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( ^ω^)が一億円を手に入れたようです

幼女と金か……欲しいな。

ブーン ksmsさんより。 書いていただいた絵。感謝感激


1.
ここは都内にあるボロアパート。

独身男にありがちな汚い部屋のベッドに仰向けになり、内藤は預金通帳を眺めていた。


( ^ω^)「はあ……」


溜め息が出る。

底知れない虚無感が溶けた吐息だ。

ベッドサイドテーブルのスタンドの下に通帳を置いて、寝返りを打つ。

そしてまた通帳を手に取って開き、金額を眺める。

『預金残高 100,021,030円』






内 藤 が 一 億 円 を 手 に 入 れ た よ う で す



2.
夢じゃあない。確かに今、自分は一億円持っている。

リアルじゃない金額だ。

現実感がないのは仕方ないが、このどうしようもない空しさはなんだろう。


( ^ω^)「これなら当たる前の方が楽しかったお」


買ってきた宝クジを手作りの神棚に捧げ、当たるよう祈願した日々。

その祈りはイヤになるほど真っ直ぐ神様に届き、内藤はあっさり一億円を手に入れた。

一億円。

人の命がティッシュペーパーよりも軽くなる値段だ。


( ^ω^)「ま、庶民が突然大金を手に入れてもこんなもんだお。メシでも行くお」


内藤はすき屋に行き、牛丼を大盛りで頼んだ。

更に豚汁とサラダをつけて少しだけ贅沢したが、空しさは募るばかりだった。


3.
寝る前に布団の中で一億円の使い道について空想するのは楽しかった。

しかし実際に手に入れてみると、内藤はどうしようもない虚無感に苛まれた。

今ようやく、自分は何の夢も持っていなかったことに気付いたのだ。


( ^ω^)「空しい……空しいお」


さっきからケータイがひっきりなしになっている。

内藤はうっとうしくなって電池を引っこ抜いた。

どこで聞きつけたのか親戚やら恩師やらが電話をかけまくってくるのだ。

自分で使い道のないカネといっても、他人にくれてやる気も毛頭ない。


( ^ω^)「やることないし、もう寝るお」


早々に布団に入って目を閉じる。

その晩、内藤は子供のころの夢を見た。


4.
( ^ω^)「ムニャムニャ、面舵いっぱい……」


ジャングルジムで冒険ごっこをしていた時の光景だ。

そこで目が覚めた。


( ^ω^)「ハッ!? 夢かお。……ああ、そうだ。僕は子供のころ、船長になりたかったんだお」

( ^ω^)「そうか……船長になるお! このお金はそのために使うお!」


翌日、内藤はさっそく船舶免許を取る手続きを取った。

実技でちょっとつまづいたが何とかオマケして合格を貰い、免許を手に入れる。

続いて3000万円ほどの居住区付きクルーザーを一括払いで購入した。


( ^ω^)「うーん、カッコイイお! これをブーン号と名づけるお」


港に浮かべた自分の船を眺めてニヤつきながら、航海の旅に思いを馳せる。


( ^ω^)「……そうだ、もういっそのことアパートを引き払ってここに住むお」
5.
もはや今の生活に何の未練もない。

帰宅した内藤は家具などを少しずつ捨てたり売ったりして準備を始めた。


( ^ω^)「三日もあれば片付くお。フヒヒ、楽しみだお!」


いよいよ出発を翌日に控えたある日の夕方。

ゴミを出した内藤は改めて自分のアパートを見た。


( ^ω^)「このボロ屋とも今夜限りだお。まったく、ロクなとこじゃなかったお」


夜な夜な大騒ぎするDQN一家ともこれでお別れだ。

階段を上がって自分の部屋に戻ると、ドアの前で小さな女の子が泣いていた。


ξ ;⊿;)ξ「ひっく、ひっく」

( ^ω^)(DQN一家の娘だお。また殴られたのかお)



6.
こんな事はしょっちゅうあったが、内藤は見てみぬフリをしてきた。

DQN父親がヤクザというもっぱらの噂があったからだ。


( ^ω^)「どいて欲しいお。部屋に入れないお」


女の子は真っ赤に晴らした目でこちらを見上げ、黙って場所を空ける。

ドアを開けて部屋に入り際、内藤はふと思い出したように呟いた。


( ^ω^)「明日の朝一番に僕は家を出るお。もう二度と戻って来ないお」

ξ ゚⊿゚)ξ「?」

( ^ω^)「君も連れて行ってあげてもいいお。朝五時までにドアをノックするお」

ξ ゚⊿゚)ξ「……」


部屋に入ってすぐ、頭の中いっぱいにハテナマークが回転した。

自分の行動がまったく理解できない。


7.
( ^ω^)「ん? 何で僕はあんなことを言ったんだお?」

( ^ω^)「まあいいお。あんな小さな子がついてくるわけないお」


コンビニ飯を適当に食べ、内藤は明日に備えてすぐに横になった。

眠りに落ちるとまた子供のころの夢を見た。


( ^ω^)「むにゃむにゃ、全速前進……」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


翌朝、まだ真っ暗なうちに目が覚めた。

時計を見ると4:55を差している。

着替え、荷物を確認し、再び時計を見る。

五時を少し過ぎていた。


( ^ω^)「ま、こんなもんだお。さらば故郷よ」

8.
部屋を出ようとドアを開けると、そこで今まさにノックしようと拳を振り上げた女の子がいた。

びっくりして大きく眼を見開いている。


(;^ω^)「おお!?」

ξ ゚⊿゚)ξ「!!」

( ^ω^)「ついてくるのかお」

ξ ゚⊿゚)ξ「う、うん……」


内藤はリュックを背負った彼女の前にしゃがみ込み、顔を覗き込んだ。


( ^ω^)「言っておくけど、本当にここへは二度と戻って来ないお。それでもいいのかお」

ξ ゚⊿゚)ξ「う、うん……いいよ」

( ^ω^)「じゃあ約束だお。僕は内藤ホライゾン、これからよろしく」

ξ ゚⊿゚)ξ「津田ツン」


指きりを交わし、二人は家を出た。
9.
始発に乗って港につくころには夜が明け、朝日がまぶしくブーン号を照らしていた。


( ^ω^)「あれが僕の船だお。ブーン号って言うんだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さんのお船なの?」

( ^ω^)「そうだお。今日からここが家になるんだお」


イカリを上げ、ブーン号は輝く水面を滑るように走り出した。


( ^ω^)「ヨーソローだお。出発!」


ブーン号にはどでかいキッチン、バス、寝室、ナビコン、魚群探知機までついている。

海に行くのも船に乗るのも初めてらしいツンは興奮した様子でそこらを走り回っていた。


ξ ゚⊿゚)ξ「すごいな、すごいな」

( ^ω^)「気をつけるお、甲板は滑るお」



10.
ξ ゚⊿゚)ξ「うん。ねえ内藤さん、これからどこへ行くの?」

( ^ω^)「ん? んー……ツン、紙飛行機作れるかお」

ξ ゚⊿゚)ξ「え? う、うん」

( ^ω^)「そこに釣具屋でもらったチラシがあるから、ちょっと折ってくれお」

ξ ゚⊿゚)ξ「うん」


ツンはチラシを使って上手に紙飛行機を折った。


( ^ω^)「よし、それじゃそれを思いっきり飛ばすお。思いっきりだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「えいっ」


紙飛行機は海風に乗り、東の方へ飛んで行った。

内藤は船の進路を東に変えた。


( ^ω^)「これこそ放浪の旅人だお!」


11.
初夏の風は暖かく、天気も最高だ。

海鳥たちが見送りにやって来た。


ξ ゚⊿゚)ξ「あ、かもめ!」

( ^ω^)「ありゃウミネコだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「ネコ?」

( ^ω^)(ん? ウミネコってカモメの一種だったっけ? ……まあいいかお)


内藤はかつてなく心が満たされるのを感じていた。

あのどうしようもない空しさがまるで悪い夢のようだ。


( ^ω^)「ああ、“生き甲斐”という言葉の意味が真に理解できた気がするお」


しばらくすると腹の虫が暴れ出した。朝食なしだったせいだ。

そこでとりあえず船を止め、釣り糸を垂れてみた。


12.
( ^ω^)「フヒヒ、魚群探知機のおかげでばんばん釣れるお」

ξ;゚⊿゚)ξ「……ひ、ひいっ」

( ^ω^)「ん? どうしたお」

ξ;゚⊿゚)ξ「む、むし……」


どうやらツンは釣り餌のゴカイに触れないようだった。


( ^ω^)「ほら、こっちのオキアミを使うお」

ξ ゚⊿゚)ξ「うん」


一時間ほどでバケツは名も知れぬ雑魚でいっぱいになった。

キッチンで捌き、網で焼いてみる。


( ^ω^)「お、なかなか美味いお。これはアジかお……くそ、こっちは小骨がやたら多いお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「ガツガツガツ」

( ^ω^)「そんな急いで食うなお。詰まるお」
13.
ξ ゚⊿゚)ξ「うん……」


内藤はツンが妙に痩せていることに気付いた。

食事にろくに与えられていなかったらしい。


( ^ω^)「(何と不憫な……)ほら、このおにぎりも食べるお。コンブだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「うん」


食事が終わった後は甲板に寝椅子を並べて昼寝した。


( ^ω^)「ああ、人生万歳だお。生まれてきて良かった……」

ξ ゚⊿゚)ξ「?」

( ^ω^)「ん? ツン、何やってんだお」


寝椅子から抜け出したツンは四角い金属の箱の前にいた。

その箱の下からぶら下がっている紐をいじっている。

14.
内藤は椅子から飛び起きた。


(;^ω^)「ああああ、それは触っちゃダメだお!!」

ξ ゚⊿゚)ξ「!!」


ツンは慌てて手を離した。


( ^ω^)「これは中にゴムボートが入ってるんだお。紐を引っ張ると……ん?」

ξ ;⊿;)ξ「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」


彼女は震えながら眼を伏せ、両手で頭を守っている。

いまだかつてここまで脅えている子供を見たことがなかった。


( ^ω^)(あ、そうか……)


崩壊家庭と虐待が作り出した傷だ。日常的に暴力を受けていたに違いない。

内藤はうっかり怒鳴り声を上げてしまった自分を悔やんだ。
15.
( ^ω^)「もういいんだお。誰もお前を叩かないお」

ξ ;⊿;)ξ「……」

( ^ω^)「いいかお、この箱の中には緊急用のボートが入ってるんだお。紐を引っ張ると

       風船みたいに自動的に膨らむんだお。だから船が沈みそうな時以外は触っちゃダメだお」

ξ ;⊿;)ξ「……」

⊂ニニ( ^ω^)ニ⊃「もう怒ってないってば。ほら、ブーーーーン」

ξ ゚⊿゚)ξ「ブ、ブーン?」

⊂ニニ( ^ω^)ニ⊃「そうだお。辛いときも悲しいときもとりあえずブーンだお。ツンもやってみるお」

⊂ニニξ ゚⊿゚)ξニ⊃「ブ……ブーン」

⊂ニニ( ^ω^)ニ⊃「その調子だお。ブーーーーン」

⊂ニニξ ゚ー゚)ξニ⊃「ブーーン、ブ……ブフッ! ふふふ、くすくす……」

⊂ニニ( ^ω^)ニ⊃(ふう、やっと笑ってくれたお)


それからしばらくの間、二人ははしゃぎながら甲板を一緒に走り回っていた。

16.
海に出て一週間が経った。

もちろんというか当然と言うか、ツンは学校に行っていない。

海辺の町で生活用品を買い込む時、下校中の子供たちが冗談を言い合いながら歩いているところに

遭遇したりすると、ツンが少し寂しそうな顔をするのを内藤は何度か見た。


( ^ω^)「学校に行きたいかお、ツン」

ξ ゚⊿゚)ξ「……」


彼女は何も答えなかった。


( ^ω^)(せめて読み書きくらいは僕が教えないと……)


本屋で子供向けの本やらノートやらを買い込み、内藤が臨時の教師となった。

しかし彼女についてはどうしようもない不安がある。

これでいいのか?

本当に、このままでいいのか?
17.
( ^ω^)(ううう、だってツンが自分でついてくるって言ったんだお……

       でもこのままずっと連れ回して、それで一体どうするんだお? うう、どうすれば……)

ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん、どうしたの?」

( ^ω^)「んあ? ああ、そうだ、九九カードを作るお。ハサミ貸してくれお」

ξ ゚⊿゚)ξ「うん」


この時は何とか振り払ったものの、この考えは後々内藤を悩ませ続けることになる。

本当にこのままでいいのか?

ツンをどうすればいい?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


そんなある日のこと、ナビコンに人口ゼロの島が浮かび上がった。


( ^ω^)「お、無人島だお。行ってみるお」

ξ ゚⊿゚)ξ「うん!」
18.
島に人影はないが、廃墟とごくごく小さな船着場はあった。

どうやら昔は人が住んでいたらしい。過疎化で打ち捨てられたのだろう。


( ^ω^)「お、砂浜もあるお。泳ぐお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「う、うん……」

( ^ω^)「どうしたんだお。あ、もしかして泳げないのかお」

ξ ゚-゚)ξ「ち、違うの……あのね、あの……」


ツンは上着の袖を手首の方に引っ張ってもじもじしている。


( ^ω^)「? まあ、イヤならツンは浜辺で遊んでりゃいいお」


内藤は船からスウェットスーツと水中銃を持ち出してきた。

水中銃はゴムの力で銛を撃ち出すボーガンみたいなシロモノだ。


( ^ω^)「よっしゃあ、巣潜りに挑戦だお! よゐこ濱口がなんぼのもんじゃー!」

19.
とは言え、素人がそうそう泳いでいる魚を打てるもんでもない。

結局海底の貝をいくつか拾っただけで収穫を終え、海を上がった。


( ^ω^)「とったどー! ツン、ほら、サザエだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「あっ」


砂浜にいたツンに背後から声をかける。

すると彼女は慌てて腕まくりしていた袖を引っ張った。

ツンは何気ない仕草をよそおったが、内藤にはその腕にいくつもつけられた黒い点が確かに見えた。


( ^ω^)(あれはもしかして、煙草を押し付けた跡じゃないかお……)


初めてツンの親に対する憎悪が沸いてきた。

そしてそれは多分、ツンに対する自分の感情が変化してきたからでもあると内藤は自己分析した。

情が移るってヤツだ。


20.
( ^ω^)「愛することはその身を削る、だお」

ξ ゚⊿゚)ξ「なーに、それ?」

( ^ω^)「何でもないお。さあ、サザエの壷焼きと行くお」


夕食を取った後は浜辺に寝椅子を置いて眠ることにした。

波の音は静かで、夜の潮風は夏の匂いをたっぷり含んでいる。

内藤は満天の星空を眺めながらラジオを聞いていた。


( ^ω^)「ツン、寝たかお」


返事はない。

さっきまで浜辺で拾った貝殻に糸を通してネックレスを作っていた筈だが、寝椅子で横になっている。

静かな寝息が聞こえた。

( ^ω^)「僕も寝るかお……ん?」


ラジオに緊急速報が入った。
21.
「都内のアパートで殺人事件……暴力団の男……妻を撲殺……」


それは確かに内藤の住んでいたアパートだった。

そして犯人はツンの父親で、殺された方は母親に間違いなかった。


「家庭内暴力の果ての凶行……娘が行方不明……警察は事件に何らかの形で巻き込まれたと見て……」

( ^ω^)(……ツンには黙っとくお)


ラジオを切り、内藤は目を閉じた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ドクオ組の事務所では三人の男が渋い顔を突き合わせていた。


('A`)「あー、二人ともテレビは見たな?」
 ∧∧
ミ,,゚Д゚彡「ニダーのことですね」
∧∧
(,,゚Д゚)「まったく面倒なことになったもんで」
22.
('A`)「よく聞け。ニダーのボケが自分の妻を殺したわけだ。それはまあいい、俺らには関係ない。

    問題は奴が売人どもに卸す予定だったクスリだ」
 ∧∧
ミ,,゚Д゚彡「どんくらいです?」


ドクオはテーブルに置かれた大理石の灰皿を見下ろした。


('A`)「こいつに山盛り一杯ってとこだな」
 ∧∧
ミ,,゚Д゚彡「末端で二千万ちょいですか」
∧∧
(,,゚Д゚)「そいつが消えちまったとか?」

('A`)「まさにその通り。警察はニダーんちを家宅捜索した筈だが、麻薬は出ていないんだ。

    ところが奴に面会した弁護士は、ニダーは確かに家に隠したと言ってる」
∧∧
(,,゚Д゚)「ガキが消えたことが何か関係してるんじゃ?」

('A`)「俺もそう思う」
 ∧∧
ミ,,゚Д゚彡「ガキがシャブを持ち逃げしたってんですか? それはちょっと……」

('A`)「いや、それがニダーという男は用心深いんだかバカなんだか……変なものに隠したんだ」
23.
ξ ゚⊿゚)ξ「?」


寝室で持ち物の整理をしていたツンは、自分の黄色いリュックにおかしな点があることに気付いた。

リュックの背中に当たる場所、クッションを入れる部分を一度切り開いて縫い直した跡がある。

ハサミで切り開いてみると中にクッションは無く、代わりにビニール袋に入った白い粉末が出てきた。

小さな袋に小分けしてあり、全部で十個ある。


ξ ゚⊿゚)ξ「なんだろ……?」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


('A`)「つまり仮定するとだな、ガキがそのリュックをそうとは知らずに背負って家出したかも知れんと」
 ∧∧
ミ,,゚Д゚彡「なるほど」

('A`)「問題はガキとリュックはどこへ行ったかだ」
 ∧∧
ミ,,゚Д゚彡「警察が動いてるなら組の者は使わない方がいいですね」
∧∧
(,,゚Д゚)「流石兄弟の出番だな」
24.
流石兄弟の二人は自分のオフィスでその依頼を受けた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「というわけだ、弟者」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「なるほど。それで俺らにお鉢が回ってきたと」


二人は表向き浮気調査専門の探偵事務所を営んでいるが、裏ではヤクザに雇われている。

彼らが表立って動けないトラブルが発生した時は二人の出番となるわけだ。

二人はアパートの大家に電話し、事情を詳しく聞いた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ガキなんぞ見てないとさ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「小学生だろ? そんな遠くに行ける筈はないが……」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ああ、そういえば関係あるかどうかわからんが、ガキが消えた日に隣の部屋の奴が

        アパートを引き払ったと言っていた」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「クサイな」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「まずはそいつのことを少し調べてみようぜ」

25.
船内のリビングで、内藤は白い粉末を睨んでいた。


ξ ゚⊿゚)ξ「リュックの背中んとこに入ってたの」

(;^ω^)「こ、これは……!?」


ツンが不思議そうな顔でこちらをじっと見ている。

内藤は説明に苦慮した。


( ^ω^)「これは何ていうか……クスリだけどクスリじゃないっていうか……」

ξ ゚⊿゚)ξ「クスリ? びょうきをなおすの?」

( ^ω^)「えーと、そうじゃないんだお。僕もよく知らないけど、頭が変になる薬なんだお。

       気持ちいいけどパーになってしまう危険物なんだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「???」


ツンはよくわかっていない顔だ。まあ仕方ない。


26.
( ^ω^)「いいかお、ツン。この砂糖の事は絶対誰にも言っちゃダメだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「なんで?」

( ^ω^)「とにかくダメだお。触るのもダメだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「わ、わかった」


何とかツンを言い包めたものの、内藤は頭を抱えた。

誘拐の上に麻薬所持とは。


( ^ω^)(あのDQN親父、よりによって娘のリュックに隠すとは……)


内藤は気分を落ち着けようと甲板に出た。

椅子に腰かけ、画帳を開いて鉛筆で風景画を描き始める。


ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん、何やってるの?」

( ^ω^)「ん? 絵を描いてるんだお」


27.
ツンがやってきて内藤の画帳を覗き込む。


ξ ゚⊿゚)ξ「じょうずね」

( ^ω^)「漫画家に憧れてたころがあるんだお」


ツンはしばらく彼の手元を眺めていたが、船内に入っていった。

すぐに内藤が買ってやった色鉛筆とノートを持って戻って来ると、彼の隣に座る。

二人は並んで絵を描いた。

内藤がツンの絵を見ようとすると、ツンはさっとノートを隠す。


ξ ゚⊿゚)ξ「見ちゃだめ!」

( ^ω^)「そうかお」

ξ ゚⊿゚)ξ「できたら見せてあげるね」

( ^ω^)「楽しみだお」


それから、しばらく後。
28.
内藤は水平線を粗方描き終え、自分の作品の出来映えに満足していると、ツンが自分の絵を見せた。


ξ ゚⊿゚)ξ「見て、内藤さんだよ」

( ^ω^)「僕かお。嬉しいお」

ξ ゚⊿゚)ξ「これがツンで、それでこれがお母さんで、これがお父さん」

( ^ω^)「……」

( ^ω^)(なんてこっただお! この子はまだ親のことを忘れていないんだお。

       なんであんなクソ親を……うう、それでも一応は親ってことなのかお)

ξ ゚⊿゚)ξ「どうしたの、内藤さん」

( ^ω^)「ツン、お母さんとお父さんに会いたいかお」

ξ ゚⊿゚)ξ「……」


ツンはやはり無言だった。

再び内藤の内側にどうしようもない感情が渦巻き始める。


29.
( ^ω^)(僕はこの子の親でもなんでもないんだお……一体この子のなんだって言うんだお。

       僕なんかがこの子とずっと一緒にいていいのかお。でも僕が、僕が親になってやれば……)


親になる? 自分が?

ただ一度の幸運で手に入れたカネで生涯働く気すらない自分が?

学校にも行かせてもらえず、そんな自分を見て育ったツンが一体どんな大人になるって言うんだ?


( ^ω^)(僕にお金意外に何かあるのかお……何にもないお。本当に何にもないんだお。

       それなのにツンは絵に書いてくれて……絵? そうか、絵だお!)


思うところがあり、内藤はパソコンに向かった。

ボディペイント専用の染料をネットで買い、局止めで次に向かう港町の郵便局に送る。

数日後、それを手にした内藤はリビングにツンを呼んだ。


( ^ω^)「ツン、腕を見せるお」

ξ ゚⊿゚)ξ「……」
30.
内藤が無言で手を出すと、ツンもまた震える両腕をテーブルに伸ばした。

上着の袖をめくると、腕にところどころ黒い火傷の跡が見える。

内藤は筆を手に取って薄く下書きを始めた。


ξ ゚ー゚)ξ「く、くく、く、くすぐったいよぉ!」

( ^ω^)「動くなお。これはインド人の女性が顔にペイントする時に使う塗料なんだお」


かつて漫画家を目指した腕を活かして、内藤はツンの両腕に見事な絵を描いた。

腕に巻きつく蔦とそこに咲き乱れる花の絵だ。

火傷の黒い点は蕾や花心となった。


ξ ゚⊿゚)ξ「す、すごい……きれい……」

( ^ω^)「一ヶ月くらいは洗っても落ちないらしいお」

ξ ゚ー゚)ξ「ありがとう、内藤さん」


今度は内藤が腕を差し出した。
31.
( ^ω^)「ほい」

ξ ゚⊿゚)ξ「?」

( ^ω^)「ツンも僕の腕に何か描いてくれお。好きなものを描くといいお」

ξ ゚ー゚)ξ「いいよ。じゃあねー、内藤さんのかおをかいてあげる」


こうしてツンはその日から袖をまくったまま出歩くようになった。


⊂ニニ( ^ω^)ニ⊃「ブーンだお!」

⊂ニニξ ゚ー゚)ξニ⊃「ぶーん!」


二人で剥き出しの腕を広げ、甲板を走り回る。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


流石兄弟は港で手分けして聞き込みを続けていた。

紆余曲折を経て兄者はとうとう二人が立ち寄ったらしき弁当屋に行き着いた。

32.
(*゚ー゚)「あー、見たわ。明け方にウチでおにぎり買ってったわよ。男の人と二人連れでねー」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ほほう。詳しく頼む」


兄者が差し出したツンの写真を見、店員は覚えている限りのことを口にした。

しばらく後に流石強大は合流し、情報を交換した。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「どうだ、兄者」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「見つけたぞ。東に向かったそうだ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「東って、そりゃまたえらいアバウトだな」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「東沿いに沿岸部の港町で片っ端から聞き込みをしよう」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「やれやれ、割りに合わない仕事だぜ」


少女を連れた男は目立つ。

情報は案外簡単に集まり、数日のうちに二人は確実に獲物を追い詰めつつあることを感じていた。



33.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ケツに食い付いたぜ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「先回りして網を張ろう」


流石兄弟は小さな港町に目星をつけ、そこに宿を取って船着場を張った。

寂れた場所だ。高そうなクルーザーに乗った少女と男の二人連れが現れたらすぐにわかるだろう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ある日の夕暮れ時、内藤は食料を買い込みに港町に船を停めた。


( ^ω^)「ツンも行くかお」

ξ ゚⊿゚)ξ「ううん、待ってる」


ちょうどテレビアニメ『( ´∀`)ぼくは猛者』がいいところだったので、ツンは首を振った。


( ^ω^)「そうかお。じゃあ留守番を頼んだお」

34.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ブーン号……あの船だ!」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「男しかいないようだぞ。ガキは船か?」


流石兄弟は民宿の二階から双眼鏡を覗いていた。

ちょうどブーン号から内藤が出ていったところだ。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「まあいい、好都合だ。武器は持ったか?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「もちろん。さあ、行こう」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


すっかり日も落ちたころ、内藤は買い物袋を抱えて船に向かった。


( ^ω^)「フヒヒ、かき氷機買っちゃったお。夏と行ったらこれだお」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「よう」

( ^ω^)「ん?」
35.
はしけの所に男が一人立っている。

瞬間、内藤の背筋に冷たい電気が走った。第六感が働くってヤツだ。


(;^ω^)(うっ、もしかしてヤクザかお!?)
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「俺は兄者。あんたに話がある」

( ^ω^)「それはもしかして『砂糖のようなもの』についてかお」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ははは、いいカンだぜ。船に入りな」

( ^ω^)「わかったお」


彼に続いてブーン号に乗りながら、内藤は水中銃をしまってある棚のことを考えていた。

甲板には弟者とツンがいた。


( ^ω^)「ツン!」

ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん!」



36.
  ∧_∧
弟(´<_`  )「おっと、動くな」


内藤に駆け寄ろうとしたツンを弟者が捕まえる。


( ^ω^)「ツンに触るなお!! このゴミクズ!」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「おいおい、そんなセリフ吐ける立場か? そういうお前は人攫いじゃねえか」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「まあ落ち着け。とりあえず船を出してくれないか? 人目につくとマズイんでね」

( ^ω^)「わ、わかったお」

ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん……」


内藤は流石兄弟の指示に従い、港からやや離れた場所へ船を進めた。

これじゃ叫び声も銃声も陸まで届かない。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「『砂糖のようなもの』をこっちに渡してもらおうか。弟者、ガキを離すな」



37.
二人の手の中ではドスが鈍く光っている。


(;^ω^)(くそお、ツンを人質に取られてるんじゃどうしようもないお)
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「しかし、お前も物好きだな。なんでこんなガキさらったんだ? ロリコンか?」

( ^ω^)「……」


そう言えば深く考えたことはないが、何故だろう。

黙ったままでいると兄者は肩を竦めた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「まあいい。で、例のものはどこだ」

( ^ω^)「僕とツンの安全を保障して欲しいですお」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「俺らが欲しいのはクスリだけなんでね。お前らの命は別にいらないんだ」


内藤は胃の底がザワつくような、イヤな予感がした。


(;^ω^)(クスリを奪った後に僕らを殺す気なんじゃ……?)

38.
ツンを失うかも知れない。

そう考えるのは自分の死の恐怖が霞むくらい恐ろしかった。

何故だ? 何故こんなに他人の、彼女のことが気にかかる?


(;^ω^)(とにかくこれはマズイお。何とかしてあの子だけでも助けないと、何とかして……)


ツンと弟者は甲板にいる。そうだ、甲板……甲板には「アレ」がある。

内藤は兄者と一緒にリビングに入り、麻薬を隠した花瓶を手に取った。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ん? そんなとこに隠したのか?」

( ^ω^)「オンダルァ!!」


内藤は花瓶を抱えたまま、ものすごい勢いで甲板に飛び出した。

  ∧_∧
兄(; ´_ゝ`)「なんのつもりだ!? どこに逃げる気だ、こら」

( ^ω^)「動くなお!」

39.
内藤は甲板の柵から身を乗り出し、花瓶を海に落とすフリをした。

  ∧_∧
弟(´<_` ;)「ちょ、ちょっと待てこら! 人質がどうなってもいいのか!」
  ∧_∧
兄(; ´_ゝ`)「そいつには二千万円の価値があるんだぞ!」

( ^ω^)「動くなお! 動いたら海に捨てちまうお!」


流石兄弟は顔を見合わせた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「よし、いいだろう。“人質交換”と行こうじゃないか」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「いいのか?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「しょうがないだろ」

( ^ω^)「じゃあ、ツンを離せお」


内藤はツンに目配せした。

ツンのすぐ側にある、鉄の箱に視線をやる。

彼女が震えながら頷いたのを確認してから、内藤は花瓶を差し出した。
40.
  ∧_∧
弟(´<_`  )「チッ。ほらよ」


弟者がツンから手を離した瞬間、内藤は叫んだ。


( ^ω^)「ツン、紐を引っ張れお!!」


ツンが言われた通りにすると、箱の中でパンという破裂音がした。

科学反応によって爆発的な勢いで発生したガスがボートを風船のように膨らませる。

  ∧_∧
弟(´<_` ;)「うぶほ!?」


小さなツンはすぐに逃げ出したが、体が大きい分だけ動きが遅れた弟者は

圧し掛かってきたボートに押し潰された。

  ∧_∧
兄(; ´_ゝ`)「てめえ!」


兄者が刃物を振り上げると、内藤は花瓶を海に落とした。
41.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「あっ……」


視線が反れた瞬間、内藤は全身の力をかけて兄者に掴みかかった。

彼の襟とズボンのベルトを掴み、海へ放り込む。

バシャーン!

  ∧_∧
弟(´<_` #)「野郎、ぶっ殺……」
  ∧_∧
兄(; ´_ゝ`)「あばば、あぼぶばばばばば!!」
  ∧_∧
弟(´<_` ;)「い、いかん。兄者は泳げないんだった」


ボートの下から這い出した弟者はベルトをロープ代わりにして兄者を引き上げた。

内藤はすでにツンを抱えてリビングに駆け込んでいる。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「くそ、麻薬が! 組長に殺されるぞ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「その前にあいつらをぶっ殺してやる!」

42.
リビングに入ろうとして二人は足を止めた。

水中銃を構えた内藤が狙いをこちらにつけていたからだ。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「くそ……」

( ^ω^)「二人とも海に飛び込めお」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「そうしたいのはやまやまだが、俺は泳げないんだよ!」

( ^ω^)「ちょうど良いことに、そこにボートがあるお」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「ここは言う通りにした方がいいんじゃないか、兄者」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「くそ!」


二人が海に飛び込んだのを見計らってから、内藤はボートを落とした。

甲板の上から二人に声をかける。


( ^ω^)「麻薬のことは悪かったお」



43.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「てめえ、必ずぶっ殺すからな!」
  ∧_∧
弟(´<_` ;)「やめろ兄者、ボートに銛を打ち込まれるぞ」

( ^ω^)「そこで取引したいんだお。あの麻薬、僕が倍の値段で買ってもいいお」


流石兄弟は再び顔を見合わせた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「お前、掛け算できるのか?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「四千万円だぞ?」


内藤はリビングに戻り、小切手に4000万円の金額を書き込んだ。

それを空っぽのペットボトルに入れてボートに投げ込む。

二人はそれを目を丸くして見ていた。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「こいつが不渡りじゃないって証拠は?」

( ^ω^)「不渡りだったらその時は僕を殺しにくればいいお。

44.
( ^ω^)「それをあげるから、ツンのことにはもう二度と手を出さないって約束して欲しいお」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ふうん。まあ、これなら組長も納得するだろうな」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「俺も別に文句はない」

( ^ω^)「取引成立ってことでいいかお」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「いいぜ、クソ野郎。俺の背広のクリーニング代はサービスだ」


流石兄弟はオールをこいで岸へ向かい、ブーン号には内藤とツンが残った。

ツンが泣きながら内藤へ駆け寄る。


ξ ;⊿;)ξ「内藤さん、怖かっ……ひぎい!?」

( ;ω;)「ぶおおおおおおん!!!」


内藤は野獣の雄叫びのような泣き声をあげてツンに抱き付いた。

( ;ω;)「怖かったお! 死ぬほど怖かったお!! おしっこちびったお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「だ……だいじょうぶだよ、もう。あのひとたち、いっちゃったから……」

45.
( ^ω^)「う、うぷ……」

ξ ゚⊿゚)ξ「!?」

(  ゚ω゚)「おげええええええ」


内藤は船の柵に捕まって思うさま吐いた。

今更こみ上げてきた恐怖が胃腸を直撃したらしい。


ξ ゚⊿゚)ξ「だ、だいじょうぶ?」

( ^ω^)「慣れないことはするもんじゃないお。セガールのようにはいかないお……」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


翌日から内藤は熱が出て寝込んだ。

まったくもって慣れないことはするもんじゃない。

ベッドでうめいているとツンが洗面器を持ってきた。


46.
ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん、タオルだよ」

( ^ω^)「ありがとうだお」


額に冷たいタオルを当ててもらいながら、内藤は意を決した。

言わないままでいても、彼女はいつか知ることになる。


( ^ω^)「ツン、お前の親はもういないんだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「?」

( ^ω^)「ママはパパに殺されたんだお。パパはその罪で警察に捕まってるお」

ξ ゚⊿゚)ξ「……??」


よくわかっていない顔だ。彼女の理解を超えているらしい。

内藤もまたどんな顔をすればいいのかわからない。


( ^ω^)「えーと、えーと、だから、その……」


47.
その晩、二人は一緒に寝た。

ツンは内藤の腕の中でずっと泣いていた。


( ^ω^)「大丈夫だお。お前は一人じゃないお」


内藤はどうすることもできず、彼女の髪を撫でながらそう囁き続けた。

同時にあるひとつのことを強く決心する。


( ^ω^)(愛別離苦だお)


愛する者と引き裂かれることの悲しみは、愛する者と出会ってしまった瞬間から不可避となる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


それから数日は穏やかに過ぎていった。

ある日の夜、ブーン号は大きな港町についた。

出入りする大小様々な船の群れの中に混じり、内藤とツンは久しぶりに上陸を果たした。
48.
ξ ゚⊿゚)ξ「どこへ行くの?」


内藤は答えない。

人々の雑踏が溢れる夜の通りを歩き、二人は警察署の前で止まった。

内藤はツンの前にしゃがみ込んで視線を合わせた。

眼には悲しい決意が満ちている。


( ^ω^)「ツン、この手紙を警察の人に渡すんだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「いいけど、内藤さんは?」

( ^ω^)「僕は一緒に行けないんだお。ここでお別れだお、ツン」

ξ ゚⊿゚)ξ「……」


ツンは子供のながらに決別を悟ったらしい。

内藤の首に抱き付いた。


ξ ゚⊿゚)ξ「ツンは内藤さんと一緒にいたい」
49.
内藤は心の底にしぶとく残った未練が、自分の体を強烈に引っ張るのを感じた。

こんなんでなくても、何か別の……他に方法はあるだろ?

自分はツンと一緒にいたいんだろ?

一人になりたくないんだろ?

涙がこぼれないように内藤は目をぎゅっと閉じ、言った。


( ;ω;)「いつか、いつか僕がまともな人間になったら……ツンと一緒にいても、誰にも

       恥じることのないような立派な人間になったら、その時は必ず迎えに行くお」

ξ ゚⊿゚)ξ「……」

( ;ω;)「だからしばらく一緒にいられなくなるけど、ツンは何も悪くないお。

       僕はツンが大好きだし、ツンは世界一良い子だお」

ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん」

( ;ω;)「許して欲しいお。それじゃあ……」



50.
これ以上一緒にいたら決意が揺らいでしまう。

内藤はツンを突き飛ばすようにして離れ、歩き出した。


ξ ゚⊿゚)ξ「内藤さん!」


数歩離れたところで呼ばれて内藤は振り返った。

ツンは眼にいっぱいに涙を浮かべて、それでも笑っていた。

袖をまくり、消えかけた花のペイントを露にして、両手をいっぱいに広げる。


⊂ニニξ ゚ー゚)ξニ⊃「ブーンやって! ブーン!」

⊂ニニ( ^ω^)ニ⊃「ブ、ブーン……」


ツンは必ず迎えに行くという内藤の言葉を何一つ疑うことなく信じたのだ。

内藤は俯いたまま、人込みの中を走り去った。


( ;ω;)「ぢくじょー! 愛することはその身を削るおー!!」

51.
その後、内藤はツンの学費を残し、貯金をすべて犯罪被害者児童の支援団体に寄付した。

残ったのはブーン号と自分の身一つ、それからツンとの絆。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


あれから十年近くが経つ。

内藤は国内線のフェリーの船員として働いていた。

来年になれば10年以上の職務従事という資格を満たし、海技士の免許試験が受けられる。

船長の夢まであと一歩だ。

仕事が休みのある日、内藤はブーン号を貸し倉庫から引っ張り出してきた。


( ^ω^)「よおし、行くお!」


給料のほとんどはこいつの維持費に食われたが、どうしても手放すことができなかったのだ。

港に運び、燃料を入れて海に下ろす。


52.
季節は初夏。いい天気だ。

ウミネコがブーン号のあとを追ってくる。

『内藤さんへ』と書かれた手紙をポケットに入れて、彼はとある港町へ向かっていた。


( ^ω^)「お」


船着場のところでセーラー服の少女が一人、手を振っている。

彼女は両手をいっぱいに広げてブーンをやって見せた。






さあ、会いに行こう。

綺麗になったあの子に、会いに行こう。




おしまい
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Author:(゚q 。川カンザイ
完全犯罪(カンザイ)
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