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('A`)が10時間だけ王になるようです

映画「狼たちの午後」にやや影響を受けてるかな。


1.
本格的な冬も差し迫ったある日のこと。

原子力発電所から核廃棄物処理施設へ向かう一台のトラックが何者かに襲われた。

犯人は運転手にスタンガンを食らわせてトラックごと奪い、逃走。

トラックは少し離れた森の中ですぐに見つかったが、積んでいた核廃棄物が

ほんの少しだけなくなっていた。

警察関係者は事態を重く見てこの事実を公にしないことに決定した。

なくなった廃棄物の量はグレープフルーツ一個分ほど。

核爆弾を作るには十分な量だ。








ド ク オ が 1 0 時 間 だ け 王 に な る よ う で す



2.
公営団地の一室。

すべての準備を済ませたドクオは台所のテーブルについて時間が過ぎるのを待っていた。

テーブルにはアタッシュケースが一つ置かれている。

そのケースからはコードが一本伸びていて、それはスイッチ付きのグリップに繋がっている。

腕時計を見る。

時間だ。


('A`)「行くか」


この日の為に用意したちょっとだけ高級なスーツをはためかせて家を出る。

ドクオの家は団地の一階だ。

まず右隣の部屋の扉をノックした。


('A`)「失礼、隣のもんだが」



3.
( ><)「鬱田さん。何か用なんですか?」

('A`)「やあ、どうも。いつぞやはミカンをありがとう。うまかったよ」

( ><)「いえいえ、どうせ田舎から山のように送ってくるんです」

('A`)「ところで俺の部屋に爆弾を仕掛けたんだ」


「回覧版を持ってきました」みたいなその軽い口調に、隣人は呆けた顔をした。


(;><)「えっ?」

('A`)「まあここの壁は頑丈だから大丈夫だとは思うが一応知らせとく。じゃあ」

(;><)「じゃあってあの、鬱田さん!」


ドクオは次に自宅の左隣の部屋をノックした。


('A`)「やあ奥さん。子供は元気かい?」




4.
J( 'ー`)し「ええ、そりゃもう」

('A`)「そりゃ良かった。ところで俺の部屋に爆弾を仕掛けたんだが…」


そんな調子で隣近所に「お知らせ」を済ませるとドクオは団地村の入り口に向かった。

ケータイを取り出して110番する。


***「こちら警察です。どうしましたか?」

('A`)「あーどうも。核廃棄物が盗まれた事件のことは知ってるか?」

***「?」

('A`)「これから詳細を話す。よく聞いてくれ」


ドクオは犯人しか知りえないようなことをすべて喋った。


('A`)「そういうわけだ。今、VIP団地の前にいる。すぐ来てくれ」




5.
たちまちパトカーがやってきた。

サイレンをガンガン鳴らしてまるで気の早いクリスマスだ。

∧∧
(,,゚Д゚)「警察だゴルァ! お前を連行する、大人しくしろ」

('A`)「まあ話を聞いてくれ」
∧∧
(,,゚Д゚)「そいつは暗くて狭い部屋でいくらでも聞く」

('A`)「急くなよ。今聞いて欲しいんだ。例えばたった今から俺の部屋が爆発する」
∧∧
(,,゚Д゚)「へ?」


ドクオは腕時計を見た。


('A`)「あと十秒…九秒…8,7,6,5,4,3,2,1、はいドカン」


団地の端っこで爆発が起き、衝撃波が津波となって押し寄せた。




6.
子供の泣き声、サイレン、助けを呼ぶ声、火災報知機のベル。

すべてが悲鳴と化していた。

∧∧
(,,゚Д゚)「pけおいgじゃえおいrjぎあwjぎおあr!?!?!?!?!」

('A`)「話を聞く気になったか?」


ドクオは手にしたアタッシュケースを見せて笑った。

ささやかな微笑だ。


('A`)「爆弾はまだある」
∧∧
(,,゚Д゚)「ま、待てゴルァ! 本部に連絡するからちょっと待てゴルァ」

('A`)「いいとも。マスコミが来るのとどっちが先か賭けるか?」







7.
昼下がりの静かな団地はあっという間にリオのカーニバルみたいになった。

ドクオは警察やマスコミに遠巻きに囲まれて台風の目みたいに立ち尽くしていた。


('A`)「テレビ局も来てるな。こうでなくっちゃあ」

( ^ω^)「あんたがドクオさんですかお」

('A`)「ん。お前は?」

( ^ω^)「警察の内藤と言いますお」

('A`)「俺とお喋りする役か」

( ^ω^)「そうなりますお。要求を聞きたいですお」

('A`)「まあそれより先に俺に喋らせろよ。カメラをこっちに近づけてくれないか?」

( ^ω^)「は、はいですお…マスコミを入れますお」


視聴率のハイエナどもを前にドクオは朗々と語り始めた。




8.
('A`)「核廃棄物が盗まれた事件はみんな知ってるな? 俺が犯人だ。

    で、盗んだそれがどこにあるかって言えばこの中だ」


ドクオはアタッシュケースを掲げてみんなに見せた。

『ライオンキング』のマントヒヒが生まれたてのシンバを見せるみたいに。


('A`)「量にすれば僅かだが地球に大穴あけるには十分だ」
  ∧_∧
兄(;´_ゝ`)「それは核爆弾ってことですか!?」

('A`)「物理学の基本を知ってりゃ誰だって作れる。ファミコンの基盤を溶接するより簡単だ」

(;^ω^)(こりゃとんでもない事になったお…)

('A`)「アタッシュケースから伸びてるコードが見えるかな? これが起爆スイッチだ。

    押した瞬間、日本に新たなグラウンド・ゼロが生まれるぞ」

('A`)「説明は以上だ。それじゃ、要求の方に入ろうか」




9.
たちまち日本中が蜂の巣にバクチク投げ付けたみたいな大騒ぎになった。

今ごろ遺憾の意とか誰の責任だとか政治家どもはそんなことを言っているのだろうか。

それともとっくに尻に帆かけて国を出てるかな?

ドクオは目の前で起こっているマスコミと警察の右往左往っぷりにそんなことを考えた。


('A`)「要求…要求は…そうだな、とりあえずリムジンを用意してくれ」

( ^ω^)「え? どこへ行くつもりですかお」

('A`)「俺の勤めてた会社だよ」


意味不明だ。でも、誰も逆らえない。

すぐに黒塗りの高級車が団地にやってきた。


('A`)「何だ、映画で見たようなこう、やたら長いやつじゃないのか?」

( ^ω^)「そんなの日本にはないですお。これで我慢して欲しいですお」



10.
('A`)「すげえ! 車に冷蔵庫ついてるぞ」


得体は知れないがこれ一本でドクオの月給が吹っ飛びそうな洋酒を呷っていると車が止まった。

ドクオが前に勤めていた会社、2ch商亊の前だ。

降りた瞬間に警察やらマスコミやらがあたりを取り囲む。

  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「ドクオさん、要求は一体なんなんですか! 世界中が貴方に注目してます!」

( ^ω^)「こら下がれお! 勝手に質問すんなお!」


ドクオはニヤつくのを堪えられなかった。


('A`)(今の俺はハリウッドスターだな)


さあ、社長室に行こう。

あのハゲには言いたいことが山ほどある。



11.
('A`)「よう社長! 元気だったか」

(´・ω・`)「…」


社長室のでかい机の前では、ショボン社長が突っ立っていた。

ドクオは何の遠慮もなしに社長の机に向かい、椅子に座って足を上に投げ出した。


('A`)「いい椅子だなオイ、この机の下に秘書を入れてお仕事か? ん?」

(´・ω・`)「な、何の用だ…」

('A`)「あんたは俺の顔なんか覚えていないだろうが、俺はあんたを忘れたことはない。

    残業手当てを払わなかったことで裁判しただろ? 覚えてるか?」


言いながらドクオは机を漁り始めた。


('A`)「机は整理しろよ。あんたあれだろ、小学生のころ机でパンとかカビさせてたクチだろ」




12.
('A`)「この写真、あんたの家族か? …娘はビッチ面だな、間違いなく援交してる。

    ところで銀行の預金通帳とかはないのか?」

(´・ω・`)「?」

('A`)「会社のことは良くわからないんだ。会社のカネってのは現金化するにはどうすればいい?」

(´・ω・`)「何を言ってる? カネが欲しいのか?」

('A`)「おい、勘違いすんじゃねえ、俺はお前とは違う。小銭なんかどうでもいい。

    カネを引き出すのに必要な書類を持て。銀行に行こう。リムジンに乗せてやるぞ」

(;´・ω・`)「???」


政府関係者らしい黒服がショボン社長に耳打ちしている。

ショボンは渋々納得し、ドクオと共にリムジンに乗り込んだ。


('A`)「2ch商亊は総資産いくらだ? 一億くらいか?」

(´・ω・`)「そんなにない。約6000万円だ」


13.
パトカーやらマスコミやら野次馬やらを引き連れたリムジンは街で一番大きい銀行の前で止まった。

有象無象と一緒にゾロゾロ行進しながらドクオとショボンがそこに入る。


('A`)「どうも。2ch商亊が預けてるカネを全部下ろしたいんだが」

(*゚ー゚)「えっ?! あ、あの…」

('A`)「おい、社長。手続きをしてくれ」

(*゚ー゚)「あの、全部現金化して下ろすとなると丸一日はかかりますが…」

('A`)「マンドクセ。金庫を開けてくれ、勝手に持ってくよ」


一体誰が逆らうことができる?

ドクオは金庫の札束や有価証券を適当にダンボールに詰め、滑車に乗せて運び出した。

それを通行止めにした大きな交差点の真ん中に山積みにする。


('A`)「すげえな、一体どれだけの税金をチョロまかしたんだ?」



14.
ドクオはリムジンからウォッカを取り出してきて酒にかけ、火をつけた。

6000万円のキャンプファイヤーだ。


('A`)「いっちょオクラホマミキサーでも歌うか?」

(´;ω;`)「か、会社の資産が…私のカネが…」

('A`)「反省したか? これからはちゃんと残業手当を払うんだぞ。

    社員はお前の家畜じゃねえ。人間なんだ。わかったか? じゃあ、元気でな」


ドクオは呆然としているショボンの肩を叩いてリムジンに乗り込んだ。

すると内藤も一緒に乗ってきた。


('A`)「やりすぎって言いたいのか?」

( ^ω^)「言いたいですお」

('A`)「大事なことをわからせるにはこれが一番さ。スカッとしたら腹が減ったな! 飯と行こう」



15.
( ^ω^)「ドクオさん、こっちの話も聞いて欲しいですお」

('A`)「何だ? 遠慮せずに何でも言ってみろ、この左手の親指がヒクつかない程度にな」


ドクオがグリップを握った手を見せると内藤は少し怯んだ。


(;^ω^)「あんたの言う希望を叶えてあげたお」

('A`)「ああ、そうだな。ご苦労だった」

( ^ω^)「それで要求は一体なんなんですかお?」

('A`)「安心しろ。10時間以内には必ず言うさ」

( ^ω^)「10時間?」

('A`)「いいか、この爆弾が爆発する条件は三つだ。

    1.スイッチを押す

    2.グリップとアタッシュケースを繋ぐ電線が切れる

    3.10時間経過する。…あと8時間だな」


16.
('A`)「おっ、あのホテルに入ろう。屋上がレストランなんだろ? テレビで見たぞ」

( ^ω^)「わかりましたお。運転手、車を止めるお」


ホテルに入りかけてドクオは後ろの蟻の行列を振り返った。


('A`)「おい、どうでもいい奴は遠慮しろよ。メシは落ち付いて食いたい」

( ^ω^)「僕はいいですかお?」

('A`)「どうぞ。まあ、どうせ他の連中も監視カメラか何かで覗くんだろうがな」


二人は屋上の高級レストランまで上がり、一番いい席についた。

他の客は事情を察するとみな二人と逆行して一目散に飛び出していった。


('A`)「さあ、何を食う? 何でも好きに頼め、奢るぞ」

( ^ω^)(奢るぞってカネ払う気あるのかお…)




17.
('A`)「おーい、ウェイター…おーい。おかしいな、注文を取りに来ないじゃないか」


ドクオは席を立って厨房を覗き込んでみた。

誰もいない。

みんな逃げ出してしまったらしい。


('A`)「しょうがないな、自分で作るか。内藤、ちょっと来てくれ」

( ^ω^)「何ですかお」

('A`)「メシを作るんだ。手伝ってくれ」


二人は熱気の残る厨房に入った。

作りかけの料理がほったらかしのまま火にかけられている。


('A`)「幸い材料は何でもある。調理器具もな。まあ、サンドイッチくらい作れるだろう」




18.
内藤のケータイが鳴った。


( ^ω^)「誰だお。…え、警視総監どのですかお!? ちょ、ちょっと待っ…」


ドクオはうわずった声を出す内藤からケータイを奪い取り、スープ鍋の中に放り込んだ。

ぼちゃん。


(;^ω^)「あー!? ななな何すんですかお!?」

('A`)「パンにマーガリン塗ってくれ。ほら、これだ。俺は手が塞がってて上手くできない」

(#^ω^)「…」

('A`)「メシが先だ。トンズラこく予定立ててる連中なんざほっとけ」

( ^ω^)「わ、わかりましたお…」


二人はそのあたりにあるものを適当に刻んでパンに挟んだ。




19.
( ^ω^)「包丁の使い方上手いですお」

('A`)「若いころは生活が苦しくてな。共働きだった」

( ^ω^)「結婚してたんですかお?」

('A`)「妻の弁当を作ってやったもんさ。もう別れたけど。お前、奥さんは?」

( ^ω^)「僕はまだ独身ですお」

('A`)「そうか。まあ、結婚てのも一度はしてみるもんだ」


どっさり出来上がったサンドイッチをレストランに持って行って二人で食べた。

左手の壁は一面がガラス張りだ。

しきりにヘリが来てはこっちにカメラを向けている。


('A`)「見ろ、テレビ局だ。手を振ってやれ」

( ^ω^)「お、おーい…」




20.
('A`)「あー美味かった。さあ、行くか」

( ^ω^)「次はどこへ行く気ですかお」

('A`)「博物館だ」

( ^ω^)「どこの?」

('A`)「荒巻スカルチノフ記念博物館ってあるだろ」

( ^ω^)「わかりましたお。でもそこへ行く前に一つ教えて欲しいんですお」

('A`)「何でも聞け」

( ^ω^)「その爆弾を停止させる方法はあるんですかお?」

('A`)「当たり前だろ。それがなけりゃお前らと取引できないからな」

( ^ω^)「…」

('A`)「それを言うのはドライブの後だ。さあ、行こう」


二人はホテルを出て車に乗り込んだ。



21.
  ∧_∧
弟(´<_`  )「では現場の兄者からのレポートです」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「兄者です。あっ、今ホテルから出て来ました! どこかへ向かうようです!

        刑事と一緒にどこかへ向かうようです!」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「兄者さん、これは官庁街の方向でしょうか?」
  ∧_∧
兄( ´_ゝ`)「そのようです、官庁街に向かうようです」
  ∧_∧
弟(´<_`  )「核爆弾を手に日本中を恐慌に巻き込んでいる男、一体目的はなんなんでしょうか。

        引き続き生中継でお送りします。

        なお事態を重く見た総理大臣は国家非常事態宣言を…」


リムジンの車内テレビを見ながらドクオは子供のようにはしゃいだ。


('A`)「ははは、見ろよ。エライことになってんぞ。すげえ! 自衛隊も来るのか?」

( ^ω^)(まるで他人事だお…)



22.
荒巻スカルチノフは幕末に活躍した地元の名士だ。

彼の功績を称える博物館は官庁街にひっそりと建っている。

リムジンの中では部下からケータイを借りた内藤が忙しそうにあちこちに電話していた。


('A`)「おい、そいつらの誰でもいいから言ってやれ」

( ^ω^)「何をですかお」

('A`)「交渉役は変えるな。俺はお前が気に入った」

( ^ω^)「そ、そうですかお。光栄ですお」

('A`)「迷惑か?」

( ^ω^)「そんなことないですお」


言いながらも内藤は勘弁してくれって顔だ。

やがて博物館についた。




22.
('A`)「懐かしいな、ここは。何も変わっていない」

( ^ω^)「来た事あるんですかお」

('A`)「結婚前に妻とな。ああ、あった。これだ」


荒巻がつけていたという西洋式の階中時計が強化ガラスのケースの中に展示されている。


('A`)「館員さん、これ俺にくれないか?」

川;゚ -゚)「そ、それは困ります…」

('A`)「カタイこと言うな。開けてくれ」

( ^ω^)「言う通りにしてくれお」


ドクオは手にした時計を嬉しそうに胸のポケットにしまった。


('A`)「こうして胸から金の鎖を下げとくのがカッコイイんだ。どうだ?」

( ^ω^)「似合いますお」


23.
二人は車に戻った。

リムジンの周囲はマスコミと警察と自衛隊と野次馬、あとどっかのスパイやら何やらで

ブルース・リーの伝記映画のラストシーンみたいになっている。


('A`)「一秒後には蒸発してるかも知れないってのに呑気な連中だな」

( ^ω^)「次はどこへ行く気ですかお?」

('A`)「そうだな…」


時計を見た。

夕方の四時三十分ちょうど。


('A`)「テレビ局に電話してくれ」

( ^ω^)「インタビューでも受ける気ですかお」

('A`)「いや、見たいテレビがあるんだ。NHKに頼む」



24.
内藤が電話をかけた。


( ^ω^)「どうぞですお。NHKの偉い人ですお」


ケータイを受け取ったドクオは横暴な先輩が下級生に命令するみたいに言った。


('A`)「やあ、実は頼みがあるんだ。『不思議の海のビコーズ』の最終回を放映してくれないか?」

(;^ω^)「え?」

('A`)「今すぐあんたのチャンネルでだ。この車にはDVDプレイヤーがないんでね。

    今すぐにだぞ。それじゃ」


ドクオは電話を切って内藤に返した。


( ^ω^)「なんでまたそんなもんを…」

('A`)「俺がガキのころにやってたアニメだ。最終回を見逃したままなのを今思い出した」



25.
('A`)「あ、車は2chドームへやってくれ。今日はアジア統一選で韓国戦だろ?」

( ^ω^)「野球見るんですかお?」

('A`)「しー、静かに。始まった!」


ドクオはテレビに齧り付いた。

NHKの報道特番がいきなり途切れ、不思議の海のビコーズが始まる。


('A`)「大人になってからもふと気になることがあったんだ、最後はどうなったんだろうってな」

( ^ω^)(このおっさん一体何がしたいんだお? 最終目的はなんだお?)


アニメが終わるころにはドーム球場についた。


('A`)「よーし、バックネット裏に行こう! ヤンヨーズは勝ってるか?」






26.
( ^ω^)「三回表0-2でヤンヨーズが負けてますお」

('A`)「何だよ、昨日も負けてたじゃねえか」


憧れの席で見る野球も負けてるんじゃ仕方がない。

一点も返せないまま五回裏、ヤンヨーズの攻撃。


('A`)「内藤」

(;^ω^)「韓国側のピッチャーに手錠付けて投げさせろとか言う気ですかお」

('A`)「それも面白そうだが、そうじゃない」


ドクオはアタッシュケースを抱えて席を立った。


('A`)「次の打席は俺が出る。手配しろ」

(;^ω^)「ええええ!?」




27.
( ^ω^)「…というわけなんですお、監督」
∧_∧
( ・ω・)「ふざけちゃいけないんよ、大体こいつは誰なんよ」

('A`)「あんたの大ファンだよ」
∧_∧
( ・ω・)「俺の目の黒いうちは勝手な事させないんよ! 核爆弾持っててもなんよ!」

( ^ω^)「ふう、しょうがないお。おい」
∧∧
(,,゚Д゚)「はい。さあ、こっちに来い。ちょっとだけ俺たちとお話しよう」
∧_∧
( ・ω・)「アッー! 離せ、何するんよ!」


やんよ監督は警官やら黒服やらに抱えられてどこかへ連れて行かれた。

呆けたような顔をしている他の選手を尻目にドクオはバットを手にした。

観客のどよめきを受けながらバッターボックスへ。


('A`)「ピンチヒッタードクオだぜ。さあバッチコイ」

( ^ω^)(それはピッチャーが言うセリフだお…)


28.
('A`)「…アタッシュケースが邪魔だな。ちょっとこれ持っててくんない?」


審判にケースを持たせ、ドクオはバットを構えた。

左手にはグリップが貼り付けてあるからしっかりとは持てない。

当然ながら観客は珍獣を目の当たりにしたみたいな顔だ。

いきなり出てきたあの背広男はなんだ?

もしかしてテレビで今実況してる男?


(;^ω^)「ドクオさん、お願いだからコードを引き千切らないで欲しいお!」

('A`)「うるさいなもう、引っ込んでろよ。必ずヒット打ってやるから」

(;^ω^)「そうじゃないですおおおおお!」


何がどうなっているのか理解できないでいるピッチャーのところへ黒服がやってきて耳打ちした。

打ち易い球を投げろとでも言っているのか?



29.
初級…見逃し。ストライク。


('A`)「お、なかなか速いな。テレビと段違いだ」


二球目。空振り。ストライク。


('A`)「ふふん、タイミングは見抜いたぜ」


そして三球目。

ピッチャーが振りかぶる。

ドクオはしっかりと踏ん張って身構えた。

最後に野球をしたのはいつだっけ?

高校時代に仲間とやった草野球か。

あいつらもみんな今ごろ、この中継を見てるのか?




30.
バットを振る。

当てずっぽのスイングだが重たい手応えがあった。

衝撃がバットを通じて全身を駆け抜けてゆく。

ボールは高く高く舞い上がった。

ライトの明かりの中を漂い、ぼんやりしていたファーストのグローブの中に落ちた。

「思わず捕っちまった」って顔をしている。


('A`)「ああ。まあ…上出来だろ」


ドクオは満足げだった。

アタッシュケースを審判から受け取り、ベンチに下りる。

歓声はなかった。

場内は恐ろしいほど静かだ。




31.
('A`)「待たせたな。まあ、現実はあんなもんだ。ホームランを期待したか?」

( ^ω^)「…」

('A`)「何だ? 怒ってるのか?」

( ^ω^)「あんた図体のでかい幼稚園児ですかお!?」


球場を出てリムジンに乗り込もうとしたとき、内藤が怒鳴った。


( ^ω^)「あれがしたいこれがしたいってダダばっかこねてるお。

       その挙句に爆弾のスイッチ持ったままバットのスイングですお!

       もしうっかり押してたら…」

('A`)「悪かった、悪かったよ」


内藤の部下やら何やらが彼の口を塞ごうとなだめるが彼は黙らなかった。


( ^ω^)「あんたみたいなアホとはもう付き合い切れないお!」


32.
('A`)「まあ待て、反省してるよ。確かにバッターになるのは思慮が足りなかった」

( ^ω^)「口だけだお」

('A`)「タイムリミットはあと3時間だな。車でどこまで逃げられるか試してみるか?」

( ^ω^)「…」

('A`)「これが最後だ。どっか適当なレストランに入ろう。そこで話そうじゃないか」

( ^ω^)「わかったお…」


再びパレードが始まった。

ドクオは都内にある適当な高級レストランで車を止めさせた。


('A`)「貸し切りにしてくれ。今度はコックを逃がすなよ」

( ^ω^)「わかったお。他の客を追い出すから少し待つお」

('A`)「それから頼みがある。これが本当に最後の頼みだ」

( ^ω^)「?」


33.
('A`)「実は…」

( ^ω^)「ちょっと待つお。約束して欲しいお」

('A`)「何をだ?」

( ^ω^)「最後の頼みって事なら、それを叶えたら爆弾を解除してもらうお」


ドクオは少し考えた。

時計を見る。

確かにもう時間もない。


('A`)「いいだろう。約束する」

( ^ω^)「必ずですお」


内藤も心底うんざりした顔になっている。

ドクオはそんな彼に対して少しだけ申し訳なく思った。心から、本当に。



34.
('A`)「人を呼んで欲しい」

( ^ω^)「誰ですかお」

('A`)「安心しろ、別にアメリカ大統領とかじゃねえ。女優だ」

( ^ω^)「?」

('A`)「津田ツンを頼む。メシはそれからだ、食前酒でも飲もう」


内藤がどこかに電話をかけた。

ツンが来るまでの間、二人はワインを舐めるようにして少しずつ飲んだ。


('A`)「テレビに出てくるソムリエってのは何であんなに偉そうなんだろうな?」

( ^ω^)「…」

('A`)「たかがアルコール入りの葡萄ジュースじゃねえか。別に大して美味くもない。

    何がそんなにありがたいかね?」




35.
ぐだぐだ喋っていると後ろからヒールの音が近付いてきた。

この音は覚えている。

そうだ。このヒールの音は思い出の音だ。

音はドクオの真後ろで止まった。

ドクオは振り向いた。


ξ ゚⊿゚)ξ「ドクオさん」

('A`)「ああ…。久しぶりだな。呼び付けたりして済まなかった」


いきなり人間核爆弾に呼びつけられた大女優は不安げな表情だった。


('A`)「内藤、外してくれないか」


内藤が席を離れ、さっきまで彼が座っていた椅子にツンが腰を下ろした。




36.
('A`)「すぐに食事が来る。『ぐるナイ』で見て一度は来たかったレストランだ」

ξ ゚⊿゚)ξ「…」

('A`)「俺が狂ったと思ってるのか?」

ξ ゚⊿゚)ξ「まともなつもりなの?」


ドクオは笑った。


('A`)「確かにな。核を名刺入れとか傘みたいに持ち歩くなんておかしいよ」

ξ ゚⊿゚)ξ「爆弾は解除できるんでしょ?」

('A`)「もちろん」

ξ ゚⊿゚)ξ「じゃあ今すぐ…」

('A`)「慌てるな。あと2時間とちょっとある。ゆっくりしていけ」

ξ ゚⊿゚)ξ「…」




37.
食事が運ばれてきた。

ドクオだけがまるで点けっぱなしのラジオみたいに一方的に喋っていた。

話題はチューニングが狂ってるみたいにコロコロ変わる。


('A`)「そうだ、プレゼントがあるんだ。これ」

ξ ゚⊿゚)ξ「?」


ドクオは荒巻スカルチノフ記念館から持ってきた懐中時計を差し出した。


('A`)「結婚前に行っただろ? 一緒に行った博物館で…」

ξ ゚⊿゚)ξ「覚えているわ」

('A`)「あの時、気に入ってただろ、これ。説得してもらってきた。受けとってくれ」

ξ ゚⊿゚)ξ「…」


ツンは黙って時計を受け取った。


38.
欲しくて受け取ったんじゃない。

喜んでるわけでもなさそうだ。

ただ彼女は自分を怒らせないためだけに受け取ったことはドクオにもわかった。

でも気付かないフリをする。


――――――――――――――――――――――――――――


内藤はレストランの隅で引っ切り無しに鳴る電話を相手に悪戦苦闘していた。

上司とかそういう問題でないくらい上の人間がそれぞれまったく別のことを命令する。

何だか内藤はすべてがイヤになった。

何だってこの国から脱出している真っ最中の老人どもに尻尾を振らなきゃならない?

うんざりしてた彼の鼻先を香水の香りがくすぐった。

ツンだ。




39.
ξ ゚⊿゚)ξ「失礼するわ」

( ^ω^)「もういいんですかお」

ξ ゚⊿゚)ξ「ええ。あの人によろしく」


テーブルに行くとドクオがぽつんと座っていた。

ワインを六甲の美味しい水みたいに喉に流し込んでいる。


( ^ω^)「思ったより早く済んだみたいですお」

('A`)「ああ。俺もびっくりしてるよ」


ドクオは淡々とした態度だ。

何気なくスイッチを押してもおかしくない雰囲気だった。

人は時々、たまに、本当に稀にだけど、世界のすべてが消えてなくなればいいと本気で考える。

内藤はこの時はじめて自分の背中に張り付いているものについて実感した。

死だ。今、それは恐ろしいほど間近にある。

39.
雰囲気を変えようと話題を振る。


( ^ω^)「津田さんとはどういうご関係だったんですかお」

('A`)「妻だった」

( ^ω^)「え!? あの津田ツンがあんたの!?」


ドクオは遠い目をしている。


('A`)「俺の愚痴を聞いてくれるか?」

( ^ω^)「ええ、どうぞですお」

('A`)「夫婦だったのはあいつがまだ売れてないころの話だ。ブレイク前に別れた」

( ^ω^)「4,5年前ってとこですかお」

('A`)「ああ。もうそんなになるか…」


テーブルには手付かずの食事が乗っているが、ドクオの意識にそれは入っていないようだった。


40.
('A`)「俺はいつもあいつに言ってた、女優なんか辞めろって。

    俺の腕一本でも十分に食わせて行けたし、それで幸せだと思ったんだ」

( ^ω^)「…」

('A`)「何とかテレビに出ようとするあいつは惨めで見てられなかったよ。酒は?」

( ^ω^)「頂きますお」

('A`)「放射能の味がするかもな」

( ^ω^)「お、脅かさないで下さいお…」


ドクオはワインクーラーからワインを抜いて内藤のグラスに注いだ。


('A`)「別れた直後にあいつは映画の主役を得てブレイクした。『時をかけるツンデレ』だ」

( ^ω^)「見ましたお」

('A`)「俺はあいつが抜擢されてたころ残業手当てのことで会社とモメて辞表を出した。

    離婚がお互いの運命の分かれ目さ」


41.
大女優津田ツンに離婚歴があることは事務所の一部を除いて誰も知らない。

清純派で売っている彼女の汚点になると考えた所長が隠匿したからだ。


( ^ω^)「ドクオさん。これであなたの要求はすべて通しましたお」

('A`)「ああ。そうだな」


内藤は一つ一つの言葉に脅迫にならない程度の圧力を込めた。


( ^ω^)「今度はそっちが約束を守る番ですお」

('A`)「そうだな…そうだ、そうだな」


ドクオは左手を掲げ、グリップのスイッチを押した。


('A`)「でも気が変わった」





42.
( ^ω^)「…」

('A`)「…」

( ^ω^)「…」

('A`)「…」

( ^ω^)「…」

('A`)「…はは」

( ^ω^)「…」

('A`)「ははは、ははははは」


ドクオは小さく笑いながら、ポケットから鍵を取り出した。

アタッシュケースの鍵穴に突っ込んで回転させる。

蓋が開いた。

中には何も入っていなかった。



43.
グリップに繋がったコードのもう一端がケースの底にビニールテープで貼り付けてある。

ドクオは自分の手からグリップを剥がし、それをケースに放り込んだ。


( ^ω^)「核廃棄物は…?」

('A`)「団地の裏山に埋めた。密閉容器からは出していないから、放射能は心配するな」


内藤の心の中は死んだように静かだ。

一度は死が体の中に入り込みかけたからか?


( ^ω^)「あんたは狂ってる」

('A`)「俺はそう言われる度にこう思った。『狂ってるのはお前らだ』」


ドクオは両手を差し出した。


('A`)「逮捕しないのか? 手錠は?」



44.
( ^ω^)「一つ教えて欲しいお。結局動機は何なんだお?」

('A`)「お前らは…いや、俺たちは生まれながらにして奴隷だ。一生涯首輪に繋がれたままのな」

( ^ω^)「?」

('A`)「俺がどうしても理解できないのは、お前らは大喜びでその事実を受け入れてるってことだ」


ドクオは手錠をかけられて外へ連れ出された。

パトカーに押し込まれる。

色んな奴が色んな顔で色んな事を喋ってる。


('A`)「狂ってるのはお前らさ」


ドクオは呟いた。

今の世の中に人として生まれたのならばそれだけで奴隷だ。

お前らは狂ってる。

それをどうとも思わない。

45.
俺はたった10時間だがこの世の王となった。いや、暴君と言うべきか?

すべてをひざまずかせて何もかも思い通りにした。

これまで俺を首輪に繋いでた奴らに中指を立てて「クソッタレ」と言ってやった。

この先の俺の人生は奴隷以下だろう。

いいさ。

後悔など何もない。

何一つ後悔することなどない。









一生犬のままでいるくらいなら、俺は一晩だけでも王になる。

おしまい
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