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ξ ゚⊿゚)ξと一味が銀行を襲うようです

映画「インサイド・マン」の元ネタになった事件があって、それが世界まる見えだかアンビリーバボーだかで特集されててそれを見て思いついたんだったかな。


1.
今夜は学生時代からの友人と飲みに行く日だ。

ツンが地元の居酒屋VIP屋に入るとすでに仲間たちが揃っていた。


( ^ω^)「おっ、噂をすればだお」

('A`)「遅いぞ、ツン」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「まあ遅刻はいつものことだ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「時間を守ったためしがない」


好き勝手なことを言う男どもの顔はすでに酒が入って紅潮している。

懐かしい匂いがした。

すべてが醤油で味付けされたツマミと安酒の匂い。

コートを脱いでツンは彼らの輪に加わった。


ξ ゚⊿゚)ξ「うるさいわね、さっきまで編集と打ち合わせしてたのよ」



2.
社会に出て数年、彼らはもう長いこと負け続けていた。

背負ったスコアボードはいつのまにか真っ黒で、白星がついた部分は数えるほどしかない。

舌に乗っかるのは暗いニュースばっかりだ。

でもこの居酒屋にいる間だけはそんなことは関係ない、

お互い人生にも社会にも何の不満もないって顔で談笑する。



( ^ω^)「ツン、漫画はどうだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「ダメね。ちっとも人気出ない」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「路線が悪いんだよ。NANAのパチモンなんかやめちまえ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「劣化コピー感は否めないな」

('A`)「男に作者補正かかり過ぎなんだよ、あんなカンペキ超人が現実にいるか?」

ξ ゚⊿゚)ξ「ホント好き勝手言ってくれるわよね、あんたたちって」




3.
ツンは駆け出しの漫画家だ。

といっても歴代総理大臣の名前を一つも挙げられないくせに漫画家の名前なら

百は言えるマニアでもなければその名を知る者はいないマイナー作家だが。

ようやく貰えた連載は早くも雑誌の一番後ろに追いやられ、すでに打ち切りを待つ状態だ。

でも内心ツンは自分自身でもギロチンが落とされる日を待ちわびている気がする。

もうこんな失敗作は放り出したいし、編集の口出しで話を捻じ曲げられるのはうんざりだ。


ξ ゚⊿゚)ξ「本当に描きたいのはこんなんじゃないのになー。流石兄弟はどうなの最近」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「工場か? 厳しいな」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「楽じゃあない」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「みんな安い中国産に乗り換えちまうんだ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「中国産の肥料なんてダンボールさ」





4.
流石兄弟は卒業してから父親の工場を継いだ。

化学肥料を作っているのだが町工場がドミノ倒しみたいに潰れる世の中だ。

隣も向かいも閉鎖した。

次に倒れるドミノはどう考えても二人の工場だった。

ここんところ目の前でチラつく「倒産」の文字に睡眠薬が手放せない夜が続いている。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「工場のことを考えてる時は溜め息だけで呼吸してるようなもんだ、ほんと」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「だから最近は中国のニュースからは眼が離せない。朝刊取るたびに…」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「今日こそは『中国産の肥料から有害物質が…』って見出しだと期待してる」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「ウチは朝日新聞だって今朝気付いたけどな、ハハハ!」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「例えガイガー探知機が反応したって載りゃしねえ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「ドクオはどうだ? ちゃんと仕事行ってんのかお前は」

('A`)「バカにすんなよ。自分の食い扶持くらいは稼いでいる」



5.
多分この中で一番スコアボードが黒いのがドクオだろう。

彼のにはもう白星を書き込む余裕がない。墨でもこぼしたのかってくらいだ。

こいつの頭の中の回線は経路や過程がどうあれ、結局は一つの場所にたどり付く。

つまりいつだって結論は暴力の行使なのだ。

「バカにした奴→殴る」「疑いをかけた奴→殴る」「にやにやしながらこっちを見た奴→殴る」

こんな性格だからどんな仕事も長続きせず、バイトを転々としている。

借金もかなりある雰囲気だ。

だが彼はある二つのルールを絶対に曲げなかったおかげで仲間の中にいられた。

友達を殴らない。友達からカネを借りない。

ドクオは問題は多いがイイ奴だ。他の四人はそう思ってる。


('A`)「俺の話はもういい。内藤は?」

( ^ω^)「相変わらず恨みを買うのが仕事だお」



6.
内藤はスコアボードの白星が最も多いんじゃないかとみんな密かに思っている。

大手銀行に就職したのだからその羨望はあながち間違ってもいない。

だが彼自身はこの仕事にプライドを持てないでいた。

カネのある人間にカネを押し付け、カネのない人間にはそっぽを向く。

つまり貯金箱が一杯なところには無理矢理カネを押し込み、

貯金箱が空っぽで本当にカネが必要な奴は無視するというのが最近の銀行だ。

多分この町で首釣った奴と港でセメント抱いて沈んでいる奴のいくらかは

内藤の顔を悪魔として記憶しているだろう。


( ^ω^)「銀行なんてつまり金貸しだお。みんなベニスの商人だお」

ξ ゚⊿゚)ξ「みんないつも通りってことね」

('A`)「何一つ好転していないとも言うがな」





7.
近況を話し終えると五人は笑った。

自分たちが抱えている問題なんて本当はどうってことないって顔だ。

本当はどうってことある。大いにある。

でも今だけは現実に疲れ切っていることを忘れたかった。

重い話は打ち切って彼らは脳味噌をアルコール漬けにし、バカ話に興じた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「そうだ、こんなのはどうだ? 内藤の銀行をみんなで襲うんだ」

ξ ゚⊿゚)ξ「今度は何の映画の影響よ。オーシャンズ? 狼たちの午後?」

('A`)「いいねえ、最後はマシンガン撃ちまくりながら蜂の巣にされようぜ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「クラシックな方法で行くなら金庫室まで穴を掘るとか…」

( ^ω^)「掘るのはともかく壁をどうやって破るんだお」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「爆弾で吹っ飛ばすさ。ニトログリセリンって簡単に作れるんだぜ」

ξ ゚⊿゚)ξ「硫酸を冷やすのよね、本で読んだわ」



8.
( ^ω^)「コンクリの厚さが50cmあるとして、どんだけの爆発を起こす気だお」

ξ ゚⊿゚)ξ「東京タワーのてっぺんにいても爆音が聞こえるわね」

( ^ω^)「通報するよりずっと手っ取り早く警察を呼べるお」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ツルハシでちょっとずつ削っていけば…」

ξ ゚⊿゚)ξ「何年かかるのよ、それ」

('A`)「待て待て、パイナップルアーミーって漫画にあった超音波なんとかなら…」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「それはお前んちの近所でトイレットペーパーとか缶詰みたいに売ってんのか?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「手に入るもので考えてみよう。爆弾は俺と弟者で作れるとして…」

('A`)「車は内藤が持ってるな。あのボロ、なんつったっけ」

(#^ω^)「僕の2CVたんをバカにすんなお。正攻法なら武器がいるお」

ξ ゚⊿゚)ξ「今時包丁じゃコンビニのバイトだって脅せないわ」


いつしか冗談であることも忘れ、時が経つのも忘れて彼らは話し合った。



9.
ツンは翌朝を内藤のアパートで迎えた。

別に二人は付き合ってるわけじゃない。

まあ、よくある曖昧でハッキリしない関係だ。

友人以上ではあるかも知れないが恋人同士ってわけじゃない。

ツンと内藤は向かい合って朝食を口にしていた。


( ^ω^)「ツンの料理下手は治らない病気だお」

ξ ゚⊿゚)ξ「エイズみたいに言わないでよ」

( ^ω^)「昨日はちゃんとゴム使ったお」

ξ ゚⊿゚)ξ「あんたの品の無さもエイズ級ね」


二人は無言で焦げた目玉焼きを食べた。

残らず食べ終えてから内藤が言った。


( ^ω^)「職場で結婚の話を持ちかけられたお」

10.
食後にお茶を飲んでいたツンの手が止まった。


ξ ゚⊿゚)ξ「そう」

( ^ω^)「…」

ξ ゚⊿゚)ξ「何よ、とめて欲しいの?」

( ^ω^)「ちょっと期待したお」

ξ ゚⊿゚)ξ「その話なら前にもしたじゃない」


結婚の話は以前にも出たことがある。

その時の結論は二人とも覚えている。


ξ ゚⊿゚)ξ「不幸な人間同士はくっついちゃいけないわ。あんた今、幸福?」

( ^ω^)「…」

ξ ゚⊿゚)ξ「ワリを食うのは子供なのよ」



11.
自宅に戻ったツンは仕事机についた。

内藤の言ったことが気になったが、無理矢理忘れて仕事に集中することにした。

漫画を描く。

流石兄弟の言う通りだ。

編集者の言うままに売れ筋のコピー品を書いてきたがもう限界だ。

今月分の24ページを挙げたあと、ツンは受け渡しの際に自分から言った。


ξ ゚⊿゚)ξ「すいません、もうダメです。打ち切って下さい」

( ゚∀゚)「そうですか。実はこっちからその話をしようと思ってたとこです」


担当編集者はほっとして言った。

死刑囚が自分からギロチンのロープを切ってくれたのだから気が軽くなったのだろう。


( ゚∀゚)「じゃ、再来月で終わりってことで。また電話しますから」



12.
編集が帰った後、ツンは構想ノートを取り出した。

これまで書き溜めたアイデアはいつだって思い付いた時点ではダイヤモンドだ。

それが何故、最後はただの石炭の欠片みたいになってしまうのだろう。


ξ ゚⊿゚)ξ「また持ち込みからやり直しか」


ノートからアイデアの断片を拾い集めて頭の中で再構築する。

少しもぱっとするものがない。スモ―キーマウンテンを掘り返してるみたいだ。

机にうつ伏せになって頭を抱える。


ξ ゚⊿゚)ξ「もうパチモンと劣化コピーの量産は止めにするのよ。何か奇策は…」


グズグズと考えているうちに飲み会でしたバカ話のことが浮かんできた。

内藤の銀行を襲う話だ。




13.
ξ ゚⊿゚)ξ「ヒーローとヒロインは銀行強盗…『仕事』を進めるうちに惹かれ合う」

ξ ゚⊿゚)ξ「うん、新しいわ。レディコミ系ではこれまでにない設定ね」

ξ ゚⊿゚)ξ「強盗のトリックに趣向を凝らして、ミステリーの要素を加味して…」


煙草に火を付ける。

部屋を歩き回る。

コーヒーを流し込む。

混沌と渦巻く濁流からツンは憑かれたようにストーリーを引っ張り挙げた。

食事するのも忘れてノートにネーム(下書きの下書きみたいなもん)を入れてゆく。

描いては直し、直しては描く。

日付の変更も迫ったころにそれは完成した。


ξ ゚⊿゚)ξ「できたっ!」




14.
一方、こちらは流石兄弟の工場・流石化学。

その隣にある研究所とは名ばかりの掘っ立て小屋に篭る二人の姿があった。

兄者がパソコンのキーを叩き、弟者はテーブルの上で何やら色々なものを調合している。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「調合したぞ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「これだ、この組み合わせだ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「流石だよな俺ら」


流石兄弟は努力の甲斐あってとうとう工場再建への希望を導き出した。

可能な限り化学合成物質を減らして作ったほぼ天然の肥料。

有機栽培だの健康食だののブームの今、こいつは当たるに違いない。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「これなら原料もタダみたいなもんだ。行けるぞ!」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「だがこのままではマックで描いた二次美少女だぞ、兄者」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「絵に描いたモチって普通に言えキモオタ」

15.
この肥料は流石化学にある機械では作れない。

新しく買い換える必要があるのだが当然、彼らにそんなカネはなかった。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「銀行にかけあってみよう。内藤に頼めば何とか…」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「貸してくれるか? 昨日もあんなこと言ってたし」


チャーラー♪ ヘッチャラー♪

  ∧_∧
弟(´<_`  )「ツンからメールだ。都合がつく時に会いたいとさ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「飲み会好きだなあいつは!」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「いや、何か話があると言ってる」


同じ頃またもバイトをクビになり意気消沈していたドクオ、

融資の希望をどうやって断ればいいか胃の痛い内藤にも同じメールが届いていた。




16.
全員の都合がついたある日の夕方。

四人は流石化学の工場内にある休憩所にいた。


( ^ω^)「寒いお! 何でこんなとこで待たなきゃなんないんだお」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「『こんなとこ』とはないだろ、おい」

('A`)「お、来たぞ」


折り畳みテーブルに着いてしばらくすると、今日も当たり前のように遅刻したツンが来た。


ξ ゚⊿゚)ξ「ゴメンゴメン、コピー機が動かなくって。はい、これ回して」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ん?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「お前の漫画か?」

ξ ゚⊿゚)ξ「そう。とりあえずはそれを読んでちょうだい」


ツンが配ったのは先日自分で書いたネームのコピーだ。

一同は同時に読み始め、読み終えた。
17.
('A`)「いいんじゃないか? このオチには思わず俺も唸ったぜ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「飲み会の話が元ネタだな。で?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「まさかこれを読ませるためだけに集めたんじゃあるまい」

( ^ω^)「ちょっと待つお。こ、これは…」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「どうした、内藤」


内藤は両手で顔を押さえ、指の隙間からツンを見上げた。


( ^ω^)「ツン、これを実行に移すとか言うつもりかお」

ξ ゚⊿゚)ξ「可能な限り現実的なプランにしたわ。そのつもりよ」


全員が疑った。一つは自分の耳を、もう一つはツンの正気を。

沈黙が落ちてお互いに顔を見合わせる。

「誰でもいい、何か言え」「ツンを止めろよ」

眼がそう言っている。

18.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)(内藤、言えよ。お前の会社だろ)
  ∧_∧
弟(´<_`  )(ツンはお前の女だろ、お前が言うのが筋だ)

( ^ω^)(うう、あれは僕に口火を切れって言ってる眼だお)

( ^ω^)「あ、あー…ツン、えーと」

('A`)「面白え! 俺はやるぜ!」

( ^ω^)(このバカ!)
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)(このバカ!)
  ∧_∧
弟(´<_`  )(このバカ!)


ドクオは椅子を蹴って立ち上がった。


('A`)「こんなスゲエ計画を見逃す手はないだろ、みんな!」

ξ ゚⊿゚)ξ「やっぱりドクオ君はわかってくれたわね。あんたたちはどう?」



19.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「…ツン、カネは山分けするとして一人頭いくらだ?」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「おいおい、兄者!」

ξ ゚⊿゚)ξ「それは内藤に聞いてみないと」

( ^ω^)「月末なら金庫に一億ちょいはある筈だお」

('A`)「ってことはお一人様二千万円か!?」

( ^ω^)「金塊もあるって聞いたけど…僕は下っ端だからよくわからないお」

( ^ω^)「でもこんなのはバカげてるお! 現実的じゃないお、犯罪だお」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「兄者、俺らが捕まったら妹者が…」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「う、うーん、そうだな。あいつは大学に行かせてやりたいしな」

('A`)「お前ら何言ってんだよ、チャンスじゃないか」


ツンの拳がテーブルに振り落とされ、煮え切らない空気を叩き割った。




20.
ξ ゚⊿゚)ξ「私たちは正攻法で挑んで負け続けてきた。気がつけば九回裏0-3フルカウントよ」

( ^ω^)「絶望的だお」

ξ ゚⊿゚)ξ「でも今、塁はすべて走者で埋まってる」

ξ ゚⊿゚)ξ「バットはあと一回しか振れない。これが最初で最後のチャンスなのよ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「…わかった。一晩考えさせてくれ」

ξ ゚⊿゚)ξ「一晩だけよ。明日中に連絡を」


五人はのろのろと席を立った。


('A`)「ツン、俺はやるからな」

ξ ゚⊿゚)ξ「わかってるわ。ありがとう、ドクオ君」


弟者がそんな二人にぼそりと言い残した。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「誰でもお前らみたいに捨て身にはなれないよ。失うわけにはいかないものがあるんだ」


21.
翌朝。…というか、昼近く。

ツンはひどい気分で目が覚めた。

枕元にはビールの空き缶が転がっている。

まったく覚えていないが昨夜は相当飲んだらしい。


ξ ゚⊿゚)ξ「何よみんな。バカにしてさ…おえっぷ!」


ツンは実のところみんな快諾してくれると密かに期待していたのだ。

長年の友人だしもっと信用があると思っていたが…

布団から抜け出し、胃薬を飲み、机に向かう。

連載の最終回に取りかからねばならない。

ネームを切りつつ担当編集者からの電話を待っていると、ケータイが鳴った。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ツンか?」



22.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「散々迷ったんだが、まあ…この工場は父者から受け継いだ唯一の形見だしな」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「潰すわけにはいかないんだ、どうしても。カネがいる」

ξ ゚⊿゚)ξ「やるのね? 弟者君も納得してる?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ほらよ、弟者。ツンだ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「俺だ。まあそういうことになった」


ツンは思いきり机の縁を蹴った。

回転椅子をメリーゴーラウンドみたいにくるくる回しながら、一人ガッツポーズを取る。

  ∧_∧
弟(´<_`  )「内藤から連絡はあったか?」

ξ ゚⊿゚)ξ「いいえ、それがまだなの」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「あいつのことだから通報だけはしないだろうけど…まあ、待つさ」

ξ ゚⊿゚)ξ「ええ。今日一杯待って、それでも連絡がないなら彼は無しで進めるわ」



23.
ツンは待った。

待ちながら考えた、内藤が結婚を止めて欲しがっていたことを。

彼が自分の知らない女と一緒になるというのは確かに変な気分だ。


ξ ゚⊿゚)ξ「結婚式に押しかけちゃうってのはどうかな。ウェディングドレス着てハーレーに乗って」

ξ ゚⊿゚)ξ「花婿をさらっちゃうの。映画の『卒業』のラストシーンみたいにさ」

ξ ゚⊿゚)ξ「ありゃ男女の立場が逆だったかな…ま、どっちにしろ私のガラじゃないわ」


時計を見上げる。

今日が終わるまであと八時間。


――――――――――――――――――――――――――――――――


一方その頃、内藤が勤める2ch銀行VIP支店。




24.
内藤は早めに仕事を終えて支店を出、自分の車に向かった。

古めかしいシトロエン2CVに近付くとドクオが物影から出てきた。

まるでロープレのモンスターみたいにいきなりだ。


( ^ω^)「脅かすなお! ぶちスライムかと思ったお」

('A`)「こりゃまた微妙なモンスターだな」

( ^ω^)「まあとにかく車に入れお。立ち話は冷えるお」

('A`)「ああ、そうしてくれるとありがたい」


二人は車内に入った。


( ^ω^)「ツンに頼まれたのかお」

('A`)「説得はしに来たがツンは関係ない。俺自身の意思さ」





25.
( ^ω^)「僕は今の生活で十分だお。カネのために危ない橋は渡れないお」

('A`)「カネのためじゃねえ、お前はツンのためにやるんだよ」

( ^ω^)「?」

('A`)「…人知を超えるバカだな、お前は」


ドクオは苛立たしげに溜め息をついた。


('A`)「ツンはお前と一緒になりてえんだよ、わかるだろ」

('A`)「だがあいつの性格からして間違ってもそんなこと言わない。捻じ曲がってるからな、性根が」

( ^ω^)「まあ僕も内心『飴細工の心を持つ女』と思っているお」

('A`)「だろ?」


お互いに顔を見合わせ、笑い合う。


( ^ω^)「それでどうしろって言うんだお」


26.
('A`)「あいつは自分で自分を大事にできない種類の女だ」

( ^ω^)「…」

('A`)「ワガママを見届けてやれ。そういう男が必要だ」

( ^ω^)「ドクオはそれでいいのかお?」

('A`)「?」

( ^ω^)「だってお前、ツンの事…」

('A`)「学生時代の話を蒸し返すんじゃねえ、恥ずかしい!」

('A`)「電話しろよ。じゃあな」


ドクオは転がるようにして車から逃げ出した。

『学生時代の話』には心臓を掻きむしられる思いらしい。


一人取り残された内藤はハンドルに突っ伏して考え込んだ。




27.
数日後、彼らは流石化学にて再び一同に介した。

ちょっと眼を潤ませたツンが頭を下げる。


ξ ゚⊿゚)ξ「みんな、ありがと。本当にありがと」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「気にすんな」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「これも腐れ縁って奴だ」

('A`)「内藤も結局折れたしな」

( ^ω^)「しょうがなくだお。お前らの名前をニュース速報で見たかないお」

ξ ゚⊿゚)ξ「それでもいいわ。ありがとう、内藤」

( ^ω^)「それよりもう一度プランを話し合うお。おさらいだお」

('A`)「待った! その前に決めときたいことがある」

ξ ゚⊿゚)ξ「何?」

('A`)「カネの分配だ。後でモメるのはゴメンだぜ」



28.
協議の結果、報酬は千円単位でキッチリ山分けということになった。

自分の方が危険な仕事だったからもっと寄越せとかそういうのは無しだ。

強盗に貴賎無し。


ξ ゚⊿゚)ξ「それと私はお金はいらないわ。必要経費だけで結構」

( ^ω^)「へっ?」

ξ ゚⊿゚)ξ「この事を元に漫画を描くの。決まってるでしょ」

ξ ゚⊿゚)ξ「強盗自身が描くんだから世界一リアリティのある漫画になるわ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「なるほど、露伴先生も納得の理屈だな」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「ってまさかお前、今回の計画は…」

ξ ゚⊿゚)ξ「えっ? 最初から漫画の題材にするつもりだったけど」

('A`)「お前クモの内蔵とかナメてないか?」





29.
( ^ω^)「でもそれじゃ作者が犯人だってすぐバレちゃうお」

ξ ゚⊿゚)ξ「そんなの簡単よ。私がこの事件を取材して書いたことにすればいいもの」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「…まあ、動機は人それぞれって事で」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「話を先に進めよう。まず何からする?」


内藤が手に入れてきた2ch銀行VIP支店の見取り図を前に改めて計画を練る。

最初に彼らがしたことは銀行のすぐ裏手にあるアパートの一階を借りることだった。

偽名で借りたその部屋には『ツンデレ通信販売社』というプレートが降りた。

大家にはヤフオクで中古品を売る会社と説明してある。

銀行を襲う日、暗号名「パーティの日」までその部屋の前ではひっきりなしに

ダンボールが行き交い、バンに積まれてどこかへ運ばれていった。







30.
流石兄弟は郊外にある貸し倉庫へやってきた。

流石化学が借りているもので、あたりには果てしなく畑が広がっている。

二人は今は使われていない荒れ果てた畑の持ち主に会った。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ウチは化学肥料作ってるんだけど…」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「この畑を実験用に貸して欲しいんです」

(´・ω・`)「ああ、別にいいよ。でもここはもう土が死んじゃってるからねえ…」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「それを甦らせるのが俺たちの目標なんです!」


まんまと畑を借り受けた流石兄弟はしょっちゅうやって来ては持ち込んだ土をまいた。


(´・ω・`)「もう何をやってもダメだと思うけどねえ」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「いいえ、この肥料なら変えられます!」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「任せて下さい!」



31.
ブーンは携帯電話に偽装したGPSを手に職場のあたりを歩き回った。

同僚に何をしているかと聞かれれば、コンビニ弁当は飽きたので定食屋を探していると答える。


( ^ω^)「よし、位置はズレてないお。順調だお」


ドクオは身元を偽ってボーガンを二丁手に入れた。

銃はどうやっても手に入りそうにない。

日本ではこのへんが限界の凶器だ。


('A`)「ボーガンで強盗とは締まらねえな…」


だが矢は太く、殺傷力は十二分にありそうだ。

彼の仕事はまだまだ他にもある。

ドクオは筋肉痛で重たい体を引き摺ってツンデレ通信販売社に向かった。




32.
そして再び流石兄弟。

流石化学の実験室で二人は薬品を混ぜていた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「そっとだぞ。処女を扱うようにそっとだぞ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「処女なんか抱いたことないぞ、兄者」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「じゃあ童貞のチンコでもいい」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「それも他人のは触ったことないぞ」


ニトログリセリンは非常に不安定な物質で多少の衝撃や熱で爆発するが、

製造の過程である手順を踏むと威力はそのままで安定させることができる。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「よし、これで完成だ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「爆弾は全部できあがりだな」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「さあ、次はツンデレ通信販売社だ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「やれやれ。でもパーティの日までもうすぐだしな…」

33.
そして『パーティの日』前夜。

五人は居酒屋2ch屋に集まった。


ξ ゚⊿゚)ξ「これで準備はみんな終わったわね。みんなお疲れさん」

('A`)「本当に疲れたぜ! マッチョになっちまった」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「飲みすぎるなよ、明日に残るぞ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「二日酔いの強盗なんてシャレにならん」

ξ ゚⊿゚)ξ「ブーンもお疲れ」

( ^ω^)「ああ、うん…」

('A`)「まだ後悔してんのか、お前?」

( ^ω^)「いや、もう腹くくったお。やってやるお」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「じゃあ浮かない顔すんなよ」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「きっと成功するさ」



34.
軽めの前祝いが済むとそれぞれ帰宅した。

ツンと内藤は何となく同じ方向へ向かって歩き始めた。

街はこんな時間でも賑わっている。

夜気は凍て付くように冷たくとも、人々の吐息には幸福が溶けているような気がした。

不意に内藤が言った。


( ^ω^)「僕、この仕事が終わったら結婚するんだお…」

ξ ゚⊿゚)ξ「そう。私は殺人犯がいるかも知れないから自分の部屋で寝るわ」

( ^ω^)「僕は本気で言ってんだお」

ξ ゚⊿゚)ξ「ええ、そうね」


内藤は何かを聞いて欲しいような顔をしている。

さりげなく手首の傷を見せるメンヘラ女みたいだとツンは思った。




35.
ξ ゚⊿゚)ξ「(聞いてあげるわよ、もう…)式はいつ?」

( ^ω^)「彼女はクリスマスイブにしようって言ってるお」

ξ ゚⊿゚)ξ「バカ女ね」

( ^ω^)「そういうこと言うなお。お前には夢がないお」

ξ ゚⊿゚)ξ「違うわ。なんとなく最近思うんだけど…」

( ^ω^)「?」

ξ ゚⊿゚)ξ「私たちは夢をかなえることも諦めることもできなかった」

ξ ゚⊿゚)ξ「何となく中途半端なとこを漂ったまま、時間を浪費し続けてきたのよ」

ξ ゚⊿゚)ξ「お金はない、家庭はない、恋人もいない、社会的地位もない」

ξ ゚⊿゚)ξ「もう気がついたら夢しか残ってないのよ」

( ^ω^)「何かちょっと悲しいお」

ξ ゚⊿゚)ξ「そうね。そうかもね」




36.
( ^ω^)「それで結婚のことだけど…」

ξ ゚⊿゚)ξ「まだ言ってんの?」

( ^ω^)「僕にとっては重大問題だお」

ξ ゚⊿゚)ξ「ねえ内藤、あんたって昔からそうだけど、私を自動販売機みたいに思ってない?」

ξ ゚⊿゚)ξ「あんたがお金を入れてスイッチを押せば何でも望み通りの答えが出て来るっての?」

( ^ω^)「…」

ξ ゚⊿゚)ξ「式には行けないわ。悪いけど。じゃあ、また明日」


内藤はツンが響かせるヒールの音を見送った。

カツカツという冷たく硬い音はいつまでも彼の耳の中に残った。

それはだんだん遠ざかり小さくなってゆく。

それなのに絶対消えないのだ。

ただただ、遠く小さくなってゆく。



37.
2ch銀行VIP支店の土曜日の営業は昼一時までだ。

閉店十分前にその車は銀行の前で停止した。

ツンとドクオだ。

二人はスキーマスクを被ってボーガンとボストンバッグを手にし、車を降りた。

銀行に飛び込むや否やドクオはカウンターに飛び乗った。


('A`)「カウンターから離れろ、警報機から離れるんだよ! 手を上げろ、下げるんじゃねえ!」


店内では終業時間前の気だるいムードが一変した。

どいつもこいつも湯上りに氷水をぶっかけられたような顔をしている。


('A`)「お前ら聞こえてねえのか、離れて壁際に並べ!」

( ^ω^)「い…言う通りにするんだお」


内藤が受け付けの銀行員に対して命令に従うよう促した。


38.
ξ ゚⊿゚)ξ(さっすがドクオ君、こういうときは頼りになるわ)

('A`)「よし、カーテンを閉めな。窓のは全部だ、早くしろ」


カーテンが閉ざされるとツンが見張り、ドクオが一人ずつガムテープで手足を縛った。

店内に残っている人数は店員・客・警備員合わせて十数人。

トイレなどを調べて人が残っていないことを確かめるとドクオは人質にボーガンを向けた。


('A`)「支店長はどいつだ? 誰か答えろ!」

( ^ω^)「きょ、今日はいないんですお…休みですお」


ドクオは内藤に目をつける素振りをした。

従順に尻尾を振る犬を見付けたって顔で彼を椅子に座らせる。


('A`)「監視カメラの位置を教えろ、全部だぞ。一つ残らずだ」

( ^ω^)「わかったお、わかったからそれをこっちに向けないで欲しいお!」


39.
内藤の言った通りにカメラを黒スプレーで塗り潰す。


('A`)「おい、金庫はどこだ?」

( ^ω^)「「地下ですお」

('A`)「誰なら開けられる?」

( ^ω^)「「暗証番号は支店長しか知らないんですお…」

('A`)「何だと…? 畜生、誰か呼び出せ!」


ドクオはツンに目配せした。

ツンは頷き、カウンターに置いたバッグから円筒状の物体をいくつか取り出す。

鉄パイプを切って作ったもののようだ。


('A`)「そいつは爆弾だ」

('A`)「お前らニトログリセリンを調合する方法を知っているか? ビックリするほど簡単だぞ」



40.
ドクオは朗々とニトロの調合方法を解説した。

もちろんこれは爆弾が本物だという信憑性を高めるためだ。


('A`)「というわけだ。支店長を呼べ、来ないとお前のビルが真っ平らになっちまうぞって言え」


副店長が電話をかけていると、パトカーの音がした。

誘蛾灯に群れる羽虫みたいに銀行へ向かって集まってくる。

ドクオが獣のように吠えてボーガンを振り回した。


('A`)「誰が通報しやがった!? 誰だ!」


ツンがドクオをなだめ、二人は絶望的な雰囲気で壁に寄りかかった。

二人とも精一杯『狼たちの午後』のアルパチーノを演じて見せた。

今のところは予定通りだ。

誰が通報したかなんてどうでもいい。いずれ必ずされるとわかっていたことだ。


41.
∧∧
(,,゚Д゚)「俺はギコ警部だゴルァ。お前らの要求は何だ」


外で拡声器を通した声がする。

ドクオは外に出た。

∧∧
(,,゚Д゚)「話し合いがしたいぞゴルァ」

('A`)「ふざけんな、何かあったら俺の仲間が人質を殺す」
∧∧
(,,゚Д゚)「わかった、もちつけ。人質は何人いる?」

('A`)「十人以上だ、こっちには爆弾があるから一瞬で皆殺しにできるぞ」

('A`)「証明してやろうか? そこに俺の車があるだろ」


ドクオは腕時計をチラリと見た後、レンタカーのトランクを開けた。

そこに頭を突っ込んで爆弾の時計を合わせる。




42.
操作を終えた後、ドクオは銀行に駆け戻りながら野次馬に絶叫した。


('A`)「1:45ぴったりにその車を火の玉に変えてやる、この手品には種もしかけもないぞ!」


途端に路上は蜂の巣を突っついたような大騒ぎになった。


「野次馬を下がらせろ!」

「車から離れろ、爆弾だ、離れろ!」


野次馬に紛れていた流石兄弟は慌てて走り出した。

その場から逃げ出すような素振りだが、実は別に急ぐ理由がある。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「くそ、10分くらいしかねえじゃねえか!」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「ドクオのやつもっと余裕を取れよ」


二人はツンデレ通信販売社に駆け込んだ。


43.
そして約十分後。


ξ ゚⊿゚)ξ「4,3,2,1…」

('A`)「ドカンだ」


地獄の火炎がくしゃみしたみたいにドクオの借りた車は破裂した。

衝撃波が津波のように押し寄せて銀行の窓をびりびり震わせる。

しばらくしてから電話が鳴った。

相手はギコだ。


('A`)「わかっただろ? ここに突入すればどうなるか」
∧∧
(,,゚Д゚)「文字通り火を見るより明らかのようだ」

('A`)「気に入ったぜ、そのジョーク」





44.
∧∧
(,,゚Д゚)「要求を改めて聞きたい」

('A`)「支店長をこっちに呼べ。金庫を開けさせろ」
∧∧
(,,゚Д゚)「わかった。少し時間がかかるぞ」

('A`)「ちょっと待て、切るな。こっちからそっちに連絡するときの番号は? 110番か?」
∧∧
(,,゚Д゚)「電話局に連絡して直通にした。その電話を取ればいつでも俺に繋がる」


事件発生から二時間が経過した。

現れたやんよ支店長が金庫室の暗証番号を合わせる。

扉を引いて開こうとすると、ドクオが止めた。


('A`)「ここまででいい」
∧_∧
( ・ω・)「そ、そうかよ…」

('A`)「あんたはもう戻っていいぞ」



45.
空ではマスコミのヘリが引っ切り無しに飛び交っている。

戻ってきた支店長にギコが詰め寄った。

∧∧
(,,゚Д゚)「中の状況はどうだゴルァ」
∧_∧
( ・ω・)「人質の体にガムテープで何か貼り付けられてたんよ、金属の筒みたいなものが」
∧∧
(,,゚Д゚)「もしかして爆弾か!?」
∧_∧
( ・ω・)「かも知れないんよ。警察が来たら爆発させるとか言ってたんよ」
∧∧
(,,゚Д゚)「クソ、埒が明かん…」


―――――――――――――――――――――――――――――――


一方、こちらは銀行内。

ツンは焦燥し切った人質の顔を眺めていた。





46.
ξ ゚⊿゚)ξ(悪いことしてるよなー私…天国行くのは無理っぽいわね)

('A`)「ツン、そろそろ…」

ξ ゚⊿゚)ξ「そうね、頃合かしら」


ドクオは電話を取った。


('A`)「警部か?」
∧∧
(,,゚Д゚)「そうだゴルァ。何の用だ」

('A`)「逃亡用のヘリと操縦士を用意しろ」
∧∧
(,,゚Д゚)「わかった。かけあってみよう」


ネゴシエーター(交渉役)は大方の場合において犯人の要求を断ってはいけないことになっている。

「わかった、やってみよう」そう言った後に「それは無理だがコレなら何とか」という具合に

話を持っていって主導権を握るのだ。



47.
∧∧
(,,゚Д゚)「ヘリは無理だゴルァ。ここいらは狭過ぎて降りる場所がない」

('A`)「ヘリでなきゃダメだ!」
∧∧
(,,゚Д゚)「こうしよう、バスを用意するから空港へ向かうんだ」

('A`)「…仲間と相談する。少し待て」
∧∧
(,,゚Д゚)「おい、あらかじめ言っておくがお前らはまだ一人も殺していない」

('A`)「レンタカー屋のおやじが憤死してなきゃな」
∧∧
(,,゚Д゚)「投降を手段の一つとして考えておいてくれ」


ドクオは一瞬、息を詰まらせるフリをした。


('A`)「今降りたら何年で済む?」
∧∧
(,,゚Д゚)「5年ってとこだろう。ムショの態度次第ではその半分で出られるかも知れん」

('A`)「わかった。考えとく」



48.
事件発生から五時間。すでに日はとっぷり暮れている。


('A`)「バスを用意してくれないか。行き先はVIP空港だぞ」
∧∧
(,,゚Д゚)「わかった。そうしよう。それじゃバスと引き換えに人質を解放しないか?」

('A`)「いいだろう。全員は乗れないだろうからな…半分は逃がしてやる」

('A`)「また電話する。受話器は上げたままでいろ」
∧∧
(,,゚Д゚)「わかった」


ギコは注意深く耳を済ませた。

向こうでは男女が何かをぼそぼそと話し合っているが、小声過ぎて意味まではわからない。

部下が彼にそっと話しかけた。


ミ,,゚Д゚彡「バスの到着と共にSAT(対テロ鎮圧舞台)を突入させるそうです」
∧∧
(,,゚Д゚)「上の判断か? 時間を稼げ、もう少しで投降しそうなんだ」



49.
マイクロバスが銀行の前に滑り込んできた。

犯人は今、そちらに意識が向いている筈だ。

ギコの願いも空しく警察上層部は強硬手段に打って出た。

突入。

無線の受話器を通したその声はデジタルデータに分解され、再び受信機で音声に組み立てられ、

SAT隊員の耳元に轟く。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


それからしばらくしてからのこと。

ツンはネームの入った封筒を手に編集部にいた。


( ゚∀゚)「どうも。例の事件を取材したんですって?」

ξ ゚⊿゚)ξ「ええ。例の2ch銀行強盗事件を題材に描いてみたくって。これです」



50.
ξ ゚⊿゚)ξ「まあ、わかんないとことかは私の創作なんですけど…」


ツンは興奮した様子でべらべら早口に喋り始めた。

まるで自分の子供を自慢する若い母親みたいに。


ξ ゚⊿゚)ξ「もうニュースで見て知ってると思うんですけどね、事件ははるか前から起きてたんですよ。

      犯人グループは銀行の近くにあるアパートの一階を借りて、その床下を掘ってたんです。

      銀行までずーっと地下通路をね、金庫室の壁にぶち当たるまで。

      犯人は通販の会社として部屋を借りてたでしょ?

      掘り出した土をダンボールに詰めて運び出すためですよ、通販会社なら怪しまれない。

      事件当日、犯人は二つのグループに分かれました。

      銀行に入るグループと金庫室の壁を破るグループです。

      銀行に押し入った方は大声で車を爆発させる時間を野次馬に叫んだ。

      あれは金庫室の壁を破るグループにタイミングを知らせるためだったんです」


51.
ξ ゚⊿゚)ξ「時間ぴったりに犯人たちは車と金庫室の壁を同時に爆破した。

      地上での爆発は示威であると共に地下の壁を破るのを隠すためのものだったんですよ。

      車の爆音に掻き消されて誰も『宝の部屋』が開いたことに気付かなかった。

      地上で時間を稼いでいるうちにもう片方はお宝をどんどん運び出してゆく。

      人質の首に爆弾下げて警察威嚇してましたよね、アレって偽物だったらしいですけど。

      それで支店長が入って金庫を開かせた。

      あれはお宝を手に入れるためじゃなくて、犯人が逃げるためだったんです。

      警察と繋いだ電話を上げっぱなしにしといてMDプレイヤーで適当な会話を流しておく。

      犯人がまるでずっと銀行に残っているように思わせて、その間に…ってワケ。

      SATが突入した時点ですでに銀行内はモヌケのカラ」

( ゚∀゚)「ははあ、なるほど…」


付け加えるなら持ち出した土は流石兄弟が畑にまいていた。

事件当日のみ運び出したダンボールには現金と金塊が満載されており、貸し倉庫へ入った訳だ。

52.
( ゚∀゚)「いやいや、面白い。うん、凄く面白いですよ。恋愛要素はどこに絡めるんです?」

ξ ゚⊿゚)ξ「強盗グループの男女がお互いに騙し合いながらも…という風にしようかと」

( ゚∀゚)「映画的ですねー、いいじゃないですか」

ξ ゚⊿゚)ξ「会議にかけていただけますか?」

( ゚∀゚)「任せて下さい、通しますよこれは」

ξ ゚⊿゚)ξ「ありがとうございます」


数日後、連載にGOサインの電話が来た。

本当の勝負はこれからだ。

ツンはその日、自宅の机の前で決心を胸に刻んだ。


ξ ゚⊿゚)ξ「これでキメるわ。今度こそ必ずヒットさせてやる」

ξ ゚⊿゚)ξ「あの時の流石兄弟の指摘のおかげでもあるわ。あいつら、上手くやってるかしら?」




53.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「また注文が入ったぞ、弟者」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「雑誌で紹介されたからな、一般の園芸店でもよく売れてる」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「人生の勝利者だな」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「流石だよな俺ら」


新しい機械はごんごんと音を上げて実に頼もしくよく動く。

新発売の肥料が良く売れたおかげで流石化学はドミノ倒しを踏み止まることができた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「それにしてもドクオの奴はなあ…」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「まさかあいつがな」


――――――――――――――――――――――――――――――――――


数日前、ドクオは銃を手に喚き散らしていた。



54.
('A`)「動くんじゃねえ、一歩もだ! 警報には触るな!」

( ∵)

(*゚ー゚)「監督は『カット!』と言ってるみたいです」

('A`)(ドキドキドキ…)

( ∵)

(*゚ー゚)「監督は『君の攻撃性はいい、リアリティがある』と言っているようです」

('A`)「そ、それじゃ!」

( ∵)

(*゚ー゚)「監督は『まあ、採用でいいんじゃないか』と言っているようです」


ドクオはエキストラのバイトをしていたところ、その悪人ヅラがビコーズ監督の目に

止まってオーディションを受けていた。

後の悪役一代ドクオの伝説の始まりである。



55.
('A`)「…ってわけだ。次の『オワタ刑事 絶望派』の強盗役をもらったぜ。すぐ死ぬけど」

( ^ω^)「北斗の拳のモヒカンってとこだお」

('A`)「ブラッドピットだって最初はチンピラ役だったろ?」

('A`)「で…お前、結局ツンのことは…」


内藤は首を振った。

ここは結婚式会場の新郎控え室。

正装した二人の元へ流石兄弟がやってきた。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ツンはやっぱり来てないか…」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「ま、あいつの性格じゃあ顔は出せんだろう」

( ^ω^)「…」






56.
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「そろそろ始まるな。行こう」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「緊張してヴァージンロードでコケるなよ」

('A`)「それじゃ内藤、後でな」


三人が姿を消した後、内藤は部屋を出た。

ドアを出てすぐのところでドクオが待ち構えていた。

蜘蛛が笑うなら巣に獲物がかかったときにこんな笑い方をするだろう。


('A`)「道に迷ったか? 会場はこっちじゃないだろ」

( ^ω^)「え? ト、トイレに…」


ドクオは黙ってバイクのキーを投げ渡した。

そして背を向け、姿を消す。


('A`)「ファイヤーペイントのハーレーだ。ガラス細工のように扱えよ」

57.
ツンは自宅で泣きながら酒に溺れていた。


ξ ゚⊿゚)ξ「ウウウ…絵に描いたような負け犬女だわ…」

ξ ゚⊿゚)ξ「今ごろケーキに入刀とかしてんだろうな」


玄関のチャイムが鳴った。

慌てて涙の跡を擦って消し、インターホンに出る。

そこに内藤がいた。


( ^ω^)「ツン!!」

ξ ゚⊿゚)ξ「へっ?」


泡を食って扉を開くと内藤が飛び込んできた。






58.
彼女を抱き上げ、食らいつかんばかりの勢いで喚く。


( ^ω^)「お前が好きだおー! 結婚するお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「そ、そう。別にいいけど。あんた結婚式は?」

( ^ω^)「やめた」

ξ ゚⊿゚)ξ「やめたってあんた…」


内藤はツンを抱き上げるとマンションを駆け下り、まん前に止めておいたハーレーに飛び乗った。

アクセルをふかすとエンジンが咆哮する。


ξ ゚⊿゚)ξ「誰のバイクよ、これ」

( ^ω^)「ドクオに借りたんだお。よっしゃあ、行くお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「ど、どこへ!?」

( ^ω^)「どこだっていいお!」



59.
( ^ω^)「ブ――――――――――ン」


クリスマスの街を駆け抜ける。

こいつは何にも考えてないな。ツンはそう思った。


ξ ゚⊿゚)ξ(ま、いいわ。それでいい)


今まで色々考えすぎた。

そろそろ頭を空っぽにしよう。

それで何が一番大事だったかを思い出そう。

何もかもシンプルにまとめよう。

内藤の背中に顔をうずめ、ツンは笑って囁いた。


ξ ゚ー゚)ξ「あんたが好きよ、内藤」



おしまい
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Author:(゚q 。川カンザイ
完全犯罪(カンザイ)
プラネットライカは隠れた名作

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