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青い血と赤い涙のようです

PSゲームの刻命館シリーズで「影牢」ってやつがあって、それが好きで思いついた。
暗くて何の救いもないストーリーが好きだった。


1.
ニューソク王国の人間は長い間、青い血の民に支配されてきた。

血液が青いということもあるが、それ以上に彼らはある一点において人間とは決定的に違った。

青い血の民は寿命で死ぬことがなかったのだ。

人間など家畜ほどにも思わないその圧政に人間の不満はついに爆発し、反国家組織『赤い涙』を

中心に大規模な反乱が起こる。

以後十年、反乱軍と国王軍はお互いに一進一退を繰り返しながら血を血で洗う内戦を続ける。

ニューソク暦1330年、冬。

赤い涙率いる反乱軍は多大な犠牲と引き換えに国王軍を打ち破り、とうとう王城へとなだれ込んだ。








青 い 血 と 赤 い 涙 の よ う で す



2.
結局のところ暴力を止められるのはやはり同じ暴力だけだ。

青い血の民で占められていた王家の一族ならびに貴族たちをことごとく

絞首台に上がらせるという形で彼らの1000年以上の支配は終わりを告げる。

ニューソク王国からニューソク共和国に生まれ変わり、人間による人間のための

人間の政治が始まったその最初の年のこと。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


新たな政治は円卓議会と呼ばれる11人の権力者によって行われることになった。

議長は輪番制で、最初は最年長ということでショボンになった。


(´・ω・`)「議員の皆、今日はこれとは別に大切な話がある。座ってくれ」


本日すべての議題を消化し終えた後だったので、腰を浮かしかけた議員たちは顔を見合わせた。




3.
(´・ω・`)「こちらが掴んだ情報なのだが…」


全員が再び腰を落ち着けた後にショボンは慎重に続けた。


(´・ω・`)「青い血の民が一人、逃亡中であるらしい」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「何だと……」

(*゚ー゚)「まだ生き残りがいたのね?」

(´・ω・`)「静粛に。まだはっきりしたことはわからん。これを見てくれ」


静かなざわめきを静め、ショボンは召使いに巻物を持って来させて円卓に広げた。

人名がずらりと並んでおり、そのうちのほとんどに赤線が引いて消してあった。


(´・ω・`)「知っての通り赤線が引かれた青い血の民は死亡が確認されたものだ。

      大半はあそこにぶら下がってる」


ショボンは会議室の窓から見える城壁に眼をやった。

4.
王城をぐるりと囲む城壁には100人以上の青い血の民がロープでぶら下がっている。

絞首刑に処された後も見せしめでカラスのエサにされているのだ。


(´・ω・`)「黒コゲになった奴や顔面が潰れてしまったのなんかを更に間引きすると、

      5、6人ほどの行方がわからない」

(-_-)「そのうちの何人かが生き残ってる可能性があるわけだな」

(´・ω・`)「その通り」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「もっと念入りに殺しとくんだったな」


兄者は赤い涙の中でも最も戦が上手く、戦時中は国王軍側に大いに恐怖をばらまいた。

その功績が認められて一介の武将から円卓議員にまで上り詰めた。

いくつもの耳の剥製を数珠繋ぎにしたネックレスが彼の自慢だ。

すべて戦場で討ち取った青い血の民の耳である。




5.
(´・ω・`)「青い血の民は根絶やしにせねばならん。未だに国民の中には連中を慕う愚か者がいる」

( ><)「で、議長。あなたの見立てで生き残ってるのは誰だと思うんです?」

(´・ω・`)「こいつだ。そして最も生き残っていて欲しくないのもこいつだ」


ショボンは名簿のうちの一つを人差し指で指した。

上から数えてすぐのところで、女の名前が書かれている。


(*゚ー゚)「どうしてこいつだと思うの?」

(´・ω・`)「二日ほど前に郊外の宿場で青い血の民らしき者を見たという情報があった。

      女だったそうだ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「議長。この仕事、俺にやらせてくれないか」
∧_∧
<ヽ`∀´> 「武官出ごときがでしゃばるなニダ!」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「そういうテメエは戦時中に何してた? 女はべらせて机にふんぞり返ってただけだろ」

(´・ω・`)「やめろ! 見苦しいぞ」


6.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「議長、青い血は俺にとって終生の敵だ。殺された戦友の数は両手の指じゃ間に合わない」

(*゚ー゚)「それはみんな同じよ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「同じじゃねえ、真っ先に死ぬのは俺たち下っ端だったんだぞ! テメエらに何がわかる」

(´・ω・`)「よさないか!」


議長が机を叩き、二人はお互いにそっぽを向いて矛先を納めた。


(´・ω・`)「そこまで言うならお前にやらせる。ただし絶対に殺すな」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「難しい注文だな」

(´・ω・`)「もう戦争は終わったのだ。裁判にかけ正当な手続きの後に処刑する。いいな?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「まあ、結果的に同じならそれでいいさ」

(´・ω・`)「お前には百人隊二つと捜索費用を貸してやろう。では解散」


ショボンが指差した名簿の名はリリ。かつてこの国の姫だった女だ。


7.
会議が行われた王城からはるかに離れた、ある小さな宿場。

戦争が長引いたせいで人々は疲弊し切っており、平和が訪れた今でも町全体の雰囲気が重い。

目に付くのは老人と子供ばかりだ。若者はみんな戦争に取られて死んでしまった。

そんな辛気臭さでいっぱいの街角のある小さな宿屋に、二つの人影が現れた。

∧∧
(,,゚Д゚)「いらっしゃいだゴルァ」

('A`)「部屋はあるか?」
∧∧
(,,゚Д゚)「一番安いのなら空いてるぞ」

('A`)「それでいい。一晩泊めてくれ」
∧∧
(,,゚Д゚)「宿代は先払いだゴルァ」


ドクオがくすんだ色の銀貨をカウンターに置くと、店主は鼻で笑ってそれを押し返した。

∧∧
(,,゚Д゚)「旧王国硬貨はウチじゃ使えねえ。馬糞ほどの価値もねえからな」



8.
国王軍側は戦争中期ごろから拡大する一方の戦費をまかない切れなくなり、

国中の貨幣を改鋳して粗悪な硬貨を大量に作った。

後でとんでもないツケを払わされるとわかっていてももう他に方法がなかったのだ。

結果貨幣の価値が暴落して国内でインフレを巻き起こし、経済の破綻を招いて後の敗北へと

繋がってゆくことになった。


('A`)「これしかないんだ。何とか頼む」
∧∧
(,,゚Д゚)「これで勘定して欲しいんなら百枚は貰わねえと」

('A`)「百枚!?」
∧∧
(,,゚Д゚)「腰のもんと交換なら釣りを出してもいいぜ」


ドクオは自分の腰に下げた剣に手をやった。


('A`)「こ、これはダメだ」
∧∧
(,,゚Д゚)「そうかい。じゃ他所に行くんだな」

9.
その時、ドクオの後ろに控えていた女が無言で二人に割って入った。

頭からつま先まですっぽりフード付きのマントを巻き付けている。


*リ´・-・リ「これで」


女は手袋をつけた手をフードの中に入れ、イヤリングを外してカウンターに置いた。

大きな赤いルビーがついている。

ドクオは彼女に何か言おうとしたが、結局黙った。

∧∧
(,,゚Д゚)「一番奥の部屋だ。備品は大事に使ってくれよ」


イヤリングをいじり回してから男はそう言い、鍵を二人に投げ渡した。

部屋に入って鍵をかけると、ドクオはさっき飲み込んだ言葉を吐き出した。


('A`)「姫! あのイヤリングは父上の…」



10.
リ´・-・リ「構いません」


フードを後ろに跳ね上げてリリは答えた。

彼女は肌が青い。体中を布で覆っているのはそれを知られない為だ。


リ´・-・リ「これからどうするのですか?」

('A`)「国外に逃げるしかありません。北のラウンジ聖公国とは亡命協定を結んでいますから、

    そこまで行けば何とか……」

リ´・-・リ「その協定はこの国が滅んだ今も有効なのですか?」

('A`)「……」


そこが一番の疑問だ。

下手をすればラウンジ聖公国の連中に捕まり、ニューソク王国へ送り返されるかも知れない。

青い血の民を嫌う人間は国内に限ったことじゃない。



11.
しかし分の悪い博打とはいえ、他に賭けられる手段はない。

もうどっちを向いても敵だらけだ。


('A`)「明日の朝早く、人目がないうちに出発しましょう。もうお休みになって下さい」

リ´・-・リ「わかりました」

('A`)(円卓議会はとっくに俺らの存在に気付いてる筈だ。

    追っ手を巻くには森を抜けるしかないが……姫を連れたままそれができるだろうか?)


ドクオは剣を抱えて椅子に腰かけ、考えを巡らせた。

深夜ごろになってウトウトしかけていると、ベッドの方で小さな声がした。


リ´・-・リ「ドクオ、起きていますか」

('A`)「ん? え、ええ……少し眠っていました」


窓から差し込む月明かりを浴びて、リリがベッドに上半身を起こしている。


12.
リ´・-・リ「私の元に来なさい」

('A`)「いえ、見張っていないと……」

リ´・-・リ「命令です。来なさい!」

('A`)「あなたの命令は聞けません」


ドクオは視線をドアに戻した。


('A`)「私の主はあなたの父上です。あなたじゃない」


しばらくリリが黙っていたので、ドクオは彼女が眠ったのかと視線をやった。

彼女は顔を押さえてベッドに潜り、すすり泣いていた。


リ´;-;リ「ぐすっ……命令なんだから、来なさい……命令なんだから……」


ドクオは彼女のところに行き、跪いた。


('A`)「姫」
13.
リ´;-;リ「お母様もお父様もみな八つ裂きにされてしまった。お兄様も、幼いミセリまでみんな……

     妹がいったい何をしたって言うの、ドクオ」

('A`)「……」


国を支配下に収めた後、赤い涙は徹底して青い血を根絶やしにした。

赤ん坊も妊婦も、リリの妹だった2歳のミセリまで手にかけたのだ。

青い血の民の暴力を終わらせたのはやはり人間の暴力だった。


('A`)(こんなことがいつまで続くんだろうな……)

リ´;-;リ「青い血の民が人間たちから多大な憎しみを買っていたのは知っています。

     だからって皆殺しにするなんて……」

('A`)「しっ! 姫、静かに!」


ドクオは床板からかすかな震動を感じ取った。

少なくない人数がこの建物のどこかで動いている。

14.
そのころ、宿屋の地階では店主のギコが愛想笑いで兄者を迎えていた。

∧∧
(,,゚Д゚)「これはこれは、議員どの。ウチに何かご用でしょうか?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ここらに怪しい奴がいるって情報が入ったんでな。心当たりはないか?」
∧∧
(,,゚Д゚)「ははあ、そう言えば夕方に現物で宿代を払った客がおりましたがね」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「現物? 見せてみろ」


ギコが取り出したイヤリングを、兄者の隣にいた弟者が受け取る。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「大当たりだ、兄者。この石は王家の一族しか持てない」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「その客ってのは一人か?」
∧∧
(,,゚Д゚)「いいえ、二人でしたな。剣士ふうの男と一緒に、二階の一番奥の部屋に……」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「よし、踏み込め」


武装した部下たちがどかどかと階段を上がってゆく。


15.
ドクオはリリを抱きかかえ、窓から外に飛び出した。


('A`)「クソッ、もうバレるとは」

リ´・-・リ「ドクオ、囲まれています!」


抜き身の剣を持った兵士が何人かこっちに向かって走ってくる。

ドクオはリリを放り出して剣を抜き、上段に構えた。


('A`)(出し惜しみしてる場合じゃないな。やるか)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


しばらくした後、青ざめた顔の部下が流石兄弟のところへ駆け付けた。


ミ,,゚Д゚彡「隊長、申し訳ありません。逃げられました!」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「おいおい、あの包囲を抜けたってのか?!」

ミ,,゚Д゚彡「それが男の方がおかしな技の使い手で……」
16.
兄者は黙って宿の裏手に回り、ドクオが剣を振るった現場へ行った。

死体は二つだ。一つは頭を兜ごと割られ、もう一人は鎧ごと胴を真っ二つにされている。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「この技、ドクオか……」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「知ってるのか、兄者」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「旧国王軍側の有名な剣士さ。人間のくせに青い血に味方するクソッタレだ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「とりあえず居場所を掴もう」


弟者はリリのイヤリングを片手に握り、杖を掲げて眼を閉じた。

しばらく口元からぶつぶつと呪文の言葉を漏らし、それから言った。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「そのドクオって奴は魔法も使えるのかい?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「そんな話は聞いたことないな」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「探知が阻止された。こりゃあ厄介だぞ」


兄者は舌打ちし、捜索人数を増やすよう部下に命令した。
17.
月も星もない真っ暗な夜だったことがドクオとリリに幸いした。

向こうはこちらを見つけることができず、松明の明かりはあちこちをゆらゆらとさまようばかりで、

一向に近付いて来ない。


リ´・-・リ「!」

('A`)「どうかしましたか?」

リ´・-・リ「探知の魔法を感じます。捕まらなかったようだけど」

('A`)(くそ、やっぱりイヤリングがマズかった。向こうに魔法使いがいるとは……マズイな)


あらゆる所有物には持ち主の放つ生命エネルギーが残る。

探知の魔法を使えばその持ち主を探し出すことができるのだ。

だがリリにはいつ襲われるかもわからない王族ならではの自衛手段があった。

背中一面に刻まれた刺青がリリ本人の体力と引き換えにしばらく魔法から守ってくれる。


('A`)(とは言え彼女の体力では夜明けまで持たないだろう。急がねば)

18.
盗んだ馬にまたがり二人は町を出た。

やがてあらゆる灯りが途絶え、二人は森に入った。

木々が鬱蒼と生い茂り、足場は悪い。ここから馬は使えない。


('A`)「森を抜ければラウンジ聖公国とを隔てる川に出ます。夜明けまでにつくといいんですが」

リ´・-・リ「幼い頃にお母様と来た……?」

('A`)「そうです。その川です」


一度ラウンジ聖公国と国交の調印式を結ぶ際に渡った川だ。

その日のことはよく憶えている。

10年以上前だが王家親衛隊に配属されたばかりのドクオの初仕事だった。

自分はこうして年を取った。

だがリリはあの日から少しも変わっていない。

青い血の民は100年かけて成人するが、リリはまだ50才ほどだった。


19.
リ´・-・リ「あなたも私たちを呪われた種族だと思いますか、ドクオ」

('A`)「あまり喋ってはいけません。体力を消耗したら防御魔法が途切れてしまう」

リ´・-・リ「私は、ずっと自分の血を憎んできました……人として産まれていればあなたとだって……」

('A`)「姫?」


手を引いていたリリは地面に膝をついた。

顔から血の気が引いている。


リ´・-・リ「体力がもうあまり……私を置いて逃げなさい、ドクオ」

('A`)「何ですって?」

リ´・-・リ「彼らは私のイヤリングから探知の魔法を使っている筈だから、あなたは……」

('A`)「あなたの命令は聞けないと言ったでしょう」


ドクオはリリを抱き上げ、走り続けた。


('A`)「あなたを守り切ることが、亡き王の下した最後の命令なんです」
20.
  ∧_∧
弟(´<_`  )「向こうの魔法が弱まってきた。もうちょいで捕まえられる……もうちょい……」


弟者は目を閉じたまま杖の先端をさまよわせた。

意識の闇の中に広がる一点の光を見つけると、そこに照準を合わせた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「いたぞ、国境沿いの森だ。川を渡ってラウンジに逃げる気だな」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「クソッ、国境か! 急がないと」


兄者は兵を掻き集め、森へ向かって進軍した。

国境沿いで揉め事はできない。

ラウンジが現在のニューソク共和国に対し敵とも味方とも表明していない今、下手に刺激するのはマズい。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「もうちょいだけ北西……北北西……そうだ、それから真っ直ぐだ」


探知の魔法が効くなら夜の森でも昼と同じだ。

流石兄弟と兵隊はニオイを嗅ぎ付けた猟犬のようにドクオとリリを追ってゆく。
21.
背後から松明を掲げた一団が追ってくる。

ドクオは彼らが自分たちを正確に追跡してくることに気付いた。


リ´・-・リ「ご、ごめんなさい、ドクオ……もう持たない……」

('A`)「いいえ、十分です。もう川はすぐそこです」


空の彼方で日が昇りかけている。

やがて森が途切れ、朝日をきらきらと砕く水面が見えてきた。

幅の広い川だが流れは速くないし向こうも国境で派手なドンパチはできない筈だ。

河原に手が届こうかというとき、ヒュッと空気を鋭く切り裂く音がした。


('A`)「!!」


ドクオが背中に食らった矢は背負い袋を貫き、肉に食い込んだ。


リ´・-・リ「ドクオ!!」

22.
('A`)「大丈夫です、早く川へ!」


ドクオはリリに肩を借り、重たい体を引きずって川辺へ向かった。

荷物から取り出した予備のズボンを濡らして裾の両端をしっかり縛る。

あとは空気を入れるようにして水面に被せればこれが浮き輪の変わりになる。


('A`)「お先に」

リ´・-・リ「ドクオは!?」

('A`)「この体ではお供できません。どうか行って下さい」

リ´・-・リ「ならば私も行きません」

('A`)「私の身を案じて下さっているのならご心配には及びません。

    新政権は例え旧国王側に加担していたとあっても、人間を一人も処刑していないのです。

    人間の味方であることを印象づける為に」

リ´・-・リ「で、でも私一人では……」

('A`)「いつか国を出て会いに行きます。それまでお元気で」
23.
リ´・-・リ「わかりました、行きます。だけど一つだけ誓いなさい」

('A`)「?」

リ´・-・リ「再び出会ったその時は、私の夫になりなさい」

('A`)「……」

リ´・-・リ「誓いなさい!」

('A`)「良いのですか? 私は老いさらばえて死ぬ。あなたよりも先に、確実に死ぬ」

リ´;-;リ「……」


リリは涙を飲んだ。

自分の呪われた命を改めて痛感した。

ドクオは彼女を抱き、頭を撫でた。


('A`)「あなたを愛しています。身分も立場も違うとわかっていながらずっと。

    国が崩壊した時、私は内心で……これは、あなたと結ばれるチャンスなのだと……

    お許し下さい、リリ様。せめて今生の世では出来る限りあなたと一緒にいたかった」
24.
リリが水上に姿を消した後、ドクオは剣を抜いて振り返った。


('A`)「お前が来るだろうと思っていたよ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「俺もお前だろうと思っていた。久しぶりだな。戦場以来か」

('A`)「姫を殺す気なんだろ? それに俺も」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「まあな。コレクションに加えたいと思って」


兄者は笑い、自分の首に下げた耳のネックレスを親指で引っ張り上げて見せた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「おい、兄者!?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「青い血もお付きの人間も川に沈んで死にました。それでいいさ」

('A`)「あいにく姫はもう川だぞ。戦争しかけるつもりで兵を送ってみるか?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「自分で戻ってきてもらうさ。お前を生け捕りにして……

        或いは生け捕りにしたように見せかけて、戻って来なきゃ殺すって叫んでな」


兄者は兵士たちの方に振り向いた。
25.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「よし、誰か旧王国随一の剣士の首を取ってみようって命知らずはいないか?

        出来た奴には望むままの報酬を出そうじゃないか!」


兵士たちが雄叫びを上げていっせいに切りかかってくる。

ドクオは身構え、意識を正面ただ一点に当てた。

極限まで精神を集中させ、初太刀に全身全霊全神経を込めて放つ一撃は、

防ごうとした相手の剣や鎧もろとも紙のように叩き切る。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「コンセントレーション・ブロー。あいつの必殺技だ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「勝てるのか、兄者」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「勝たなきゃあの女が手に入らないだろ。それに見ろ、奴はもうヘトヘトだ」


この技は体にかかる負担が大きく、あまり連発できない。

それをろくに休まず使い続けたせいでドクオはすでに立っているのがやっとの状態だった。

体に突き刺さる矢の数は増え続け、すでに合計四本が生えていた。
26.
だがドクオの周囲には足の踏み場もないほど兵士の上半身だの四肢だの転がっている。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「どうした? ビビってるのか?」

ミ,,゚Д゚彡「うう……わ、我々では歯が立ちません……」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「出番みたいだぞ、兄者。魔法で援護するか?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「いや、いい。音に聞こえた剣士ドクオを狩るのは俺一人の仕事じゃないとな」

('A`)「ぜぇーっ、ぜぇーっ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「バカな奴だな。とっととあの女を差し出して投降してりゃ、今ごろ俺の部下だったのに」

('A`)「お前の? そりゃ犬死の方がマシだな」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ふん。コンセントレーション・ブローはあと何回使えるんだい? 一回か?」

('A`)「さあな」


悔しいが奴の言う通り、あと一回が限度だ。


('A`)(絶対に外せない……こいつを生かしておけば姫が死ぬ)

27.
兄者とドクオは対峙し、激しく切り結んだ。

しかし歴戦の戦士兄者はハンデのある今のドクオでどうにかできる相手ではない。

コンセントレーション・ブローの間合いギリギリから牽制を繰り返してくる。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)(あれは間合いの中で出されると避けられる速度じゃないからな……)

('A`)(クソッ、強い!)


ドクオは意を決して大技に出た。

大上段に構えて相手の間合いに飛び込む。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)(ふん、勝ちを焦ったか!)


兄者の繰り出した突きがドクオの胴体に突き刺さる。

ドクオは血を吐き、動きを止めた。しかしすぐに胴に剣がささったままなおも前進した。

更に深く切っ先が胴に沈み込み、それから背中から飛び出して串刺しの状態になる。


28.
  ∧_∧
兄(;´_ゝ`)「!?」

('A`)「焦ってなんかいないさ」


最初からこういう作戦だ。

ドクオは上段に構えたままの剣を持つ手に力を込めた。

  ∧_∧
兄(;´_ゝ`)(しまった、間合いだ!! コンセントレーション・ブローが……)


剣から手を離せば……

その思考が沸き上がるころにはすでに、兄者の脳天から股までをドクオの剣が両断していた。

ドクオは返り血を浴びながらゆっくりと倒れた。

地面につくまでの間、リリのことを考えていた。


('A`)(お許し下さい、リリ様……せめて今生の世ではできる限りあなたといたかった……)



29.
それでもドクオは満足だった。

親衛隊の一員としてでもなく、人間という種族に対する反逆者でもなく、

また剣士としてでもなく、亡き主である王の命令を遂行するためでもなく、

愛する一人の女を守るために死ねたことを誇りに思った。

地面が近付いてくる。

弟者の声がぼんやり耳に届いた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「くそ、女はもう対岸か! 兄者……くそおおお!!!」

('A`)(リリ様、あなたを……私の妻に……)


ドクオは倒れ、そして二度と立ち上がることはなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


対岸にたどり付いたリリは重たい体を引き起こし、ニューソク共和国側を見た。

朝日に水面がまぶしく輝いて何も見えない。
30.
リ´・-・リ「あなたを待ちます、ドクオ。私が生き続ける限りここで待ちます」


こうしてニューソク共和国から最後の青い血の民はいなくなり、彼らの存在は歴史書から消えた。

リリがその後どうなったかは誰も知らない。

一説によれば国境の川岸に住み、決して訪れることのないドクオを待ち続けているという。

百数年の歳月が経ってニューソク共和国が滅んだ今なお、ずっと。













おしまい
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(゚q 。川カンザイ

Author:(゚q 。川カンザイ
完全犯罪(カンザイ)
プラネットライカは隠れた名作

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