはフラリと構えた。


/ ,' 3「お前らは下がっておれ」

(-@∀@)「え? でも、おやっさん……」

/ ,' 3「クリムゾンの製造所を潰せ! ここはわしに任せろ」


 荒巻は刀を二つとも床に突き刺し、両手を自由にして上着を脱ぎ捨てた。

背中一面に刻み込まれた、交差する二つの刀と龍の刺青が露わになる。

刀を拾って構え直し、フィレンクトを見据えた。
43.
/ ,' 3「渡世の義理を忘れた愚か者め。ハラワタをえぐり出して地獄の犬に食わせてくれるわ!」

(‘_L’)「ウフフ、ウフフフ、何とでもおっしゃってェェエ!!」


腕の中で二つの“チェーンファー”を回転させ、フィレンクトは突進をかけた。

右のブレードを荒巻の横顔に向かって振る。


/ ,' 3「おおおおお!!」 


 荒巻は二刀で受け止め、気迫と共に押し返した。

すぐさまもう片方のチェーンソーが唸りを上げて飛んでくる。


(‘_L’)「キェェエエイ!!」


首を跳ねる軌道のその一撃を身を伏せてかわす。

背後にあったファイル棚をブレードが薙ぎ、スチールの板とファイルケースが真っ二つになった。

 上半分がずれて落ちて来るのを横に飛び退いてかわす。

44.
(‘_L’)「ウフフ、ウフフフ」


フィレンクトはチェーンソーの先端をファイル棚の列に突っ込んだまま、進行上にある他の棚を

斬り裂いて追って来る。

棚の列に裂け目の跡が線のように引かれ、次々に棚が両断されて倒れた。

バラバラになった紙片が血が噴くように切れ目から吐き出される。


/ ,' 3「!!」

(‘_L’)「ねェエ斬れるでしょォ、これすっごく斬れるでしょォオオ!?」


追いすがって間合いが詰まると、チェーンソーの先端が棚の中から飛び出した。

 荒巻は両手の刀を十字に組んで受け止めたが、凄まじい圧力と勢いに負けて吹っ飛ばされた。


/ ,' 3「ぐあっ……」


床に背中から倒れる。

45.
 普通のチェーンソーでは考えられない切れ味だ。

良く見るとノズルから吐き出される排ガスがかすかに赤い。


(‘_L’)「血の霧を応用した特別製エンジンですってよォ。さァ解体マグロにおなり!」


 駆け寄ってくるフィレンクトに向けて、荒巻は足元にあった椅子を蹴飛ばした。

滑車により椅子は床の上を滑ってゆく。


(‘_L’)「おっとォ」


相手はそれを踏みつけ、逆に踏み台にして高く飛んだ。

空中で二つの“チェーンファー”を振り被り、地上の荒巻を×の字に解体する形で振り下ろす。


(‘_L’)「キェェエエイ!!」

/ ,' 3「クッ」


床に仰向けになっていた荒巻は後ろに転がって立ち上がり、その場から逃れた。
46.
寸前までいた床のタイルに×の字が刻まれる。

 フィレンクトは荒巻は完全に体勢を持ち直さないうちにラッシュをかけた。


(‘_L’)「キェェエ、キエッ、キエッ!!」

/ ,' 3「うるさい野郎だ、猿かお前は?!」


両側から次々に繰り出される攻撃を防ぐのがやっとだ。

連打の回転が増してゆくと、それすらもおぼつかなくなっていく。


/ ,' 3(いかん、刀がもう限界だ)


おまけに二刀の刀身が傷だらけになり、今にも折れそうだ。

 とうとう部屋の隅に追い込まれて逃げ場がなくなった。

壁を背に考えを巡らせる。


/ ,' 3(もう持ち応えられん、どうする……!?)

47.
(‘_L’)「あなたもそろそろ骨の休め時でしてよォ。

     ラッキーですわね、少なくともボケて老衰死よりはマシじゃなくって?」

/ ,' 3「わしゃそれでも別に構わんがのう」

(‘_L’)「剣客として死ねることを感謝なさって!! ウフフフ!!」


トドメの一撃とばかりに放たれた、フィレンクトの右から横薙ぎの一撃。


/ ,' 3「ふんっ!」


荒巻は刀身を十字に組んでブレードを受け止めると、挟み込んでそのまま壁に突き刺した。

縫い付けて動きを封じたわけだ。

 フィレンクトは右はそのままで構わず、左のチェーンソーを相手の脳天に振り下ろした。


(‘_L’)(オフフ、おバカさん! 二刀とも捨ててコッチはどうするのォ!?)

/ ,' 3「うおおおおお!!」


48.
ガッ!!


/ ,' 3

(‘_L’)「!?」


 相手を縦から二つにした筈のフィレンクトの一撃は、空中で静止していた。

刀を二つとも捨てた荒巻が合掌した両手の中に挟んでいたからだ。

彼の眉間から数センチ、まさに目前でブレードが唸りを上げて回転している。


(;‘_L’)「ば、バカな……」

/ ,' 3「フ、年の功をナメたな」


愕然とする相手を押して間合いを僅かに詰め、つま先を跳ね上げる。

革靴のつま先がフィレンクトの股間にめり込んだ。

ズン!!


49.
( ゚_L゚ )「!!!」


 二つのチェーンファーのグリップを力なく離すと、フィレンクトは内股で腰を引いた。

両手で股間を押さえてよろよろと下がる。


( ゚_L゚ )「あ、あきまへん……そこだけはあきまへんでぇ……!」


体を硬直させ、腰を痙攣させながら下がり続ける彼が窓辺まで来た時、荒巻は手の中の

チェーンファーを相手の顔面に投げつけた。


(*)゚_L゚ )「あぼふっ!?」


運良く(悪く)ブレードでなくエンジンの部分がぶつかり、窓を突き破って外へ落ちた。

鼻血が尾を引く。


/ ,' 3 ゼェゼェ


50.
 ガラスの散乱する窓まで行って下を覗き込む。

フィレンクトの姿は闇に飲まれていたが、たどたどしい足音が遠退いてゆくのが聞こえた。


/ ,' 3「逃がしたか。フン、運のいい」


チェーンファーを捕らえて壁に突き刺さったままになっている二刀を引き抜き、荒巻は溜め息を

ついた。


/ ,' 3「さあて、嬢ちゃんの方はどうなっとるかのう」









つづく……




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